第179話 基準がわかんねぇ

 廃教会を出たあと、スケルトンを求めてブラブラと街歩き。

 今はもう、光属性で魔纏を展開していないからね、大丈夫だよ~恐くないよ~

 とかなんとか思いながら歩いていたら、スケルトン発見!

 あちらさんも俺の存在に気付いたようだが……逃げ出すそぶりがない。

 それどころか、今にも襲いかかろうかという雰囲気を発している。


「……おやおや、君は逃げないみたいだね? 実に感心だよ」

「オオオォォ!」


 スケルトンらしいといえばらしいのか、不気味な声……のような音を発しながら向かってくる。

 正直なところ、一発殴っただけで倒せるだろうとは思うのだが、ここには剣の腕を磨きに来たのだ。

 そのため、今回はミキオ君に魔力を通さず普通の木刀としての使用に限定して戦ってみようと思う。

 とはいうものの、トレントの木刀をナメてもらっては困るよ? その辺の金属より圧倒的に強いのだからね!

 それに、日頃から俺の魔力を吸収している影響か、ミキオ君自体もなんとなく成長している気がするし。


「もしくは様々な戦闘を経て、レベルアップしていた……なんてね!」

「オォォ……」


 まぁ、この程度のスケルトンなら一撃でバラバラのオサラバさ!

 そして魔石を残し、そのまま黒い霧となって消えていくスケルトン。

 たぶん強さ的に、もとは普通の一般市民だったんだろうなって感じ。

 しかしながら、こいつらにも生前の記憶があるのかと思うと、なんだかなって感じもしないわけではない。

 ただ、そうでありながら、スケルトン側もヤル気マンマンで向かってきてくれるおかげで、思ったより躊躇なくいけるので助かる。

 そんな俺たちの戦闘音を聞きつけたのか、新たなスケルトンがやってきた。

 今度はトンカチ片手に……日曜大工のお父さんかな?

 まぁ、この世界的にいえば、無の日大工のお父さんと呼べばいいのか……「無」ってところがなんかダメそうな気がしてくるな。


「台無しって感じでね! セイヤッ!!」

「オォ……」


 そんなお父さんがトンカチを豪快に振りかぶったところを、袈裟懸けにミキオ君を一閃、それでジ・エンドさ。

 う~ん……ノーマルスケルトンだと、あんまり修行にならないかもしれないな、少し残念だ。


「……やはり最低でもナイト、そういうことなのだろうな」


 なんてブツブツ独り言をしゃべりながら、ナイトのいそうな城の方角を目指して街中を歩いていると、いくつか石が飛んできた。

 飛んできた方向に目を向けてみると、少し離れたところに投石態勢に入っている数体のスケルトンがいた。

 ……なんというか、めっちゃウゼェ。

 まぁね、俺は魔纏があるからノーダメージで済んでるけど、そうじゃなければ、普通に向かってこられるより面倒だろうね。

 しかもダンジョン全体が廃墟だらけなせいか、あっちこっちに瓦礫が散乱しており、スケルトンどもが投げる物に困ることもなさそうだし。

 とか思いながら周りを見渡してみると、俺が相手をしているのとは別グループのスケルトンと、今まさに投石への対処に苦労しながら戦っている冒険者たちがいた。

 やっぱりね……ま、他人のことはいったん横に置いておくとして、まずはこいつらを片付けますか。

 というわけで、魔纏で石を弾きながら風歩で一気に距離を詰め、次々と投石スケルトンどもの頭蓋骨を粉砕してやった。

 そのとき、飛んでくる石を物ともせず突っ込んでくる俺に、投石スケルトンどもが慌てた雰囲気を出していたのが、ちょっと爽快だった。

 まぁ、それはそれとしてあっちの冒険者たちのほうは……盾を持った奴が前に出て懸命に飛んでくる石を防御しつつ、パーティみんなで一丸となってジリジリと投石スケルトンどもとの距離を詰めていっている。

 大丈夫そうだから手は出さないでおくか……獲物の横取りと思われるのも避けたいところだし。

 それに、本当に困っているのなら、向こうも俺の存在に気付いているみたいだから、救援要請をしてくるはずだ。

 そう思いつつ、魔石を回収していたら、投石スケルトンがドロップアイテムとして……石をドロップした。

 これって……魔石でも宝石でもない、マジでなんの変哲もないただの石だよな……ナメてんのかな?

 そうしてただの石を眺めていたら、ふいにケタケタと笑う投石スケルトンのイメージが頭に思い浮かんだ。

 ……なんというか、めっちゃウゼェ。

 まぁ、一応回収しておいて、今度投石スケルトンを見つけたら、これをぶつけてやろう……覚えてろよ!

 とか思っているうちに、あっちの戦闘も終了したようだ。

 やっぱり、余計な手出しは必要なかったみたいだね、よかったよかった。

 さて、それじゃあまた、ナイトを求めて城の方角に進みますかね。

 その後少しして、今度はバターナイフを握りしめて突っ込んでくるスケルトンが現れた。

 見た感じ小柄だし……もしかして子供かな?

 そんな子供に対してミキオ君でガツンといくのは、さすがに忍びない……よし、光属性の魔力で天に送ってやろうじゃないか。

 そうして、バターナイフスケルトンを光属性の魔力で優しく包み込んであげると……激しくもがき苦しみ始めた。


「えぇ……なんでぇ……?」


 などと呆気に取られているうちに、彼は黒い霧となって消えてしまった……魔石とバターナイフを残して。


「……ドロップアイテムの基準がわかんねぇ」

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