第208話 発想の転換を図るべきだな
「まったく……あの石はなんだったんだ?」
自然とそんな呟きが漏れてしまうが、その答えを与えてくれる者などここにいようはずもない……
そこで、改めてゲーム知識を思い返してみるが、スケルトンキングに特効のアイテムなんかはなかった気がするんだよなぁ。
まぁ、スケルトンダンジョンの攻略を助けてくれるアイテムって意味なら、廃教会でもらった光属性バリバリの首飾りが該当するんだろうけどさ……
でも、あの首飾りは装備者に光属性を付与するとかそういう意味合いのアイテムで、間違ってもスケルトンキングを爆散させる効果のアイテムじゃないしなぁ。
それに、あの石を持ってみた感じでは、明らかにただの石だったはずで、実は火属性が付与されていたとかそういうこともなかったと思う。
というか、それなら気付いた。
う~ん、正直その場のテンション任せでいった台詞みたいなところもあったけど、本当に民衆の怒りや悲しみの念がこもってあの効果を生み出したってことなのかな……
「……はぁ、いろいろ想像を膨らませることはできるけど……結局のところはわからんね」
とりあえず、投石スケルトンはヤベェ奴だったということだけは確かなことだろう。
……待てよ、それじゃあこのバターナイフとかもヤベェ効果が付いてたり?
そう思い、ネタアイテム扱いしていたバターナイフを本格的に確認してみると、地味に魔鉄製だった……
これ……魔力を込めたら普通に切れるし、刺せちゃうね……
バターナイフスケルトンよ、なんちゅうもんを寄こしてくれたんだ……
でも、ありがとう、大切に使わせてもらうよ。
……場合によっては暗器としても使えそうだし。
とはいえ、あんまり多用して「バターナイフのアレス」とかって二つ名がついたら、俺のクールなイメージが壊れかねんからな、気を付けよう。
とまぁ、そんな感じでちょっとした考察をしながら、愚王討伐によるドロップアイテムが出現するのを待っていたのだが……
出てきたのは魔石だけ。
シケてるにも程があるでしょ、舐めてんのかな?
「まったく……愚王はどこまでいっても愚王だな!!」
そんな俺の叫びに反応したわけでもないのだろうが、壁に扉が出現した。
ああ、そういえばプラウさんから「キングを倒すとボスドロップのほかに奥の宝物庫が開く」って教えてもらってたんだった。
……まぁ、ボスドロップはなかったんだけどさ。
でもこれは、プラウさんの情報が間違ってたわけじゃなく、愚王がマジ愚王だったからだろうなぁ。
そんなことを思いつつ、宝物庫へ行ってみた。
そこには、聞いていたとおり宝箱が1個だけ置いてあった。
まぁ、原作ゲームでもこういう場面では宝箱が1個だけっていうのは普通のことだったから、納得はできる。
ただ……それが現実となると、しょぼく感じてしまうのは仕方のないことだよね。
だって、宝物庫っていわれたら、部屋中にすんごいお宝がズラリ! みたいな光景を想像しちゃうじゃん?
でもま、それはともかくとして宝箱!
何が入っているのか、ワクワクするねぇ。
とりあえず、罠がないか魔力探知をかけてみる。
……よし、大丈夫。
「それじゃあ……お宝さん、いらっしゃ~い」
そんな感じで、テンションアゲアゲで宝箱を開ける!
「……はぁ? なんだよコレ……」
宝箱の中には銅貨が1枚だけ。
なんか申し訳なさそうに、ちょみんって入ってた。
「ハハッ…………ハハハハハ………………ふざけんな! クソがぁ!!」
はぁ……はぁ……体力に関係なく無駄に疲労させられた。
……そういえば、愚王はたいして得るもののない戦争を無駄にあっちこっちにしかけてたって話だったよな。
たぶん、それで莫大な戦費ばかりがかかって……このほぼ空っぽの宝箱という結果に結び付いたって感じだろうか……
うわぁ、最悪じゃねぇか。
なんか、いまさらながらにあの爆散が国民の怒りの表れだったのだと理解し納得できた。
……とりあえず、なんだかんだいったって結果が変わることはないし、これはこれとして受け止めるしかない。
いや、ここは発想の転換を図るべきだな。
ギルドの出張所に戻ったときに、プラウさんに話す面白ネタを一つ仕入れたと思えばいいんだ。
「聞いてくださいよ、プラウさ~ん! あのですね~スケルトンキングを討伐してワクワク気分で宝物庫の宝箱を開けたんですけどね……そこにはなんと! 銅貨1枚しか入ってなかったんですよ~」
なんてね!!
プラウさんは笑ってくれるかな?
どうせだから、アレスの鉄板ネタとしてこれから話すネタに困ったときに使ったろ。
そう考えたら、むしろラッキーだったかもしれんね。
「……さて、それじゃあ帰ろうか」
そして、スケルトンダンジョンはこれで攻略完了になるわけだ。
……これで一区切りかな。
まぁ、二度と来ないってわけでもないが、今までのように毎日来ることもないだろうからね……レミリネ師匠に挨拶をして帰ろう。
そうして来た道を引き返して城を後にし、思い出の空き地へ向かった。
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