第187話 染めちゃえ!

 本日闇の日。

 そして現在、学園の食堂で朝食をいただいているところだ。

 それから、この1週間の俺の活動であるが、基本的には自分自身のレベル上げという、ほとんどいつもどおりの内容なのだが、昼間が剣術仕様となっている。

 その流れとしては、昼食後に図書館でスケルトンナイトのお姉さんについて調べ、ある程度時間が経ったら自主練、それも一段落したらダンジョンに行ってお姉さんによる剣術指導を受けるって感じだ。

 それで、お姉さんのことだが……依然として不明のまま。

 今のところわかっているのは、偉い学者さんの研究資料によると、スケルトンダンジョンがコピーしているのは、大昔に滅んだイゾンティムル王国の王都だろうということ。

 そしてそのイゾンティムル王国であるが……どうやら暗君のせいで滅んだようだ。

 なんか、先代が戦争とかをせずに国を富ませた仁君として称えられていたのが気に食わなかったらしく、先代が崩御して自分の代になった瞬間、あっちこっちに戦争を仕掛けて……って感じでさ、その後については想像に難くないよね。

 ……まぁ、偉い人には偉い人なりにいろいろあるんだろうとは思うけど……なんだかなって思ってしまうよ。

 おっと、そんな暗君のことはどうでもよかったんだった……とにかく、そういう情報は得られたんだけど、肝心なお姉さんのことがわからなかったんだ。

 う~ん……ダンジョン側もあれだけ念入りに滅亡した王都を再現していたのだから、おそらくお姉さんも実在の人物だったと思うんだけどなぁ。

 ……待てよ、優秀過ぎて暗君の不興を買って窓際に追いやられてたって可能性は考えられないか?

 ああ、これはありそうだぞ……それなら手柄の立てようもないし、歴史に名前が残らないのもうなずける。

 ……とりあえず、この様子だとすぐにはわかりそうもないし、お姉さんのことは気長に調べていくしかないかな。

 そんなことを思いながら、なんとなく食堂を見渡すと、食事を終えて食堂から立ち去る途中の豪火先輩の後姿を見つけた。

 いやぁ、やっぱ豪火先輩、ワイルドでカッコいいんだよなぁ。

 それに、あの装備の黒と赤の組み合わせがなんともイケてるんだ。

 そういえば豪火先輩のカッコよさを見習って、俺も黒一色の装備に差し色を入れようかと思ってたんだった。

 とはいえ、トレントブラザーズは黒じゃないから、厳密にいえば黒一色ってわけじゃないんだけどさ。

 まぁ、それはそれとして、服とか鎧とかそっちの話ね。

 そんで、ふと思ったんだけどさ、ゴブリンエンペラーの腰布、コレが使えそうだなって気がしたんだ。

 鎧の上から腰に巻くって感じでさ、たまにファンタジー系衣装でカッコいいお兄さんが巻いてたりするでしょ? あんな感じさ。

 そこでさ、「お前それ、パレオじゃ~ん」とかいわないでもらえると嬉しいなって思うんだ。

 でも、自分でそう思ってしまった時点で無理かなぁ……

 とまぁ、朝食を終えて自室に戻ってきたところで、とりあえず試しにゴブリンエンペラーの腰布を巻いてみることにした。

 もちろん、既に何度も浄化の魔法をかけてあるので、完全無欠にキレイさ!

 それはともかくとして、俺にはちょっと大きいかなと思っていたんだが、自動的にサイズ調整がされた。

 なるほど、そういう付与効果付きだったんだ……さすがエンペラーの持ち物だっただけはあるね。

 一応サイズ調整の付与効果に関しては、今着ている制服で慣れていたからそこまで驚くこともなかったけど、これが初めてだったらびっくりしていただろうなって思う。

 そして鏡でどんな感じか確認してみたところ……アレス君のもとのルックスがイケメンではあったからだろうけど、そこまで駄目ってわけではなさろう。

 でもやっぱ白は違うな……そうだ、染めちゃえ!

 色としてはそうだな、豪火先輩リスペクトな感じで赤にするのもアリだけど……

 ただ、まったく同じ色っていうのも真似し過ぎてキモいって思われるかもしれないから、ワインレッドにしとこうかな。


「よっしゃ、決めたぞ! 俺はゴブリンエンペラーの腰布をワインレッドに染める!!」


 そんな決意をしつつ、今日の分の自主練をまずこなしてから街に出る。

 向かう先はもちろん、染色屋。

 そうして白いゴブリンエンペラーの腰布はワインレッドへと生まれ変わるのだ。

 というわけで、今日のところは染色屋に預けて、後日受け取りとなった。

 ちなみに、やはりエンペラーは伊達ではなかったらしく、店員の話ではかなりの高級品だったらしい、やるね!

 ついでにゴブリンハグの腰布も同じく染めることにしたのだが、こっちに関しては店員の態度が実にアッサリしたものだった。

 ……まぁ、ノーマルゴブリンの腰布だからね、むしろよく平然とした対応を貫いたものだというべきかもしれない。

 その後は、トレルルスの店に寄ってポーションを買い足す。

 それとともに、新人冒険者……というより今はもう錬金術師の卵というべきか、そんな少年少女たちの様子を聞いてみたところ、みんな実によく頑張っているようで、トレルルスとしても教えがいがあるとのことだった。

 うむ、感心感心。

 さて……お昼にはまだ早いが、もう食べておこうかな。

 今日もダンジョンでスケルトンナイトのお姉さんの剣術指導を受けるつもりだし、しっかり食べてパワー全開で行かなきゃね!

 そんなことを思いつつ、たまたま目についた飯屋に入った。

 さぁて、何を食べよっかな~楽しみだね、腹内アレス君!!

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