第226話 あのパーティーはヤバい

 朝練とシャワーを終えて、朝ご飯を食べに食堂に来ている。

 そして、食事をしながら朝練のことを振り返る。

 ファティマの奴も魔力操作の練度が高いので、魔力を体力に変換しながら走ることを可能としていた。

 そのため、かなり速いペースで走れていたのだ。

 まぁ、1時間ずっと並んで走っていたわけだからね。

 というわけで、ファティマの高スペックぶりについて考えを巡らせていたところ……


「昨日の魔力操作狂いたちのあれ、ヤバかったよな?」

「うん、4人がかりで1人をボコボコにしようだなんて、ひっどーって思った」

「あの状況で倒れないとか、あの人の耐久力はどうなっているのかって感じでしたが……私ならたぶん、開始1分で意識を手放してましたよ」

「いや、その点については、この前の決闘でロイターも同じようなことをしてたからな、俺はそこまで驚かんよ」

「ふぅん、じゃあ、どこを驚いたの?」

「それは、魔力操作狂いがあの状況で、すっごい楽しそうな顔をしてたってことだ……俺なら嫌だ、嫌過ぎる」

「……ああ、いわれてみれば、そうだったかもしれませんね」


 どうやら、俺たちの耐久模擬戦を見ていた奴がいたようだ。

 まぁ、試験対策で運動場に来る奴も徐々に増えてきてるから、そんなもんかもしれんけどさ。

 それで、俺が楽しそうな顔をしてたといわれているが……でしょうねって感じだ。

 だって、ワクワクが止まらなかったからさ!


「でもさ、ロイターやサンズはまぁ男だし、もともとの実力もある程度知れ渡っていたから別として……ファティマちゃんも結構ヤバかったよね? 的確に関節とか破壊しにいってたし……たぶん魔力操作狂いも、何回か肘や膝を砕かれてたよね?」

「ああ、何度かバランスを崩していたし、間違いないだろうな……あれは実に躊躇がない攻撃だった……まぁ、だからこそ俺は、そんな目にあっていながら、嬉しそうな笑みを浮かべていた魔力操作狂いがヤバいと思ったわけだが……」

「そうですねぇ……あと、普段とのギャップという意味では、パルフェナさんもなかなかでしたね……あのほんわかした雰囲気から繰り出される一撃……私はむしろそちらのほうに恐ろしさを感じてしまいました」

「うん、それもあるね」

「だなぁ」

「まぁ、結論としては……あのパーティーはヤバい……ということでしょうね」

「意義なーし」

「同じく」


 なんか、順調にファティマたちもヤベェ奴認定されてってるね。

 俺はもとからだから、あんまり関係ないけどさ。

 というか、その辺については俺のせいじゃないからね?

 たぶん、アイツらの本質がそっち側なんだろうってこと、理解しといてくれよな!

 そんなわけで、これが今日の朝食の風景だった。


 その後は、エリナ先生のグゥレイトォな授業。

 そうして、幸福を感じながら午前中を過ごし、お昼の時間が到来。

 いつもどおり、昼食をいただきに食堂へ。

 そして、比較的空いている席のほうへ向かうとそこには、いつぞやの追放劇を演じた……確か、ヴィーンとかいう奴のパーティーがいた……3人で。

 ふむ……ソイルとかいったか、願いかなわず追放されてしまったのだな。

 まぁ、この時期って解散するパーティーも結構あるみたいだし、もっと合う奴が見つかるかもしれないからな、気を落とさず頑張ってくれ!

 なんの意味もないだろうけど、そう心の中でエールを送っておいた。


「ヴィーン様! 今日は午後から魔法の練習をしましょう!!」

「それがいいですねぇ、あの能無しもいなくなったことですし! これからはもっと魔法の練習にも身が入ることでしょう!!」

「……ああ」


 そんなことを話しながら、昼食を終えたヴィーンとかいう奴のパーティーは食堂を去っていった。

 異世界あるあるだと、追加メンバーを入れるも微妙な実力で、前に追放した奴が実は凄い優秀だったことを思い知らされる……みたいな展開になると思うんだけど、彼らの場合はどうなんだろうな?

 いや、子分の2人が嫌がって、補充人員なしの3人パーティーでいく可能性のほうが高いか。

 ま、どちらにせよ、異世界あるあるがどう働くか、お手並み拝見といきましょうか。

 そうして、俺も食事を終え自室に戻り、勉強を開始する。

 よっしゃ! やったるでぇ!!

 そんな感じで気合を入れて、しばらく勉強をしていたわけだが……


「……飽きてきたな」


 2時間とちょっと……まぁ、この辺で一度終えて、続きは夜に回そうか。

 というわけで、昨日はランニングをしたし、今日は魔法の練習をしよう。


「それじゃあ、魔法練習場に行ってくるよ!」


 そうキズナ君に声をかけて、部屋を出た。

 そして、魔法練習場へ行く途中、庭園のベンチに俺が一方的に見知っている男女が並んで座っていた。

 主人公君と……幼馴染担当のヒロインである、ニア・ミルトレアンだ。

 そう思ったとき、ノータイムでほぼ無意識といってもいいレベルで隠形の魔法を使い、姿を隠していた。

 いやまぁ、原作ゲームのシナリオが今のところどうなっているのか、まったく気にならないというわけでもないからさ……やっぱ、その辺のところ確認しときたいじゃん?

 そんないいわけを自分にしながら、2人の会話に耳を傾けたのだった。

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