第182話 何度も頭の中で反芻している

 スケルトンナイトのお姉さんの剣術指導を終えた俺は、学園都市に帰るためダンジョンから出てきた。

 その移動中、先ほどまでの戦闘を何度も頭の中で反芻している。

 お姉さんはどんな足運びをしていたか、どのように剣を振っていたか……そういったイメージを脳細胞に刻み付けるように何度もである。

 そして、ギルドのお姉さんがまだ出張所にいたので、挨拶をしてから帰ることにした。


「こんばんは、ダンジョン探索はまだそこまで進んでいませんが、今日のところはこれで帰ることにします」

「おう、オメーか! よしよし、無事に帰ってきたな、えれぇぞ!」


 そういってニッカリと笑顔を見せてくれる。


「で? どうだったよ?」

「スケルトンはやはり、もとが人間だからか知恵を使ってちょっとした小細工みたいなことをしてくるのが、ゴブリンなんかのモンスターとは違うなって思いましたね」

「あぁ、確かにそーだろな、でもまぁアイツら、意識としちゃぁそこまで明瞭なわけでもねぇみてーだから、ときどきわけわかんねぇこともしてくんだよな……ザコスケルトンだと特にな。それに、意識レベルに差があんのか、知恵の回り具合も個体差が結構でけぇんだよなぁ」


 ドロップアイテムとしてただの石を寄こしてきた奴もいたぐらいだからな……あれにはなかなかイラつかせてもらったよ。

 とはいえ、ドロップアイテムを用意しているのはダンジョンかもしれないけどさ。


「……しっかしその様子だと、うわさのやたらとつえースケルトンナイトには出くわさなかったみてぇだな?」

「いえ、逢えました……ただ、私の剣の腕ではまったく歯が立ちませんでしたが……」

「その辺の冒険者どもだと『ツイてねぇ』ってピーピーメソメソいってんのに、オメーはえれぇ嬉しそうにいうじゃねぇか……まぁ、アタシとしちゃぁそんな奴のほうがおもしれーとは思うけどな!」

「いやぁ、私としてはとても素晴らしい経験を積ませてもらえたので、むしろ『ツイてた』といいたいぐらいですよ」

「おぉ? いうじゃねぇか、このやろう! ハハハハハ」


 そういって肩をバシバシされる。

 こういうスキンシップもいいもんだよね。

 ついでにこのとき、バシバシがきそうだと察したので部分的に魔纏を解除したのはいうまでもない。

 それをお姉さんも気付いていたようで、「こいつめ」って感じで笑顔を深め、ちょっと強めのバシバシをくれたのだった。

 こんな感じで軽く挨拶だけして帰るつもりだったが、ギルドのお姉さんと話が弾んだため、しばし会話を楽しんでからギルドの出張所を後にした。

 そして、これからフウジュ君を飛ばして帰れば、模擬戦までには余裕で帰ることができるのだが、夕食がちょっと微妙なところなのだ。

 そんなわけで、夕食に間に合わなかったら腹内アレス君がこれ以上ないぐらい怒るのは確実なので、ダンジョン前の屋台通りで食料を買い込み、それを食べながら帰ることにした。

 それで腹内アレス君も了承してくれたので、実にありがたい。

 ただし、「夜食の分も忘れんなよ」という言葉が添えられていたことはここだけの秘密だ。

 それはそれとして、なんかこの調子だと、空中飲食の頻度がこれからどんどん増えていきそうな気がしちゃうね。

 ま、アレスさんは忙しいからしょうがないよね? とでもいっておこうかな。

 とかなんとか思考を巡らしながら空の上で夕食をいただきつつ、学園都市に向けて飛ばして帰った。

 それで結局、学園には模擬戦までにはだいぶ余裕を持って着くことができ、なんだったら夕食も食べれたかもしれないぐらいだった。

 すると、腹内アレス君が「デザートぐらいよかろう?」とかいってくる。

 俺としては正直、シャワーを浴びようかと思っていたのだが……仕方ない、浄化の魔法で済ませてしまうか。

 いやまぁ、シャワーより浄化の魔法のほうが洗浄力とか、いろいろ格上なんだけどね。

 ま、お風呂でゆったりっていうのは、反省会の後に大浴場ですればいいか。

 というわけで食堂に向かい、デザートを選んでロイターたちのいるテーブルへ。


「今日はゆっくりだったな?」

「そうですね、食堂で夕食を取らず、模擬戦には直接運動場に行くのかと思いましたよ」

「一応、これでも急いだつもりではあったんだがな……そして、そうしようかとも思っていたのだが、デザートの引力に負けてしまってな」

「そうか、まぁ時間はまだある、しっかり食べるがいい」

「それじゃあ、僕もおかわりしてきましょうか……ロイター様はどうしますか? 必要なら取ってきますが」

「じゃあ、頼もうか」

「わかりました」


 まぁ、俺ら3人よく食べる系男子だからね。

 俺も、転生してきたときほどじゃないけど、未だに結構食べるし。

 ああ……あのダイエットの日々が懐かしいよ。

 期間は意外とそれほど長くはなかったけど、それでも、なかなか大変だったからなぁ。

 そんな思い出にも軽く浸りつつ夕食を終えたところで、さぁ模擬戦だ!

 今日の俺は昨日までの俺と一味違うぜ?

 なんてったって、スケルトンナイトのお姉さんに稽古を付けてもらったんだからな!

 よし、今日の模擬戦では、お姉さんの動きを意識して取り組んでみるか。

 一応、お姉さんの動きはあれからことあるごとに頭の中でイメージしていたわけだし。

 それを俺の体で再現するんだ、やってやるぞ!!

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