第195話 執着
本日闇の日。
この一週間も先週と同様、剣術仕様のものとなっていた。
しかも、シュウというメガネのおかげでレミリネ師匠のことがわかったため、より剣術度をアップさせることができた。
なぜなら、図書館に行く必要がなくなったからね。
それで流れとしてはまず、お昼ご飯を食べたらお腹を休めつつの脳内模擬戦。
休憩後には、自室で型稽古をみっちり行う。
それもある程度こなしたところで、レミリネ師匠の剣術指導を受けにスケルトンダンジョンへ行くというスタイル。
そうして日に日にレミリネ師匠の剣術が身に付いていっているという感覚は、とても嬉しく、充実したものである。
また、それに伴ってうちのパーティーメンバーたちとの模擬戦でも、いまだに勝利こそしていないものの時間切れによる引き分けが増え、あまり負けなくなってきているのだ。
これは目に見えて成長しているといえるだろう。
フッ、この調子でいけば勝利の日も近いな!
フハハハハ!!
とまぁ、そんな感じで朝食をいただきながら、この素晴らしい一週間に思いを馳せていたところ……
「貴殿らはもう、聞きましたかな? あの奇行子殿が、またおかしなことを始めたらしいですぞ?」
「奇行子って……ああ、魔力操作狂いのことか……で、おかしなことって何?」
「ハン! どうせ奴のことだ、その辺のババアでもナンパしてたんだろ?」
「まぁ、それも大きく外れてはいないのですがねぇ」
「えぇ……外れてないんだ……」
「正直俺も、勢い任せでいったみたいなところがあったんだけどな……」
なんか、知らないうちにあだ名が増えてるね……いっつも、誰が考えてるんだろう?
それはともかく、「ババアでもナンパしてた」っていうのは酷いじゃないか。
俺はただ、お姉さんとちょっとしたおしゃべりを楽しんでいるだけだというのに。
まぁでも、彼らはまだまだ若造だからな……お姉さんのよさを理解するには若すぎるというものだろう。
そう思えばこそ、広い心で聞き流してあげようじゃないか。
フフッ、君らにも理解できる日がくるといいね?
「それについての議論はまた日を改めるとしまして……その奇行子殿ですがね、最近は学園都市から日帰りできるところにあるスケルトンダンジョンに通い詰めているようでして」
「うへぇ、スケルトンかぁ」
「お前、まだスケルトンに慣れてないのか?」
「いやぁ、だって気味悪いもん!」
「『もん』ってお前……まぁ、それはいいけどよ、スケルトンとも戦えるようになっとかねぇと、いざってとき困るぞ?」
「……僕も、それはわかってはいるつもりなんだけどさぁ」
「まあまあ、そこは追々と慣れていきましょうぞ、私もお手伝いしますゆえ」
「うぅ……わかったぁ」
「ま、急にってわけにはいかねぇか……話が逸れちまったけど、魔力操作狂いがスケルトンダンジョンに通ってるからってどうなんだ?」
「おお、そうでしたな……それで奇行子殿ですが、ダンジョンの攻略をするでもなく、ある一体のスケルトンナイトに執着しているようで……」
「執着!? ひゃぁ! 意味がわかんないよぉ!!」
「おいおい……ババアにスケルトンって……アイツの性癖どうなってんだよ……」
「そしてそのスケルトンナイトにですね……毎日のようにいたぶられては嬉しそうにしているそうなのですよ……」
「……なんなんそれぇ……怖いよぉ……」
「……おまけにドマゾときたか……ヤベェな……ん? でもアイツ……この前はロイターの骨を嬉々として折りまくってたよな? もしや、どっちもイケるってことか?」
なんというか……表現の仕方でこうも印象が変わるもんなんだなって感じだね。
「お主ら……少し聞こえてきていたのだがな、かの御仁のことを勘違いしておるぞ?」
隣のテーブルに座っていた男子生徒が会話に加わるようだね。
「勘違いって?」
「某は実際にかの御仁をスケルトンダンジョンで見かけたが、あれは単にスケルトンナイトに挑戦していただけのこと」
「はぁ? ボコボコにされて喜んでただけじゃねぇのか?」
「やれやれ……お主は強き者に挑む喜びを知らぬようだ」
「強き者って……たかがスケルトンナイトだろ? まぁ、弱いというつもりはないが、かといってそこまで大げさにいうモンスターでもねぇだろ」
「……そのスケルトンナイトが『ユニーク』だったとしたら?」
「なッ!?」
「……そういうことだ」
「ねぇねぇ、それってホントにユニークなの?」
「ああ、間違いない……実は某も一度手合わせしたのだが、完膚なきまでに叩きのめされてな……ほかのスケルトンナイトには問題なく勝てる某がだ……それに昔、スケルトンキングにも父上と兄上とともに挑戦したことがあるのだが、それよりも圧倒的に強かった……ゆえにユニーク、これは自信を持っていえる」
「ぴぇぇ! そんなんムリぃぃぃ!!」
「貴殿のいうことは理解しましたが……それほどまでに強いモンスターにも関わらず、戦死者が出たとは聞きませんが? それに、奇行子殿は毎日のように挑んでいるようですし」
「いわれてみれば、そのとおりだな! その辺はどうなんだ?」
「手合わせしてみてわかったが、あのスケルトンナイトに殺意はない……なぜかはわからんがな……とはいえ、それもまたユニークたる所以といえるだろうよ」
そうか、レミリネ師匠というスケルトンナイトをユニークと捉える考え方もあるわけか、なるほどなぁ。
そして、ユニークだからこそ割と自分の意思を持って行動できるというのも納得できそうな気がする。
「いいたいことはそれだけだ……邪魔したな」
そういい残して、彼は立ち去っていった。
あの武に生きてますって感じ、カッコいいじゃん。
あと、俺のこと擁護してくれて、ありがとう、いい奴だな!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます