第204話 敬愛
スケルトンダンジョンに入る前に、まずはマジックバッグに大切に保管していたレミリネ師匠の剣を取り出す。
レミリネ師匠の剣……刃引きしてあるため、そのままでは斬ることに適していない。
しかしながら、しっかりとした魔鉄製ではあるため、魔力を通しさえすれば切れ味鋭い名剣と化す。
前もちょっと思ったけど、レミリネ師匠を嫌った騎士団の連中の意図として、刃引きした魔鉄製の剣を支給することでレミリネ師匠に無駄に魔力を消費させて、あわよくば命を落とさせようとした、なんてことないよな。
突然変異的に魔力量が多いみたいな理由がない限り、平民出身だと保有魔力量も少ないだろうし……
まぁ、そんなことをどれだけ考えてみても、その答えを得ることはできないか。
そうして改めてレミリネ師匠の剣を眺めてみると、チャラチャラした余計な装飾のない武骨な片刃の剣。
うん、実用一辺倒という感じで、この点は気に入るところだ。
また、この武骨さはゴブリンダンジョンで出会ったゴブリンエンペラーと趣味が合うかもしれんね。
そして、片刃の剣ってところも俺には都合がいい。
というのも、日本の木刀そっくりのトレントの木刀を今まで愛用してきたからね。
とはいえ、まったく同じ感覚というわけにはいかないが、諸刃の剣よりは違和感なく振れるってワケさ。
それから、この剣には微かに、レミリネ師匠の気配がある。
その気配を感じることができれば、もう寂しくはない。
……なんていえるわけない、やっぱり寂しいよ……レミリネ師匠。
……ああ、こんなんじゃレミリネ師匠を安心させられないな、もっと気を強く持たなきゃ。
……ふぅ……大きく深呼吸をして……よし。
見ていてください! レミリネ師匠!!
レミリネ流剣術でこのスケルトンダンジョンを見事攻略して見せます!!
よっしゃ! レミリネ師匠の剣を装備して……いざ!!
そうして、スケルトンダンジョンに入る。
まぁ、入ったばかりのこの辺はね、もう慣れたもんだよ。
なんて思いながら、もはやお馴染みとなったボロボロの道を歩いていく。
そしてある程度進んだところで、少し離れたところにノーマルスケルトンを発見。
あちらも俺を認識したようで、敵意まんまんでこちらに向かってくるようだ。
「オォォォォ!」
「よっしゃ、来いやぁ!」
本日最初の戦闘に気合を高めつつ剣を構えたところ……
「ォォォ……」
「は?」
なぜかノーマルスケルトンの奴、Uターンして去っていった。
えっと……彼は何がしたかったんだ?
わからんが、まぁいいか……
そういえばプラウさんも以前、スケルトンについて「ときどきわけわかんねぇこともしてくんだよな……」といってたからなぁ、今回の行動もそういうことなのかもしれんね。
「さて、気を取り直して、攻略再開といこう」
そうして廃墟の街並みを歩いていると……
ノーマルスケルトンたちは、パッと見で俺の存在を認識すると、「うぉぉ! ぶっころじゃ~い!!」って感じで走ってくる。
だが、それを迎え撃つため俺が剣を構えた瞬間、「失礼しました~」って感じで去っていくんだ。
まぁ、実力差を感じ取って逃げ出しただけってことならいいんだけどさ、どうもそういう感じじゃないんだよな……
まったく、わけがわからん。
というか、このスケルトンダンジョン、まあまあ意味不明な行動をとる奴が多かったよなぁ……マジなんなん? っていいたくなるよ。
ま、気にしてもしょうがない、先へ進もう。
そしてその後も……
「あ、どうもね……」
なんか、武器のつもりかフライパンを背負った子供らしき小さいスケルトンが敵意もなくトテトテとやって来て、ドライフラワーをくれた。
「……もし、ご希望とあらば……光属性の魔力で天に還してあげようか?」
なんとなく、ドライフラワーのお礼として尋ねてみた。
すると、子供スケルトンはフルフルと首を振り、拒否の意思表示をした。
「そうか……君にとっては、今のままで十分なんだね……」
子供スケルトンはコクリとうなずき、トテテと去っていった。
「あ、行っちゃった……」
それにしてもこの、スケルトンたちの好意的な態度はなんなんだ?
さすがに、おかしいぞ……
う~ん、今日は何か特別なことをしたっけ?
なんて思いつつ、自分の体に目を向けてみると……レミリネ師匠の剣に目が留まった。
まさか! レミリネ師匠の剣か!?
思い返してみると、襲いかかろうとしてきたスケルトンたちは、俺がレミリネ師匠の剣を構えた瞬間に戦闘意欲を失ってたもんな……
それから、シュウという名のメガネによると、レミリネ師匠はイゾンティムル王国中の民から敬愛を集めてたって話だったよな……これはあり得るぞ……
なるほどなぁ……なんか、納得。
そしてそれは、レミリネ師匠の偉大さを再認識した瞬間でもあった。
今でもこうして、人々からの敬愛を集めるレミリネ師匠……やはりあなたはとても素晴らしい人だったのですね。
改めて、レミリネ師匠への尊敬の念が高まった。
そうして、こんな感じで結局、一度も戦闘をすることなく城門前に到着したのであった。
まぁ、レミリネ師匠は騎士団の連中とかには嫌われてたっぽいからな、ここからが本番といえるかもしれない。
「よっしゃ! ここからだ!!」
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