第178話 記憶
とりあえず、あのスケルトンたちが光となって消えた理由としては、俺の光属性の魔纏が強過ぎたからだと推測した。
というのも、これは俺の魔纏の収束力の未熟さを意味しているかもしれないが、おそらく魔纏から密度の濃い光属性の魔力がほとばしっていたのだろう。
そしてその光属性の魔力が、特に接触をしたわけではなくても、さほど距離の離れていなかった彼らのスケルトンボディを維持できない程度には影響を与えていたんじゃないかと思う。
また、もしかしたら彼らはそれを求めていたのかもしれない……現世に未練がなかったからなのか……それとも……
いや、今となってはもう、彼らの本当の気持ちを理解することなど、できようはずもない……
そして、街中で俺を見た瞬間に逃げ出したスケルトンたち……彼らはまだスケルトンとして生きたい奴らなのだろう。
だからこそ、聖者(仮)状態の俺に無理やり昇天させられることを恐れて、慌てて逃げていったのではないかと思う。
……あれ? そういえばスケルトンって生きているのか?
え~と、確か……学園の生徒たちの話しぶりでは、スケルトンという種族として扱っていたっけ。
ということは、生きているのか……な?
まぁ、どっちでもいいか……よくわからんし。
……ああ、そうそう、あの生徒たちの話では、スケルトンは「いにしえの兵士や騎士たちの記憶や経験がもととなっている」ともいっていたよな……まぁ、兵士や騎士に限った話じゃないんだろうけどさ。
そして、さっきの光となったスケルトンたちにも生前の記憶があった可能性もあるわけか……
う~ん、ダンジョンってもっとデジタルなデータっぽい感じじゃなかったっけ?
なんか、妙に生々しいぞ……このダンジョンが特別なだけか?
まぁでも、スケルトンはそういう記憶を持った存在で、それは野生だろうがダンジョン産だろうが関係ない、そういう生態なんだといわれたらそれまでか……
そして、このダンジョン……そういう設定なだけかと思ってわりと軽く考えていたが……もしかしたら、本当にどっかにあった街なのかもしれない。
土地の記憶をコピーしてダンジョンにした、といったところか……
ああ、それで「古代国家の失われた記憶が眠っている」という話になるわけだな。
正直なところ、ロマンだなんだと比較的のんきに受け止めていたが、思ったよりガチめに研究する価値がある場所なのかもしれんね。
まぁ、その辺の詳しいところに関しては、俺よりもっと賢い学者の先生たちにお任せしたほうがよさそうだ。
俺は気ままに見て回ればいいかな……というか、そもそも俺はここに古流剣術を学びに来たんだし。
そしてその古流剣術も、わりと中二的ノリ優先で深く考えていなかったが……本当にそういう由緒ある剣術なのかもしれない。
……確か、ナイトクラスからって話だったか、本格的に剣術を使ってくるのは。
うぅむ、改めて期待できそうな気がしてきたぞ!
そして、ナイトクラス以上とガンガン戦闘を重ねて古流剣術、しっかり学んだろうじゃんか!!
それから、このまま魔纏を光属性で展開していると、剣術を学ぶのに支障をきたしそうだし、いつもどおりの無属性に戻したほうがよさそうだね。
まぁ、マジでヤバそうな奴が出てきたときだけ光属性に切り替えるとしよう。
そんなことを考えながら、少し気になったのでしばらく廃教会の中で待機してみたのだが、一向に魔石が出現する気配がない。
まぁ、黒い霧になって消えたわけじゃないからね、ダンジョンさんサイドとしては討伐と認めていないのかもしれない。
じゃあ、この首飾りはドロップアイテムじゃないってことか?
……ま、あのスケルトンが個人的にプレゼントしてくれたってことでファイナルアンサーすればいいか、よくわからんし。
とはいえこの首飾り、光属性が強めだからダンジョンで装備をするのは控えておくか。
スケルトンどころか、スケルトンナイトにまで逃げられたら困るからさ。
「さて、そろそろ行くとしますかね……君たちがここに再出現しないで済むことを祈っておくよ」
そう一声かけて、廃教会をあとにした。
なんというか、ああいう別れ方をしたせいか、もう一度廃教会の扉を開けたときまた彼らがいたら、俺はどんな顔をすればいいのかわからなくなってしまいそうだからね。
というか、メンタルにいくらかのダメージを受けるかもしれん。
ま、まぁ、違う個体の可能性だってあるわけだし? そこまで神経質になることもないよね!
……でもまぁ、しばらくは廃教会に近づかないでおくかな。
それから、思いのほかのんびりしていたようで、気付けば結構な時間が経過していた。
……まぁいいか、今日一日で古流剣術を極められるわけもないだろうし、学園都市からここまでフウジュ君ならひとっ飛びだから、気長に通うのも悪くないだろう。
ま、とりあえず、まだ帰るには時間もあるし、もう少し探索をしてから帰るとしよう。
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