第203話 一つの区切りにしよう

 エリナ先生との夕食というステキな時間を過ごし、そして先ほどパーティーメンバーたちとの模擬戦を終え、今は反省会。

 そこでまず、ここ数日の俺の腑抜けた態度をみんなに詫びるにあたり、何があったのかを説明した。


「なるほどな、そんなことがあったのか……」

「なんと勝手な! 相手の強さを見誤った、その人たちの落ち度じゃないですか!!」

「そうだよ! レミリネさんは悪くないよ!!」

「……その程度の実力と人間性でしかないのなら、その人たちが王国騎士となる日はこないわね」


 あのしょうもない冒険者たちに対し、みんなも俺と同じ気持ちを共有してくれた。

 そして細かいやりとりは省いたが、レミリネ師匠がこの世界から去ってしまったことも話した。


「そうか……それは残念だったな……」

「日に日に鋭くなっていく、アレスさんの太刀筋に恐ろしさすら感じていたのですが……」

「レミリネさん……でも、レミリネさんにとっては、そのほうがよかったのかなぁ……」

「……アレス、今も『レミリネ流を世に知らしめねばならん』という気持ちに変わりはないのでしょう?」

「もちろんだ!」

「それなら、これからなお一層、頑張らなければならないわね」

「ああ、そうだな……そしてレミリネ師匠は俺の中に技術が根付いているから、あとは練習するだけといっていた……だからこそ、今の俺には努力あるのみ!」

「ふむ……根付いているのは確かだろうな」

「はい、そうですね」


 なんか、ロイターたちが妙に納得顔をしている。


「ここ数日、お前は半ば無意識で動いていたようだが……かなりキレイな剣技だったように思う……まさにお手本という感じだったな」

「はい、アレスさんの意識が薄くなった最初の日である無の日なんかは、それが初めてだったのでかなり面食らいましたよ」

「そうだねぇ、あのときのアレス君……ちょっと怖かったなぁ」

「……まぁ、それだけに動きが教科書的過ぎて、パターンを把握してからは対処が簡単だったわね」

「そ、そうか……」


 たぶん、ひたすら型どおりの動きをしてたんだろうなぁ……

 なんというか……ポジティブに表現するなら、俺のルーティン力凄くね? って感じだ。

 うん、そのときのことを思い出そうとすると、そんな感じの記憶がある。

 なるほどなぁ、雑念がないせいか、動き自体はキレイなもんだよ。

 そうだな……レミリネ師匠の剣術は、まだまだ磨くべきところはたくさんあるが、それでも確かに俺に根付いているみたいだ。

 自信を持って、頑張っていこう!

 そんな感じで、ここ数日のことも含めた模擬戦の反省を話し合ったり、魔力交流をしたりして過ごし、いつもの流れで大浴場でゆったりする。

 そして自室に戻ったら、精密魔力操作を眠る直前までやる。

 ああ、そういえば、前期の試験勉強もちょっとずつ始めなきゃかな……

 とはいえ、前世知識に加えて毎日朝練や筋トレのついでに教科書の音読もしている。

 それに何より、エリナ先生の授業を真剣に聞いているから、そこまで必死に試験勉強をしなくても結構イケる気はするんだけどね。

 そんなことを思いつつ、眠りの世界へ旅立つ。

 夢でもいいからレミリネ師匠に逢いたいな……

 ………………

 …………

 ……


 そして夜が過ぎ、新しい朝が来た。


「……ここ最近、夢を見ていないな……ああ、おはようキズナ君、今日もナイスグリーンだね!」


 さて、今日は闇の日で学園は休み。

 そこで何をするかというと……スケルトンダンジョンに行こうと思う。

 しかしそれは、レミリネ師匠が去った空き地に行くためではない。

 では、なんのために行くのかというと、それは攻略をするためだ。

 そして今回の攻略であるが、レミリネ師匠の遺した剣と剣術で挑戦しようと思う。

 まぁ、魔纏や風歩なんかも使うだろうし、そこまで厳密に魔法なしにこだわるつもりはないけどさ。

 でも、基本的にはレミリネ流剣術をメインとして攻略に挑む……

 それによって、俺なりにスケルトンダンジョンへの区切りとしたいと思う。

 そうして、朝練と朝食を済ませ、スケルトンダンジョンへ移動。


 フウジュ君との短い空の旅を終え、ダンジョン前の屋台通りに到着。

 もう二度と来ないなんていうつもりはないが、一つの区切りにしようとは思っているのが影響しているのか、ちょっとした感慨みたいなものが湧いてくる。

 まぁ、ここしばらくのあいだ、ずっとここに通っていたからなぁ、それも仕方ないかな。

 いかんな、まだ攻略を成し遂げたわけでもないのに……気持ちを戦闘モードに切り替えよう。


「よっしゃ!」


 そう一声、気合を入れてまずはギルドの出張所へ手続きに向かう。


「おう、アレス! 今日は気合が入ってるみてーじゃねぇか!!」

「どうも、プラウさん。今日はスケルトンダンジョンの攻略に挑もうかと思いまして……」


 ギルドのお姉さんことプラウさんに挨拶をし、手続きをしてもらう。


「ああ、今日のオメーなら大丈夫そうだな! ……ま、ここ数日のオメーがそんなこといいだしてたら止めてただろーけどな」


 うぅ、プラウさんにも心配をかけていたんだな……申し訳ない。


「よし! それじゃあ、頑張ってこいよ!!」

「はいっ! ありがとうございます!!」


 そうして手続きを終え、プラウさんの激励を受けてダンジョンへ。

 さあ、スケルトンダンジョン最終章の幕開けだ!

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