第200話 いつまでそうしているつもり?
「えっと、今日はなんの日だっけ……まぁ、それはそれとして、おはよう、キズナ君」
そんな感じで若干、頭の回転がゆったりとしているが、とりあえずキズナ君への挨拶を済ませた。
そしてカレンダーを確認すると今日は……光の日!?
おいおい、マジかよ……前世的にいえば金曜日じゃないか……
となると、あれから……レミリネ師匠とお別れしてから一週間近く経過していたことになるじゃないか……
えぇ……そんなに経ってたかな?
そうしてあの日から今日までの日々を思い返してみると……確かに地水火風の四日間が経過していた。
授業後、もしかしたらと思いながら毎日あの空き地に行って、レミリネ師匠がいないことに落胆しながら夕方までレミリネ流剣術の稽古に励み、あとはいつもどおりに学園に帰ってきて……という流れ。
一応、思い出そうとすれば、ああ、こんなふうに過ごしてたなって記憶はある。
でもなんか、オートモードで勝手に進行していたって感じがしてしまうね。
まぁ、別にこの間、遊んでて無駄に過ごしたってわけでもないみたいだから、そこまで悲観する必要もないかな。
そして、俺が今まで築き上げてきたこのルーティンのおかげで、日々を無駄にせずに済んでいたのだと思うと、まったくありがたい気持ちでいっぱいになるよ。
フッ、サンキュールーティンワーク!
というわけで、いつもどおり朝練に行こうかな。
ルーティンよ……俺を導いてくれ!!
そしてまた、俺の意識は……徐々に……ルーティンに……溶けて……い……く。
「アレス……いつまでそうしているつもり?」
「……ハッ! おお、ファティマじゃないか、元気か?」
「ええ、私は元気よ……あなたはそうじゃないみたいだけれど……」
「ん? 何をいってるんだ、俺も元気そのものじゃないか! 見ろ、このキレッキレのフットワークを!!」
そういって、レミリネ流の足捌きをファティマに見せつける。
「……私がいっているのは、心のほう」
「心? おいおい……『まごころアレス』の呼び声高いアレスサンに、それはないだろう?」
「……初めて聞いたわ」
「初めて? ふぅん……そいつはいかんなぁ……」
「それはともかく、あなたの様子から、おそらくレミリネに何かがあったのだろうと思ってしばらくそっとしておいたけれど、このままだとあなたが戻ってこなくなりそうだから、活を入れることにしたわ」
「え? ぎゃっ!!」
「……すっきりしたかしら?」
「いってぇ~何すんだよ!?」
ほとんど一瞬のことで、その瞬間に何が起きたのかを理解できなかったが……意識がようやく追い付いた。
先ほどファティマは、ミスリルの扇に魔力を込めて振りかぶり、躊躇なくそれを振り下ろしたのだ、俺の脳天に……酷い。
「ほら、思ったとおり……魔纏の制御まで甘くなっているじゃないの」
「ほぇ?」
いわれてみれば……魔纏が割られた……割られた!?
それって、パリンっていったってことか!?
ウソだろおい! そんなんあるわけ……あった……何より、この頭のたんこぶがその証拠といわざるを得ない!!
「なぁ、俺は……そこまで腑抜けていたのか?」
「ええそうよ、ようやく目が覚めたみたいね」
「ああ、最高の目覚ましだった……もう二度とお世話になりたくはないがな……」
「ふふっ、そうでしょうね……さて、私はもう一人のお寝坊さんを起こしに行かなければならないから、これで失礼するわね」
「……そうか」
そうして、女子寮に向けてファティマが数歩進んだところで、その背中に声をかける。
「……ファティマ」
「何かしら?」
「その……ありがとな」
「どういたしまして、それじゃあね」
「ああ、またあとでな……」
……さっきまでの俺は何をやってたんだ。
何が「サンキュールーティンワーク!」だよ、単に惰性で過ごしてただけじゃないか。
……はぁ、俺っていつもファティマにフォローされたり、助けられたりしてばっかりじゃないか?
それに、ここしばらくの俺の腑抜けっぷり……ロイターたちにも迷惑をかけたんだろうなぁ……
あいつらの見守り力も半端じゃないしさ……
そしてたぶん、エリナ先生にも無様な姿をさらしてしまったよな……
うわぁ、恥ずかしい!!
あとはやっぱ……ここしばらくの俺の姿は、レミリネ師匠を悲しませただろうな……
うぅ、申し訳ない気持ちでいっぱいになってきた。
……いや、もう過ぎてしまったことは仕方ない、ここから立て直そう。
もう十分落ち込んだはずだ、ここらで喪失感に浸るのもおしまいにしようじゃないか。
よっしゃ! 気合十分! 俺は元気!!
「うぉぉぉ! パワフルアレス! 行っきま~す!!」
そして、なんとなくノリで気の赴くままに、全力で駆け出す!!
「魔力操作狂いの奴、朝っぱらから元気だなぁ……」
その辺をうろついてたモブ太郎がなんかいってたような気もするが……まぁ、別にどうでもいいな!
俺は今、全力で風とひとつになっているのだから!!
こうして俺は約一週間ぶりに、少し長い眠りから目を覚ましたのだった。
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