第225話 まだまだ準備体操といった具合だな
夕食を食べ終え、運動場へとやって来た。
そこには既に、ファティマとパルフェナも到着しており、パーティーメンバーが揃ったことになる。
「確認だけれど……魔力の使用は怪我や体力の回復に限定し、あとは時間いっぱいまでアレス対私たち4人の模擬戦を続けるということでいいかしら?」
「ああ、もちろんだ」
「結構……では、準備もできているようだし、早速始めましょうか」
「よっしゃ、どっからでもかかって来い!!」
こうして、ファティマの号令の下、耐久模擬戦が開始される。
ちなみにではあるが、今回1人で4人を相手にしなければならないことから小回りと防御を重視して、木製ナイフ二刀流でいくことにした。
そして、4人はサッと陣形を組み、向かって来る。
まずは正面からロイターが、あまり大振りすることなく、コンパクトに木剣を振るってくる。
それを最小限の動きで対処する。
その際、機動力のあるサンズが俺の隙を見計らって、死角から一撃を放ってくる。
さすがに、サンズの木製大剣から繰り出される重たい一撃を木製ナイフで受けるのは分が悪いだろう。
そのため、回避を選択。
「そこっ!」
サンズの一撃を回避した先で、パルフェナの木製薙刀による突きが俺を襲う。
「まだだ!」
息つく暇もなく回避を繰り返す。
だが、その着地点にもファティマが待ち構えており、扇による一撃を狙っていた。
「舐めんな!」
そんなファティマの一撃を、左手のナイフで迎撃。
さらに右手のナイフで一突きしようとしたが……
「こっちにもいるぞ!」
ロイターが横から木剣を突き込んで来る。
また、後ろからサンズとパルフェナも迫って来る。
「チッ!」
囲まれると危険なため、緊急離脱を図る。
そうして多少の距離が空いたところで態勢を立て直し、4人の追撃に備える。
それにプラスして、魔力操作をフル回転し、空気中の魔素の取り込みから魔力、魔力から体力への変換を急ぐ。
一応並行しておこなうようにはしていたが、やはり魔力操作のほうがおろそかになりがちなのは否めない。
よって、このようなちょっとした隙間時間に念入りにやっておく。
「4人相手になかなか耐えるじゃないか」
「フッ、まだまだ準備体操といった具合だな」
そんなふうにして、ロイターと軽口を叩き合う。
とはいえ、正直なところそこまで余裕があるわけでもない。
もっともっとギアを上げていかねばな!
「うぉぉぉぉ! どんどん来いやぁ!!」
こうして時間いっぱいまでひたすら、耐久模擬戦を満喫したのだった。
そして、なんとか戦闘不能に陥ることなく戦い抜くことができた。
そんなわけで、談話室へ場所を移し、反省会を始める。
「結局、時間いっぱいまで耐えきられるとはな」
「はい、そこは悔しいものがありますね」
「ホントにねぇ、当てた! って思っても、すぐ回復しちゃうし」
「そうね」
「フッ」
ここでニヒルに笑って見せた。
とはいえ、いいのをもらう度に骨折なんかもしながらだったので、かなりギリギリだった。
あと、俺のほうも4人のうち誰にも有効打を与えていない。
そのため、魔力のゴリ押しによる回復力のおかげで気絶等の戦闘不能にならずに済んだだけというわけだ。
むしろ、そこを悔しがるべきといえるだろう。
正直、もう少しいけるだろうと思っていなかったといえば、うそになる。
ふむ……レミリネ流剣術を完璧に使いこなすには、まだまだ先が長いということだな。
もっと精進せねば。
そうして、模擬戦中の場面ごとの振り返りを丁寧にして、反省会を終えた。
あとはお決まりのコースで、大浴場で模擬戦の疲れを癒し、自室に戻る。
そこで今日からは、筋トレを軽めにして勉強の比重を高めるつもりだ。
そんな感じで勉強を続け、眠気が強まってきたら、ベッドに座り精密魔力操作をする。
途中で寝てしまっても構わないぐらいのつもりで、眠りに落ちる最後の瞬間まで精密魔力操作をするわけだ。
とはいっても、ある程度のところで切り上げて、ちゃんと寝るようにはするんだけどね。
なんというか、そういう意気込みでやるって感じさ。
その後、そろそろホントに寝るべきって時間まで精密魔力操作をして、眠りにつく。
夜が明けて、暖かい日差しが部屋を照らす。
それにより眠りから覚める。
「おはよう、キズナ君! 今日も元気にいこうぜ!!」
キズナ君へ朝の挨拶をし、まずは朝練に行く準備。
それが完了したところで、いつものコースへ移動。
そして、これまたいつもどおり……じゃない!
ファティマが……制服ではなく、体操服を着ている!!
うん、体操服姿でも相変わらず「きゅるん」としてるね。
「その格好……どうしたんだ?」
「そろそろ私も、前期試験に向けて走っておこうかと思っただけ」
「そうか……」
「それじゃあ、行くわよ」
「え? お、おう……」
なんかしらんが、ファティマと一緒にランニングをする流れに……こういうのを押しが強いっていうのだろうか。
……そういえば、昨日の小僧の話だと、俺とファティマってイチャイチャしているように見えるんだっけ?
一緒に走ってたら、さらにそう思われちゃうかな?
それはちょっと、マズいかもしれんね……
「余計なことを考えていないで、走ることに集中したらどう?」
「そ、そっすね……」
こうして、1時間ほどファティマとランニングをしたのだった。
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