第183話 あえて異国の剣術

 模擬戦を終え、今は恒例の反省会へと突入している。

 模擬戦の対戦成績としては相変わらずって感じ。

 まぁ、スケルトンナイトのお姉さんの動きを、脳内イメージではかなり緻密にやっていたとしても、実際にそれを身体操作として再現するのは難しいというのは当然のことだろう。

 だが、自分の中で目指すべきゴールが明確になったのは大きい。

 あとはお姉さんの動きのイメージ通りに自分の体を動かせるよう練習あるのみだ。

 そうした自主練をしっかりと積んだうえで、お姉さんのところに日々通って更なる技術を学ばせてもらい、その技術を模擬戦で実際に試してみるという繰り返しで剣術を学んでいこうと思う。

 フフッ、我ながら完璧な計画だな!

 そんなことを頭の片隅で考えていたら、話題が今日の俺の戦闘スタイルについてとなった。


「アレス、今日の動き……お前もついに剣術を学び始めたのか?」

「ああ、素晴らしい師匠に出会えたのでな」


 ロイターめ、早速気付いてくれるとは……俺は嬉しいぞ!


「でも、動きとしては王国式ではなさそうですね……それに、古流とも少し違うようですし……」

「俺も詳しいことは知らんのだが、師匠の出身はどうやらカイラスエント王国ではないみたいだからな」

「なるほど、あえて異国の剣術を学ぶあたり、さすがアレスさんという感じですね」

「フッ、まぁな」

「……アレスのことだから、それがカッコいいとでも思ったのでしょうね」

「ファティマちゃん! そういうことは思ってても口に出さないの!!」


 たったあれだけの動きで……しかも、今の俺の技術レベルでは全然だっただろうに……サンズの奴もなかなかに鋭いな。

 しかしながらファティマよ、お前もなかなかに辛辣だな。

 そしてパルフェナもたぶん、同じように思ってたっぽいな……ちょっと恥ずかしくなってきたぞ。


「今日のところはまだ、剣術としては初心者丸出しだったが……お前がこれから剣術も身に付けていくとなると更に差が広がってしまうな……私もこうしてはおれん! サンズよ、もっともっと鍛錬に身を入れていくぞ!!」

「はいっ! 喜んで!!」


 おりょ? なんかロイターとサンズの闘志に火を付けてしまったみたいだな。

 だが、俺もまだ魔法なしでは全敗中だからな……こうしてはおれんのは俺も同じだ、気合を入れていかねばならんね。

 フフッ……この刺激を与え合える関係っていうのは実にいいものだ。

 また、今日の印象では、剣術の腕だけでスケルトンナイトのお姉さんに勝つのはかなり至難の業だと感じてしまったのが正直なところだ。

 それに比べてロイターたちのほうはまだ可能性を感じられる。

 そのため、まずはロイターたちに剣術で勝利を収めるのが短期的な目標といってもよかろう。

 そして……いずれはお姉さんからも勝利をもぎ取ってみせる!

 今はまだ遠い目標に感じられるが、一歩一歩着実にいこう。


「……個人的な戦闘能力の向上も重要だけれど、いろいろな場面を想定して複数人での模擬戦もしてみてはどうかしら?」

「そういえば、昨日も今日も個人戦だけだったね」

「ふむ、ファティマさんのいうとおりだな」

「確かに、そうした変則的な模擬戦も選択肢に入れていくべきでしょうね」

「もちろん、俺も賛成だ……あの騎士の男がやったような奇襲も防げるようになっておきたいしな」

「ええ、そうね……それじゃあ決まりということで、早速明日はどんな場面を想定して模擬戦をするか考えてみましょうか」


 俺の発言によって雰囲気が重くなりかけてしまったが、ファティマがすぐに話題の転換というフォローをしてくれた。

 ……気を使わせてしまって、すまんな。

 今日の反省会としては、こんな感じだった。

 そしてもちろん、今日も屋台メシを大量放出したった。

 なんというか、うちのパーティーって食いしん坊がそろってるんだよね。

 ……あれっ? そう考えると、原作アレス君の暴飲暴食キャラのアイデンティティーがマズいことに?

 まぁ……そんなアイデンティティーはいらんから別にいいか。

 やっぱ俺はクールでないと……クールでナイト……な!!


「……またおかしなことを考えているわね?」

「まぁ、夜ともなればな」

「おい! わけがわからんぞ」

「ファティマちゃ~ん、アレス君にいじわるいうのはそれぐらいにして、はやく大浴場に行こっ!」

「そんな慌てることでもないでしょうに……仕方ないわね」


 そうして、ファティマたちは大浴場の女湯へ。


「さて、私たちも行くとするか」

「そうですね」

「ああ、風呂が俺たちを待っている……急がないとな!」

「そうか? そこまで急ぐ必要もないと思うのだがな……」

「確かに、大浴場は掃除等の時間以外はいつでも入れるので、時間がないというわけでもありませんからね」


 こうして、俺たちは男湯へ向かった。

 今日もたくさんいい汗をかいたからな、最高の気分でバスタイムを味わえることだろう、楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る