第197話 レミリネ流
「師匠! 本日は二刀流でお願いします!!」
するとレミリネ師匠はコクリとうなずき、2本の短剣を取り出し構える。
というわけで、今日はトレントのマラカスのミキジ君とミキゾウ君の出番である。
レミリネ師匠の剣術は基本的には一刀流のようだが、短剣2本による二刀流も可能ならしく、ときどきそちらも教えてもらっているのだ。
まぁ、ミキジ君とミキゾウ君も出番を欲していたからさ……
それと、俺はレミリネ師匠の言葉がわからず、雰囲気で察するしかないのだが、どうやらレミリネ師匠は俺のいっていることがわかるようで、その点に関してはありがたかった。
とはいえ、俺が「もしよろしければ、二刀流なんかも教えていただければ……」といいながらトレントのマラカスを取り出したときは、さすがのレミリネ師匠も「えっ?」ってなっていた。
正直、あのときのレミリネ師匠のしぐさは、ちょっとかわいいなって思ってしまった。
たぶんみんなは、「それって……スケルトンの体でだろ?」って思うだろうけどさ……なんとなく、わかるんだよ。
朧気ながらに感じるものがあるんだ。
おそらくだけど、俺のお姉さんセンサーがその辺のところを補ってくれているんじゃないかと思うね。
とまぁ、そんな感じで今日もレミリネ師匠の剣術指導が始まり、それは日暮れ近くまで続いた。
「今日も一日、ご指導いただきありがとうございます!!」
レミリネ師匠が消えた空間に向かって礼をする。
魔纏があるのでノーダメージではあるが、剣による打ち合いとしては相変わらずボッコボコにされている。
だが、それでも少しずつ、本当に少しずつではあるが、一本を取られるまでの時間が延びてはいるのだ。
この調子、この調子。
「それじゃあ、学園に帰ろうか……」
そう呟き、移動を開始する。
もちろん、屋台通りで屋台メシも買い込んでね!
なんというか、これらを反省会のときに夜食として食べるのが恒例となってしまってさ……
まぁ、みんなもそれぞれお菓子やら何やらを持ってくるから、結構な量を食べてることにはなるね。
でも大丈夫! それ以上に運動しているから!
しかも、魔力操作がいい具合に作用しているようで、太る心配はないのさ!!
こうして学園に戻り、自室でシャワーを浴び、夕食も済ませて模擬戦もこなす。
我ながら、なんとも充実した時間を過ごせているねぇ。
というか、前世の体ではここまでアグレッシブに活動することなど不可能だったと思う。
やはり、魔力とポーションによるゴリ押しは最高だ!!
体力に関して一切の不安がないからね。
なんてことを思いつつ、模擬戦の反省会をしていたとき、ロイターが俺に一つの問いかけをしてきた。
「アレス、最近のお前のうわさを聞いていて思ったのだが、お前の師匠というのは……スケルトンナイトのことか?」
「おお、よくわかったな! さすがロイター、やるじゃないか!!」
「やはりか……」
「まさかとは思っていましたが……さすがアレスさんですね」
「ふふっ、アレスらしいわね」
「そうだね、なんか納得しちゃう」
なんだろう、もっと「えぇ……」ってなるところな気もするのだが、みんなのアレス理解度が高過ぎるのではないかと思う。
少なくとも、朝食のとき俺のことを話していたモブ蔵たちなら引いてたんじゃない?
ああ、でも、俺を擁護してくれた武辺者の彼ならそこまで引かずにいてくれたかも。
「まぁ、実際にお前の剣の腕がみるみる上がっているところを見るに、いい師匠に巡り合えたということなのだろうな」
「ええ、まったくです」
「そうだな、俺もあの出会いには感謝しているよ」
「でも確か……あのダンジョンがモデルとしたであろう国の歴史には、アレスが師事する価値のありそうな剣士などいなかった気がするのだけれど……」
「うん、私も聞いたことない気がする……あの国ってもともと経済重視で発展してた国だから、あんまり戦争もしてなかったみたいだし……」
「そうですね……最後の愚王の統治時代を除けば、ですが……」
「イゾンティムルの愚王……それまで繁栄を続けていた国を一代で滅亡させた男だったか……」
歴史の授業で習ってないところだと思うんだけど、みんな詳しいね。
いや、もしかするとあの国のことは、貴族家の人間として当然知っておくべき知識なのかもしれない。
なぜなら、あの国の盛衰をグラフで表すと、長い期間一定の高い水準で維持していたところから、飛び込みでもしたの? ってぐらい急落して滅亡したからね、反面教師としてのサンプル度がめっちゃ高いように思う。
だから、貴族家の人間は幼少の頃から「あの愚王のようにはなるな!」と何度も言い聞かせられていたんじゃないかと思う、領地持ちの貴族だと特に。
フッ、原作アレス君の知識にはそんなものなかったけどね……
それはともかくとして、みんなにも教えてやろう……本当の歴史を。
「実はな……あの国には、愚かな為政者によって消された歴史があるんだ……」
そうして俺は、レミリネ師匠にまつわる歴史の事実を語って聞かせた。
「まぁ、この話はシュウに教えてもらったことなんだがな……でも、俺一人で調べたことではなく、奴の話だからこそ、より信憑性が高いと思えるんじゃないか?」
「うぅむ……『救国の剣聖女』とはな……」
「あの防衛戦に関する書物の記述から受ける印象に、どうも違和感があったのですが……その理由がわかりました」
「……そうだったのね」
「うぅ、そんなの酷いよぉ」
みんなはこの話を疑うことなく、信じてくれたようだ。
そして、レミリネ師匠のために泣いてくれてありがとう、パルフェナ。
「そんなわけで、俺はレミリネ師匠の剣……『レミリネ流』を世に知らしめねばならんのだ、それがレミリネ師匠が生きた証となる、そう思うからな」
「……いい志だ」
「はい、とても素晴らしいことだと思います!」
「うん! 私もアレス君の考え、とっても素敵なことだと思う!!」
「……そうね、それならアレスはこれからレミリネ流の剣士として名を上げていかなければならないわね……ふふっ、面白いじゃない」
そういって、みんな賛成してくれた。
そして、基本的にあまり表情を動かさないファティマさんが、いつになく笑みを浮かべていらっしゃる……
あ、コレ……剣士として名を上げなかったらファティマさんにしばき倒されるやつだ。
とまぁ、冗談はさておいて、俺はこれからもっともっと剣の腕を磨いていこうと強く決心した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます