第217話 ちょっと置いていかれてしまったか?
お昼ご飯をお腹いっぱい食べて、今はお茶を飲みながらお腹を休めているところだ。
食べてすぐ動くのはしんどいからね。
なんてことを考えながらのんびりしている。
「えぇ! 午後からも走るのぉ!? もうやだぁ~!!」
「待てコラ! 逃げようったってそうはいかねぇぞ!!」
「……あの逃げ足を試験にも活かせばいいのにねぇ?」
「……ああ、そうだな」
朝食のときから度々目にしている小僧どもは、午後からも運動場で走り込みに励むようだ、感心感心。
そして、あの逃げようとしているクラス落ち覚悟の奴……俺もさっき地味に元気だなって思ったんだよなぁ。
実はあの小僧……怠け癖があるだけで、意外と身体能力が高いのかもしれん。
そんなことをお茶を飲みながら優雅に考えていたところ……
「まったく! 本当にお前は使えねぇなぁ! この能無しが!!」
「……ごめん」
「えぇ? なんていったの? 聞こえないよぉ?」
「……ごめん」
「だぁかぁらぁ! 声ちっちゃいよって!!」
「……もういい、その辺にしておけ」
「でも! コイツのせいで!!」
「そうですよ!」
「……いいといったはずだ」
「はい……」
「わかりました……」
なんだろう、さっきのちょっとおバカだけど和気あいあいとして愉快な感じの奴らとは打って変わって、険悪な雰囲気の4人組だねぇ。
あの詰められてる奴、なんぞヘマでもしたのかね?
一応リーダーっぽい奴が宥めてはいるけど、その本人もイラ立ちを我慢しながらって感じだしなぁ。
……ちみたちぃ! もっとスマイルだよ!!
「ヒッ!」
「魔力操作狂いが不気味な顔でニヤついてる……」
「なぁ、ヤバそうだからそろそろ行かね?」
「さ、さんせー」
「おっと、待っておくれよ」
なんか、険悪な雰囲気の4人組はそのままどっか行っちゃったし、近くの席にいた奴らには怖がって逃げられてしまった……
なんだろう……俺ってそんな不気味な顔してるのかな?
自己評価としてはクールなイケメンだと思ってたんだけどなぁ……
そうして感傷的な気分に浸りながら、お茶を一口いただく。
……さっきまでスッキリとした味わいだったのに、今はほろ苦く感じてしまうよ。
こうして食休みを終えて、午後からの活動を開始することに。
とりあえずまずは、街の外に広がる森に行こう。
そして薬草の収集なんかをしつつ、モンスター狩りと行きまっしょい!
というわけで、学園都市から出て、森に来た。
そうだな……魔力探知を駆使してモンスターや薬草を探しながら、前期試験対策も兼ねて走ろうか。
まぁ、薬草を採集するときは止まらなきゃだけど、それ以外のモンスターの討伐は基本魔法で、たまに接近戦って感じで行こうかな。
「それじゃあ、位置について、よーい……ドン!」
なんとなく、そんな掛け声とともに森の中を走り始める。
足場が悪いし、木があっちこっちに生えててまっすぐ走れない。
だが、これがトレーニングになるのさ!
確か、前世で読んだサッカーかなんかのスポーツ漫画でアジリティトレーニングとかいって、並べたコーンのあいだをジグザグに走るとかやってたような気がするし!
とかなんとか考えているうちに、ゴブリンを探知!
あ、そういえば、今日はゴブリンの腰布を装備していなかったな……俺の魔力を感じて逃げてくよ。
「フッ、逃がさんよ!」
なんてニヒルに決めながら、つららを射出。
そして、現場にダッシュで急行。
そんでもって、現場で頭につららを生やして転がってるゴブリンをササッと回収してマジックバッグに入れる。
「待ってろよ、あとでキレイに解体してやるからな!」
そう一声かけて、また走り始める。
また、いい感じに魔力を保有している薬草なんかも見つける度に、採集していく。
この薬草を採集するために何度も加速と減速を繰り返すのも、意外といい練習になりそうだね。
まぁ、魔法の力を借りて加速する風歩で似たようなことはしてるとは思うんだけどね、それはそれって感じさ!
「……ゴブリン狩りの奴、まるで嵐が通り過ぎたみてぇだな」
「……だなぁ」
こうして俺は、ときどきすれ違う冒険者たちの感嘆の声を聞きながら、森の中を走り回っていたのだった。
もちろん、ゴブリンだけではなくオークも狩った。
さすがに、普通に走っているだけなのでオークゾーンより奥まで進むことはなかったが、まぁ、それは気にしていない。
そんな感じで、モンスターも薬草も結構な量を収集できたと思うので、学園都市に戻ることにした。
このあと、ギルドの解体場で解体作業もしたいからね。
そんなわけで、ギルドの解体場へ。
「おうアレス! 久しぶりじゃねぇか!!」
「ああ、久しぶりだな」
ベテラン解体士であるザムトルのオッサン……ホント久しぶりって感じがしちゃうねぇ。
「聞いたぞ、ダンジョンでゴブリンエンペラーと出くわしたんだって?」
「ああ……だが、指摘されるまでずっとキングだと思ってたんだがな」
「ハハッ! アレスは大物だなぁ!」
「いやいや、それほどでもないさ」
一応スケルトンダンジョンも攻略したんだが、それは知らんようだな。
「それで、今日は買取か? それとも久しぶりに解体でもしてくか?」
「一応両方になるが、まずは解体をしようと思う。それで、解体場に空きはあるか?」
「聞くまでもねぇ、いくらでも使ってくれ!」
「わかった、それでは使わせてもらうぞ」
「おう、頑張ってこいよ! ああ、それとアイツらもいるから、声をかけてやってくれ!」
「ああ、承知した」
天才解体少年のクブンに、ほっそりーずの片割れのカセカ……さらに実力を伸ばしたんだろうなぁ。
マズいな、ちょっと置いていかれてしまったか?
「アレス、久しぶり」
「おお、アレスさん!」
「2人とも元気にやっているみたいだな」
「もちろん」
「へへっ、俺たち最高の解体を模索する毎日ですよ!」
「ほうほう」
そうして、2人の解体途中の素材に目を向けてみる。
「……これは凄い」
この前までだって十分上手くできていたのに、さらに腕を上げてやがる……
「頑張った」
「アレスさんにもらった魔鉄のナイフのおかげですよ!」
「そうか、役に立っているみたいで嬉しいよ」
そんな感じで2人と挨拶を交わし、俺も解体作業を始める。
……だが、2人に比べてそこまで上達できていないだろうから、少し恥ずかしいかもしれん。
ま、気にしても仕方ない。
「よっしゃ、始めますか!」
「オレも再開する」
「それじゃあ、俺も頑張っちゃいます!」
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