第206話 元凶

 男気スケルトンナイトとの戦闘後も、数多くのスケルトンナイトと戦闘を重ねたのだが、そこで一つわかったことがある。

 それはこの国、というかこのダンジョンには、スケルトンナイトが2種類存在するということだ。

 じゃあ、その見分け方は? というと、鎧のキレイさ……傷や汚れで判別がつく。

 鎧のキレイな奴は、最初は偉そうな雰囲気を放っているが、レミリネ師匠の剣を認識した瞬間に震えて動きが鈍くなったり、酷い奴だと逃げ出そうとしたりする情けない奴らだった。

 反対に、鎧に傷があったり汚れのある奴は、レミリネ師匠の剣にさほど怯まず、勇敢に挑んでくる剛の者たちだった。

 思い返してみると、男気スケルトンナイトの鎧にも傷や汚れが結構あったな。

 また、鎧のキレイな奴は魔法なんかも使ってきたが、鎧に傷や汚れのある奴はあまり使ってこなかったような気がする。

 この結果からたぶん、鎧のキレイな奴は上位貴族出身者で、鎧に傷や汚れのある奴は下位貴族か平民出身者なのではないかと思う。

 そんなわけで、鎧のキレイなスケルトンナイトとの戦闘は実にしょうもないものだったが、鎧に傷や汚れのあるスケルトンナイトとの戦闘はエキサイティングかつ爽やかなもので、実に素晴らしいものだった。

 そうしてさらに進んでいくと、ジェネラルクラスも出現するようになった。

 しかし、こいつらは鎧のキレイなスケルトンナイトとあまり大差なかった。

 まぁ、どうせこの国だと将軍という地位にまで出世できるのは上位貴族出身者だけだろうからね……

 それから、装備とかの質はナイトよりも高そうなので、その分は強くなっているのだろうとは思う。

 だが、それでもあんまり強いという実感は湧かなかった。

 ……そんなわけで、いっちゃ悪いが、この国のスケルトンジェネラルはザコばっかりとしかいいようがないね。

 しかも、どいつもこいつもレミリネ師匠の剣を見て焦ったような雰囲気を出すし……

 このスケルトンジェネラルたちのうち誰か……いや、下手したら全員か? ともかく、こいつらはレミリネ師匠の死になんらかの関わりがあったのかもしれない。

 そう思うと、自然と縦に横にと何度も剣を振ってしまい、サイコロ状に切り刻んでしまう。


「こんなことをしてもなんの意味もない、それはわかりきったことではあるんだけどね……」


 つい、そんな呟きも漏れてしまう。

 こうして、スケルトンジェネラルたちとのなんとも締まらない戦闘を経ながら城内を進み、ついに謁見の間に続く扉の前に辿り着いた。


「この先にキングがいるというわけか……そしてこれがスケルトンダンジョン攻略へのラストバトルとなるわけだ……」


 そんな独り言をいいながら、扉を開ける。

 中は謁見の間として当然のことながら、装飾過多な……間違いなくキングだろうスケルトンが偉そうな態度で玉座に座っていた。

 ただし、この広い謁見の間でたった1体だけで……

 なんというか……この前ゴブリンダンジョンで出会ったゴブリンエンペラーとはえらい違いだ。

 あのときは、ジェネラルが隣に控えており、さらに数えきれないほどのナイトやマジシャンがズラリと勢ぞろいしていて、まさに壮観って感じだったのにさ。

 それに比べてここではキング1体って……しょぼいにも程があるでしょ。

 いやまぁ、ダンジョンのボス部屋としては割と普通のことなのかもしれないけどね。

 でも、これだけ国や街としての再現度の高いダンジョンなのだから、なんだかなぁって感じがしちゃうよ。


「まったく、この広い部屋にお前だけっていうのは……もしかして人望ないのか?」

「オオオォォ!!」


 おやおや、一丁前に憤慨していらっしゃるご様子。


「ま、そんな威嚇をいくら重ねたところで、恐ろしくもなんともないぞ?」

「オォ! オオオォォォォ!!」

「スケルトン語は未修得なんでな、お前がなんていってるのかわからん、ごめんな?」

「オォォォ!!」


 まぁ、怒り狂ってることだけはわかるんだけどね。

 さて、前哨戦ともいうべき舌戦はこのぐらいにしときますか。

 あんまり煽り過ぎたら、そのまま憤死しちゃうかもしれないしな。

 それに、あちらさんもヤル気まんまんみたいだしさ。


「それじゃあ、いつでも来いよ、裸の王様さん?」

「オォォォ!!」


 こうして、スケルトンキングとの戦いが始まる。

 念のため魔力探知をしてみたところ、さすが王族というべきか、保有魔力量はなかなかのものである。

 まぁ、俺ほどではないがな!

 そして装備品なんかも、先ほどまで戦っていたジェネラルのものとは比べ物にならないような高級品と思われる物を身に着けている。

 これらの要素から戦闘力を推し量ると、カタログスペックとしては実に素晴らしいものがあるのだろうと思う。

 だが、俺の簡単な挑発に乗ってあっさり激高するあたり、オツムのほうはさほどでもなさそうだね。

 そんな感じで軽く戦力分析をしながら、レミリネ師匠の剣を構えた。


「オ……!?」

「ふむ、なるほどな……」


 レミリネ師匠の剣を見て、戸惑いを見せるスケルトンキング。

 しかしながらその戸惑いは、恐怖感に由来したものではなく、「なぜお前がその剣を持っているのか……」という警戒感によるものだと察することができた。

 どうやらこいつも……いや、こいつこそが元凶だったのだろうな……

 これは絶対に負けられない戦いとなりそうだ。

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