第212話 人と人との結びつき

 プラウさんは元B級冒険者、か……

 初めて会ったときも、ダンジョンのボスとしてスケルトンキングが出る可能性について「アタシとしちゃぁキングを喜べるぐれぇでねぇとな!」とかいってたぐらいだからな、かなりの実力者なのだろうとは思ってた。

 加えて冒険者にはCランクの壁とかいうのがあって、もともと保有魔力量の少ない平民出身の冒険者の多くはDランク止まりで、なかなかCランク以上には上がれないとかどっかで聞いたような気がするしな。

 それなのにCランクを超えてBランク……凄いよプラウさん。

 といいつつ、普段接してて目にするちょっとした身のこなしとか雰囲気とかで強者だというのは感じ取れていたことではあるけどね。

 それをわからんあのギルド職員の男……やっぱアホなんだろうなぁ。

 ただ、それでもやっぱ貴族家の人間だからね、どんな権力の使い方をするのかっていう懸念もないわけではなかった。

 よって、その心配を消してくれたことについては、あのうさんくさい導き手に感謝せねばならんのだろう。

 それにしても、プラウさんならギルドマスターみたいなもっと上の役職になってもおかしくないだろうに……と思いかけたが、たぶん性格的に現場に近いほうがいいとかそんな感じなのかもしれない。

 あと、ダンジョンからモンスターの氾濫とかが起こった場合の対処にあたるためっていうのもありそうだな。

 そんなふうにプラウさんのことを考えながら、ダンジョン前の屋台通りで買い物をしていく。

 そして顔見知りになった屋台の店主たちにも、ダンジョンを攻略したことに伴ってここに来る頻度が低くなるだろうことを話すと、みんな祝福の言葉とともに寂しがってくれた。

 こういった人と人との結びつき、プライスレスだねぇ。

 そうして買い物も終え、ついにスケルトンダンジョンから学園都市に帰るときがきた。


「ここでは、楽しいこと、哀しいこと、いろいろなことがあったな……」


 フウジュ君に乗る前にチラリとダンジョンのある後方を振り返ると、そんな思い出たちが自然と心に浮かんでくる。


「それじゃあ、また……」


 そんな呟きを一つ残し、学園都市へ向けて飛ぶ。

 夕暮れどきの茜色が、切なく心に染み渡るのを感じながらの空の旅だった。


「ただいま、学園都市!」


 なんとなく気分を切り替える意味も込めて、空から降下しながら元気よく声を発する。

 そして、寄り道することなく自室に向かい、速攻でシャワーを浴びてポーションを一飲み。

 そんなくつろぎタイムをちょいとばかり過ごし、夕食へ。

 空いている席へ着くと、似たようなタイミングでロイターとサンズも到着。

 ……この3人での夕食も定着してきたもんだなぁ。

 なんてことを思いつつ、食事スタート。


「ふむ、どうやらけじめを一つ付けてきたようだな」

「そうですね、ロイター様のおっしゃるとおりでしょう」


 お前ら心読み過ぎ君か? と思わなくもないが……この2人と接する時間も結構長くなってきたからなぁ、そんなものかもしれない。


「……お察しのとおり、今日はスケルトンダンジョンを攻略してきた」

「ほう、ついにか……とはいえ、お前がその気なら初日で攻略していてもおかしくないとは思うがな」

「よせよ、照れるじゃないか」

「いや、思ったままを言葉にしたまでだ」

「僕もアレスさんなら、可能だったと思いますよ」

「おい! ムズムズしてくるだろ、ヤメロ!!」

「フッ、存分にムズムズするがいい」

「ええ、そうですとも、アレスさんはもっとムズムズするべきです」

「……お前らなぁ」

「まぁ、なんにせよ、ダンジョン攻略おめでとう」

「おめでとうございます、アレスさん」

「……ああ、まあ、ありがとう」

「そして、お前がソロ志向なのを知らんわけではないが、たまには我々のことも誘え」

「そうですよ、なんたって僕らはパーティーなんですからね」


 そういえば、基本ソロ活動のアレスさんだったからなぁ。

 なんか、パーティー単位でダンジョン攻略っていう意識が抜け落ちてたみたいだ。

 とはいえ、今回のスケルトンダンジョンはなぁ……特に城内のスケルトンは男気スケルトン以外はクソザコばっかだったし、うちのパーティーが総出で行ったらオーバースペック甚だしいことになっていた気がするよ。

 でもまぁ、ロイターたちはそういうことをいいたいんじゃないんだろうけどさ。

 そうだなぁ、おひとりさまライフもいいもんだが、たまには誘ってやってもいいかな。


「そこまでいうのならいいだろう、毎回と約束するつもりはないが、時々は声をかけてやる……だが、俺のスピードに付いてこれるかな?」

「面白い、日々実力を蓄えていっているのがお前だけだと思うなよ?」

「そうですよ、鍛錬量なら僕たちだって、なかなかのものですからね!」


 まぁ、その点については毎日の模擬戦である程度は理解しているつもりなんだけどね。

 というより、いまだに魔法なしの模擬戦ではこいつらに勝ててないわけだし。

 でも、ジリジリと差は埋まっているハズ!

 そして、俺がレミリネ師匠の剣を今よりもっと上手く扱えるようになれば、そのときこそ!!

 というわけで、夕食を終えたらさっそく模擬戦だ!

 今日もバリバリ気張っていくぜ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る