第218話 プラスアルファな結果
狩ってきたモンスターの解体作業。
まずは、頭部につららを生やしたゴブリンの解体から始めよう。
これは勘を取り戻す的な意味も一応あるね。
まぁ、そこまでってわけでもないけど、ちょっとしたブランクがあるからさ、オークの解体で思わぬミスをしてしまったら目も当てられんだろうし。
とはいえ、多少期間が空いていても、作業工程はしっかりと身に付いているし、イメージもバッチリ。
というわけで、解体作業を進めているわけだが、不思議なことに思ったよりイイ感じでできているのだ。
正直、「あれ~? もっと上手くできるはずなんだけど、おかしいなぁ~」みたいな感じでホントはもっとできるんですアピールをしなきゃならんかと思っていたんだが……
なんか、的確にナイフを入れる位置が感覚として分かるって感じなんだ。
う~ん、もしかしたらこれも、レミリネ師匠による剣術指導のたまものかもしれないね。
やはり、レミリネ師匠は偉大なり!!
とまぁ、そんな感じで思ったよりスイスイ解体作業が進んだのだった。
「アレス、上手」
「切り口なんか、鮮やかなもんですねぇ~」
「いやいや、お前らのほうが圧倒的に凄いだろ」
「それは当然」
「そうですよ、なんたって俺らはほとんど一日中、解体作業に従事してますからね。むしろ、それで並ばれたら俺らの立つ瀬がないですよ」
「まぁ、そうだよな」
ある程度解体作業に区切りがついたところで、互いの出来栄えの品評会なんかをしていた。
そして、2人の出来上がりを改めてマジマジと眺めてみると、やはり上手いなと思わずにはいられない。
上達するから楽しいのか、楽しいから上達するのか……どちらが先かは分からんが、たぶん2人とも、そういうサイクルに乗れているのだろうなって気がしてくるよ。
というわけで、俺自身の解体の腕が思ったより錆び付いていなかったことに安心……というか、気持ち上達気味だったことに満足しつつ、2人に挨拶をして解体場を後にする。
「おう、終わったか?」
「ああ、終わった。それであの2人、少し会わないうちにかなり腕を上げていたな」
「ははっ! 俺が思いっきりしごいてやってんだから、あったりめぇよ!!」
ザムトルのオッサンのしごきか……
「ん? アレスもしごいて欲しいのか? いってくれれば、いつでもビシバシいくぞ?」
「それはまぁ、またの機会ということで……」
「そうか! 気が向いたら声をかけてくれ、いつでも大歓迎だぞ!!」
「わかった、そのときはよろしく」
解体士への勧誘活動の一環といった意味合いもあるだろうが、俺の解体技術を評価してくれてのことだと思うと、悪い気はしないね。
「そんで、あとは買取だな?」
「ああ、頼んだ」
そうして、走りながら魔力を込めた薬草や、先ほど解体を終えたモンスター素材を買い取ってもらう。
ちなみに、ギルドの受付でも、久しぶりに会ったロアンナさんにゴブリンダンジョン攻略とゴブリンエンペラー討伐についてお祝いのお言葉をいただけた。
その言葉を聞きながら、原作ゲームで攻略可能なヒロインキャラではなかったが、やはりロアンナさんもステキなお姉さんだなぁとしみじみ思ったものだった。
その後、買取を終えて冒険者ギルドから外に出てみれば夕暮れ時。
そろそろ学生寮に帰るとしますかね。
腹内アレス君も、準備万端整っているようだし。
というか、あんまり遅くなると「まだか!!」って催促されちゃうからね。
そんなことを思いつつ、途中で目に留まった飴売りの屋台でべっこう飴を買って舐めながら帰った。
う~ん、この素朴で優しい味わい、いいよね。
まぁ、腹内アレス君は「この程度で、ごまかされはせんぞ!」って雰囲気を出しつつ、実際のところはゴキゲンだったようだ。
「ただいま、キズナ君!」
自室に戻り、まずはキズナ君へ帰宅の挨拶をし、シャワーへ向かう。
今日もいっぱい動いたからねぇ。
そしてサッパリしたところで、食堂へ。
ロイターたちはもういるかな~?
お、いたいた。
というわけで、3人で夕食をいただく。
「今日、久しぶりに解体作業をしたのだが……」
なんて感じで、本日の話題を提供してみた。
「ふむ……おそらくお前の想像したとおりだろうな……」
「はい、僕らも似たような経験がありますし……」
「ほう?」
何やらロイターたちが遠い目をしだしたぞ。
こいつらがこの状態になるってことは、うわさのヤベェ師匠絡みだろうな。
……師匠、か。
おっと、隙あらばおセンチボーイになってしまうな、これは気を付けねばならんね。
それから、2人の返答によって剣術修行と解体作業には、やはり相乗効果があったのだろうということが確信できた。
ということは、今日の解体作業によって、剣術のほうにもプラスアルファな結果が生まれた可能性が!?
おお! こいつは期待ができそうだね!!
そうして2人が遠い目をしているあいだ、俺はウキウキしながらの夕食となったのだった。
……そうだ! 解体の感覚を活かして、今日は運動場に用意されているナイフとか短刀型の木刀を使って模擬戦に挑戦しよう!!
フッ、キレイにバラしてあげるよ……なんちゃって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます