第216話 基礎が大事ってことなのだろう

 最近の俺は、スケルトンダンジョンでレミリネ師匠から剣術指導を受けることに集中していた。

 そして気付けば学園は、徐々に前期試験へモードチェンジし始めていたようだ。

 先ほど聞こえてきた小僧どもの会話から、そのことを理解した。

 ふむ……俺もそろそろ前期試験に意識を向け始めなきゃかな。

 とはいえ、学科は前世知識とエリナ先生の素晴らしい授業、それにエリナ先生にいいところを見せたくて予習復習バッチリで取り組んできたからね、割とイケる気がするんだよなぁ。

 それに、実技のほうも魔法系は原作アレス君がもともと持っていた膨大な魔力量に加えて、俺がこっちに来てから本気て取り組んできた魔力操作……正直、その辺の小僧に負ける気はせんよ。

 いやまぁ、そういう慢心はいかんのだろうがね。

 それから、運動系は耐久マラソンのようだけど……これはポーションの使用は禁止されているが、魔力の使用は禁止されていない。

 というより、無意識に使ってしまうこともあるから、完全に魔力を使用しないっていうのは不可能だろう。

 実際、普段俺たちがやっている魔法なしの模擬戦でも、明確に魔法を発動させるようなことはしていないが、どっかこっかで無意識にでも多少は魔力を使ってしまっているからね。

 加えて、学園サイドからしても魔力を効果的効率的に活用できるのなら、むしろ「やれ」って感じで推奨しているだろうし。

 というわけで耐久マラソン中は、魔力を体力に変換しながら走ることができるってわけさ!

 改めて考えてみたら前期試験……俺にメッチャ有利じゃね?

 まぁ、いってもまだ1年の前期だからさ、基礎が大事ってことなのだろう。

 また、学生の魔力操作離れという風潮への危惧もあるみたいだからねぇ、なおさらなんだと思う。

 なんてことを朝食を済ませて自室に戻り、ああだこうだと考えながらお腹を休めていた。


「さて、今日は何をしようかな?」


 今日は無の日で休み、前期試験を意識して勉強と魔法の練習や魔力操作マラソンに特化するのもアリといえばアリなんだろうけど……地味に日々のルーティンでやっているともいえるしなぁ。

 う~ん……ま! 今日はいっか!!

 午前中はレミリネ流剣術の型稽古、午後からはお出かけしよう。

 よく考えたら最近、ダンジョン産モンスターという討伐したら黒い霧となって消えて死体の残らない奴とばっか戦闘してたからさ。

 普通のモンスターとも戦闘したいなっていう気がしてきた。

 それに関連して、ちょっとばかり解体作業ともご無沙汰だったからね、それらもやっておきたい。


「よっしゃ! やることが決まった! まずは剣術修行! そして外出だ!!」


 というわけで運動場に向かう。

 うん、前期試験が近づいているきていることもあってか、いつもよりは生徒の数も多いようだ。

 そんな中で……


「いーやーだー! ボクはもう覚悟を決めてるんだぁ~!!」

「うるせぇ! そんなくだらん覚悟なら捨てちまえ!!」

「そうそう、みんな我慢して頑張ってるんだかさ!」

「そうだぞ、永遠にやれといっているわけじゃないんだ、せめて前期試験までのあいだぐらい真剣に取り組め」


 先ほど食堂で見た4人組の小僧どもだった。

 なんか、クラス落ち覚悟の奴が無理やり周りの奴に引きずられ、ギャーギャー喚きながらやって来た。

 フッ、よかったな……まともな方向に引っ張って行ってくれる仲間がいて。

 あの様子なら、大丈夫そうだな。

 なんて思いながら、暖かい眼差しを彼らに向けていた。


「わぁ~ん、魔力操作狂いと目が合っちゃったぁ! 怖いから部屋に帰るぅ~!!」

「アホ! そんなん、理由になるか!!」

「ほら、ゴチャゴチャいってないで走るよ!」

「安心しろ、彼は努力する者に意味もなく危害を加えるような御仁ではない」


 ……あんまり見ないほうが、彼のためにはよさそうだね。

 それはそれとして、俺もレミリネ流剣術の型稽古に取り組むとしますかね!

 そんな感じで午前中は、みっちりと剣術修行に時間を当てる。

 そしてそのあいだ、クラス落ち覚悟の奴はアレコレとゴネながらも、強制的に走らされていた。

 黙って走るほうが楽だろうに……アイツ、地味に元気だな。

 というか、そういうタイプの嫌々ながらも走らされている奴があちらこちらに何人もいた。

 まぁ、みんな試験に向けて頑張っているということなのだろう。

 そんな奴らの愚痴や喚き声をBGMとしながらの型稽古だった。

 こうして、運動場でかいた青春の汗を自室のシャワーで流し、ポーションをワンドリンク。


「ふぅ、さっぱりだぁ~」


 そしてお昼を食べに、食堂へ。


「もう……もう……走りたくないぃ~!」

「お前だけサボるなんざ、許さねぇかんな!」

「そうそう、逃げられないんだからさ……諦めて頑張ろ?」

「フッ……そういうことだ」


 おお、彼らもお昼休みのようだね。

 なるほどね、みんなそれなりに頑張っているみたいだし、俺も前期試験仕様にモードチェンジすっかな……明日からね!

 いやまぁ、別に今日だって遊びに行くわけじゃないしさ……

 あれ、なんでかな……無駄にいいわけがましい物言いになってしまっているな。

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