第191話 ただそれだけのこと!!
武術オタクのメガネからスケルトンナイトのお姉さん改めレミリネ師匠の話を聞き終え、その内容を飲み込むまでにしばしの時を要した。
そうして、ある程度気持ちに落ち着きを取り戻したところで、メガネに礼を述べる。
「話を聞かせてくれてありがとう、感謝する。そして、何か礼をしたいのだが……」
「いえ、礼には及びません」
「いやいや、そんなわけにはいかない」
「フフッ、そうおっしゃるのなら……レミリネの剣をしっかりとものにしてください」
「もとより、そのつもりだ」
「いえ、生半可なレベルではいけません、しっかりとものにするのです……アレス君の剣から、レミリネの姿がはっきりと見えるぐらいにまでね」
「はっきりと見えるぐらい……」
「そうです、期待していますよ」
そういって、朗らかな笑みを残してメガネは去って行った。
ただ、去り際の奴から魔力圧が漏れ出ていたことだけは指摘しておこうと思う。
そして奴の様子から察するに、抑えてもなお、あふれ出すのを止められなかったという感じだろうか。
おそらく、俺が一人の武芸者として成長するのを待っているのだろうな……うずうずしながら。
……わかったよ、最初からそのつもりだったけど、レミリネ師匠の剣を必ずものにしてやるからな! 待ってろよ!!
そんな決意を改めて固めながら、俺も運動場を後にする。
そして今日もまた、ダンジョンへ行ってレミリネ師匠に稽古を付けてもらうのさ!
……それにしてもメガネの奴、妙に強キャラ臭を放っているけど、原作ゲームにはあんな感じのキャラは登場しなかったと思うんだけどなぁ。
まったく、意味がわからんよ。
そんなことを思いながら、廊下を歩いていると、たまたま野営研修の結果発表の掲示が目に留まった。
ある程度掲示されてから時間が経っているせいか、人もまばら。
一応、うちのパーティーが1位だったことは知っているけど、ちょこっと見てみてもいいかな。
どれどれ……
「……ん?」
うちのパーティーの収集物の内訳にある、最下級の薬草3,152本ってなんだ?
俺が野営研修でただの草に魔力を込めたのは500本ぐらいだったはずなんだが……
それに、普通に採集したものも同じぐらいだから……2,000本ぐらい多いぞ?
……さては、ロイターの奴だな?
見張りで俺がただの草に魔力を込めていたのを知っているし……それを真似したんだな。
それに、ロイターからの流れでファティマ辺りもやってそうだ。
なるほどなぁ、なんか納得がいったよ。
そして、2位のメガネのところは見事にモンスターの素材のみ。
……まぁ、野営研修中にちらっと見たメガネのパーティーメンバーの令嬢たちも、明らかに武闘派って感じだったからなぁ。
というかむしろ、パッと見ではメガネが一番のほほんとしてそうなぐらいだし。
それで、3位の王女殿下のパーティー以降は……主人公君の名前とか、未来の近衛殿ことティオグなんかの名前があるところを見ると、王女殿下の取り巻き系パーティーがズラズラと続く感じだな。
ふむ、アイツらも頑張ってるみたいだな!
……しかしながら、こうして見ていくと意外と大したことないパーティーも結構あるな。
なんか前、主人公君がオークを狩ってたことに対して、「そんなん誰でもできる」みたいな感じでけなされていた記憶があるけど、ノーマルオークすら討伐していないパーティーもあるし。
でも、仮に戦闘が苦手だったとするなら、薬草とか木の実とかを採集すればいいのに、そういうのもあんまりしてないんだよな。
いや、そもそもとして、全体的に採集系は人気がないのか。
そういったものが収集物の内訳に含まれているパーティーが少ないからね、おそらくそうなんだと思う。
そしてこの最下位集団だけど、何も集めていないというのはちょっとした冗談かと思いたかったが、マジだったとは……
やる気がないにもほどがあるでしょ。
さっき食堂で「情けない」といっていた男子がいたが、ホントそう思うね。
しかもこいつら、家名があるところから考えて全員貴族家の人間だからな、能力的に無理だったとは思えん。
……まったく、せっかく魔力に恵まれて生まれてきたというのにもったいないものだよ。
まぁ、魔力に恵まれ過ぎた俺がいうと嫌味になっちゃいそうだけどさ。
でもやっぱ、感覚が違うっていってしまえばそれまでなのかなぁ。
俺なんかは、前世が魔法を使えない世界だったから、魔法の使えるこの世界はまさに夢のような場所って思えちゃうけど……彼らにとってはそれが当たり前で、新鮮味もないんだろうからね。
……ま、そんな悲しい感想はこれぐらいにして、ダンジョンへ行こうか。
俺は俺なりに素晴らし異世界ライフを送る! ただそれだけのこと!!
今行きますからね、待っててください! レミリネ師匠!!
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