第185話 自惚れ過ぎてる?
「今日の授業は野営研修後に休みが続いていたためか、少しボーっとしていた生徒もいたけれど……来月には前期試験も控えていることだし、気持ちを切り替えてしっかりと授業に臨むこと、いいわね? 特に今回の野営研修で思うような活躍ができなかった生徒は、ここが頑張りどころよ。それじゃあ、今日の授業はここまでとします」
連休後にようやくやってきたエリナ先生の授業だというのに……それをボーっとして聞くだと!?
実にけしからん! まったく、どうなっているんだ最近の若者は!!
……俺もその若者といえるかもしれないけどさ。
それはともかくとして、前期試験か……
とりあえず、なんの努力もしなかった原作アレス君ですら2年の前期まではAクラスにいられたわけだし、この前の個別面談でもエリナ先生にこの調子でいけば大丈夫とお墨付きをもらっているのだ。
舐めているつもりはないが、ある程度の成績は収められるだろうと思う。
なんといっても、一番ネックとなるだろうと思っていた運動能力、これもダイエットが成功した今となっては結構いい感じになってきている気がするし。
……フッ、ポーションと魔力によるゴリ押しの鍛錬で築き上げた運動能力は伊達じゃないのさ!
また、学科のほうも前世知識でカバーできる部分もあったし、こちらの世界ならではの科目も朝練中の音読や……何よりもエリナ先生の授業が素晴らしいからね、授業中にほぼマスターできちゃうのさ!!
まったく、そんな素敵なエリナ先生の授業中にボーっとするだなんて……俺には信じられんことだよ!!
あとはまぁ、魔法についてはさ……俺が「魔力操作狂い」っていわれているの知ってるでしょ? そういうことだよ。
というわけで、こんな感じのことを考えながら食堂への移動と昼食を済ませた。
「さてと、お腹を休めるついでに……図書館に行こうかな?」
なんて独り言を一つして、図書館に移動。
というのも、いつまでも「スケルトンナイトのお姉さん」と呼ぶのもどうかなって思ったんだ……
それであのスケルトンダンジョン、どっかに実際にあった国をダンジョンが再現している可能性があるって話だったでしょ?
だからたぶん、あのダンジョンを調べている偉い学者さんの研究成果をまとめた資料なんかが図書館にあって、お姉さんの名前もわかるんじゃないかと思ったんだ。
「う~ん……この国のことだと思うんだけど……それらしき記述がないな……」
このあとお姉さんの剣術を体に覚えさせる自主練をして、それが終わったらまたお姉さんに剣術を習いにダンジョンに向かいたかったので、調べる時間が限られていたのは確かだ。
しかしながら、ザッと資料を眺めてみた感じ、お姉さんらしき人物に関する記述が見当たらないのはおかしい。
この前の生徒たちが話していたように「生前の強さまでは発揮できない」スケルトンの体であれだけの剣術……正直、どこまで鍛錬を積めばあのレベルに到達できるのか先が見えないと感じさせられた剣の腕だったのだ。
それが、強さこそ正義みたいなところのあるこの世界において、剣士として名を残していないはずがない! 絶対に何かしらの記述があってしかるべきなのだ!!
「ふぅ……少し熱くなってしまったな……落ち着こう……」
まぁ、サラッと目を通しただけなので、見落としがあったかもしれないし、そもそもとして俺の調べ方が悪かった可能性だってある。
とりあえず、今日のところはここまでとして、続きはまた明日にしよう。
そんなわけで、自室に戻り自主練。
運動場に行ってもよかったのかもしれないけど、ちょっと手間だし……俺の部屋でも素振り等の自主練をするぐらいなら余裕の広さがあるからね。
あとたぶん、終わったらシャワー浴びるし。
やっぱ、スケルトンナイトとはいえ、お姉さんに剣術を教えてもらいに行くわけだからね、身嗜みはきちんとしておくべきでしょ?
そうして、まだまだ完璧には程遠いものの、今できる精一杯の自主練をこなした。
その後はシャワーを浴びて、ようやくダンジョンへ移動開始。
「今日も頼むぜ、フウジュ君!」
流れる風景を眺めているときふと思った。
そういえば、この前エリナ先生から眼にいつもより多めに魔力を込めると魔力の色を認識できると教えてもらったよなって。
あれって、武術にも応用できるんじゃない?
なんというかこう、「相手の動きがよく見える!」みたいな感じでさ。
よし、試してみるか。
……ふむ、あのときは魔力の色に意識が向いていたけど、なんとなく風景のほうも見え方がよくなった気がする。
だが、慣れていないせいだろうけど、いくらかそっちに意識が持っていかれるのは微妙だな……
ああ、そうだ、全身を巡る魔力量自体をちょっと増やしてみるか。
たぶんこれも、慣れるまでは違和感があるだろうけど、一カ所だけよりはやりやすいんじゃないかと思う。
とまぁ、そんなことを試しながらの空の旅を経て、スケルトンダンジョン前に到着。
まずはギルドの出張所で受付を……と思ったけど、昨日対応してもらったギルドのお姉さんは今日いないみだいだ。
仕方ないからほかの人で……
「ダンジョンの受付を頼む」
「……」
無言でギルドカードをひったくられた。
「ほらよ」
そして手続きを終え、ぶっきらぼうにカードを返される。
……なんというか、俺に前世の記憶があるせいか、サービス業としてそういう態度はいかがなものかと思ってしまうね。
まぁ、俺がいままで出会ってきたギルド関係の人が、運よくいい人ばかりなだけだったってことなんだろうなぁ。
それはそれとして、次からはこの男じゃなく、別の人に手続きをしてもらうとしよう。
……なるべくなら、昨日のお姉さんがいてくれるといいんだけどね。
さて、気持ちをさっさと切り替えて、スケルトンナイトのお姉さんのところへ急ごう。
そして、今日は目的がハッキリしているので、その途上に出現するスケルトンの相手をしてあげる時間はないのだ、ゴメンね!
なんて思いながら、昨日お姉さんと出会った空き地に着いた。
お姉さんは……いた!
なんか、存在感が希薄だったので、一瞬見落としかけたが……今日もここにいてくれた。
「師匠! 今日も一日、よろしくお願いします!!」
そう声をかけたところで、お姉さんの存在感が増した。
もしかしてお姉さん、俺が来るまでほかのダンジョン探索者と戦闘をして消耗しないようにしてくれていたのかな?
……なんて、自惚れ過ぎてる?
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