第215話 真面目に取り組め

 約1時間ほどの朝練を終えて、火照った体をシャワーでクールダウンする。

 そして、シャワー後のポーションをゴクリといけば、気分爽快!


「キズナ君、今日の朝練もなかなかに充実したものだったよ」


 なんて、ノリに任せてキズナ君に話しかける。

 フッ、前世でも植物は人の話していることを理解しているとかって聞いた記憶があるからね、キズナ君にも伝わっているだろうさ!

 それに、こうやって折に触れて話しかけてやるとよく育つとも聞いた気がするし!

 とはいえ、育ち過ぎて部屋中が森みたいにキズナ君で埋め尽くされても困るけどね……

 まぁ、ある程度のところでどっかに土地を手に入れて、そちらに移さなきゃって感じになるかな。

 その場合……スローライフとは名ばかりのスローライフを始める異世界転生の先輩諸兄みたいになってしまうかもね。

 そして作品によってはだけど、実はキズナ君が神聖樹とか世界樹だった……って感じになって、過激派エルフみたいのが「この樹は我々のものだ!」とかなんとかムチャなことをいいながら襲いかかってきちゃうんだろうなぁ。

 そんな妄想……というより異世界あるあるが自然と思い浮かんだ。

 そういえば、過激派エルフってわけじゃなかったと思うけど、原作ゲームにも当然のようにエルフのヒロインも登場していたね。

 登場のタイミングとしては1年の後期からだった気がするけど。

 ちなみにキャラ設定的なことをいえば、ツンデレ担当だった気がする。

 なんか初登場時は、プライドが高くて高飛車な態度で接してくるが、好感度が高まってくるとデレ始めるみたいな?

 まぁ、俺としては大人っぽさ……いうなればお姉さんらしさを感じられなかったこともあって、ストーリーの確認のために1周しただけだったけどね。

 ……気付けば、かなり脱線してしまった。

 それに、エルフの原作ヒロインと実際に遭遇したところで、特に興味があるわけでもないから放置するだけだろう。

 その辺については、こっちの世界に転生してきたときに考えていた基本方針から変わりない……原作シナリオ、そして主人公やヒロインは無視ってね!

 ……まぁ、エリナ先生だけは特別ってことで、ご理解いただけるとありがたい。

 いや、ここからは解釈の問題になるが……エリナ先生は単なる同僚になるだけで、原作ゲームにおける恋愛的な意味でのヒロインではないという解釈も成り立つわけだからさ!

 そりゃあ、主人公君の将来の進路として教師になりましたっていうのもあるだろう、そして職場には学生時代の恩師であるエリナ先生もいたってだけ……あのエンディングはそういうことだったのさ。

 ……ふむ、今日の俺は頭の回転がいいみたいだな。

 さっきから、アレコレと思考が捗ってしょうがない。

 ……余計なことをツラツラと考え過ぎという意見も聞こえてきそうだけどね!

 そんなことを思いつつ、朝食をいただきに食堂へ移動する。

 そして、空いているテーブルに座り、気ままなおひとりさまライフを堪能する。

 やっぱりね、人には「ひとり」になる時間が必要なんだと思うよ。

 誰に気を使うこともなく、自由に! マイペースに!!

 ……いかんいかん、「自由」というキーワードで、あのうさんくさい導き手の顔が思い浮かんでしまった。

 奴の自由と俺の自由は違う、俺は俺なりの自由を楽しもうじゃないか。

 なんてことを考えていると、周囲の会話が耳に入る。


「うぅ……もうちょっとで前期試験が始まっちゃう! めんどくさ~い!!」

「おいおい……今だけでも忘れようとしてたんだから、思い出させんなよ……」

「フン、試験日はまだまだ先なんだ、今からそんなに心配して神経をすり減らしてたら、当日まで持たんぞ?」

「そりゃ、君はいいよ! 野営研修でも割といい感じの成績を収めたんだからさ!」

「だなぁ……まぁ、サボった俺らが悪いってだけの話なんだけどな」

「フン、そんなに気になるなら、今からでも勉強するなり、魔力操作にでも取り組めばよかろう。1年は比較的学科に比重が置かれているのだし、学科以外に関しても魔力操作を頑張れば好成績を狙えるのだからな」

「チッ! この優等生が!!」

「……結局全部やれって話なんだよなぁ……そういやお前、さっきから黙ったまんまだけど、どうしたんだ?」

「前期試験……この難題に対するたった一つの解決策、それがこのボクにはある!」

「えッ! ホントに!?」

「おぉっ! やったな! スゲェじゃねぇか!!」

「ほう、それは興味深いな」

「ふっふっふっ」

「それで! それで!?」

「おいおい、もったいぶんなくてもいいじゃねぇかよ」

「さて、どんな解決策が飛び出すことやら……」

「それはね……腹をくくって、クラス落ちを受け入れる! これだ!!」

「このおバカ!!」

「何を考えてんだ! このどアホ!!」

「……悪いことはいわん、真面目に取り組め……卒業まで先は長いのだしな。それに今からなら、まだ間に合うはずだ」


 そういえば、前期試験があったなぁ。

 まぁ、俺は野営研修の1位パーティーの一員だし、試験そのものについてもある程度自信があるからそんなに悲壮感はないけどね。

 ……この辺、前世の俺とはえらい違いだよなぁ。

 前世の俺ならどっちかというと、あの焦りまくってる小僧どもと同じような感じだっただろうし。

 そして、あのクラス落ち覚悟の奴……スケルトンダンジョンで奴の将来みたいなのを見たばっかということもあって、大丈夫かなって思っちゃうね。

 まぁ、あの感じだと、周りの奴らがなんだかんだとケツを叩いて頑張らせる……よな?

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