第176話 失われた記憶を求めて

 妙に強いスケルトンナイトに対する期待感を膨らませながら屋台通りを抜け、ギルドの出張所受付へ。


「こんにちは、ダンジョン入場の手続をお願いします」

「ふむ……オメー、ここのダンジョンは初めてだな? ちょっくら説明してやっから聞いてけ」

「はい、よろしくお願いします」


 見た目的に元冒険者って感じで、男勝りなしゃべり方のお姉さんだった。

 こういうタイプのお姉さんに引っ張って行ってもらうのもアリだよなぁとか内心思いつつ、話を聞くことに。

 ……まぁ、原作ゲーム知識である程度は知っているんだけどね、それはそれさ。

 ちなみに、このお姉さんは学園都市のギルドで見た記憶がない。

 おそらく、ここのダンジョンは学園都市から少し離れているため、学園都市在住の人ではないのだろうと思う。

 そんなことを頭の片隅で思いつつ、お姉さんの話に耳を傾ける。


「ここは通称『スケルトンダンジョン』といわれているだけあって、出てくるモンスターはスケルトン系だけだ。そして、ボスは基本的にスケルトンジェネラルが多いが……たまにシケてるときがあって、スケルトンナイトやスケルトンマジシャンが数体だけってぇときがあったりする。そして逆に……これをどう思うかは冒険者どもの実力によるんだろーが、ごくまれにスケルトンキングが出てくることもある……まぁ、アタシとしちゃぁキングを喜べるぐれぇでねぇとな! っていいてぇところだけどな」

「おっしゃるとおりですね、私もキングに会いたいです」

「おぉ! やっぱオメー、イケるクチだな! ははっ、やっぱアタシの眼に狂いはなかったな!!」

「恐縮です」

「そんでな、キングを倒すとボスドロップのほかに奥の宝物庫が開くんだよ……まぁ、宝箱1個だけしかねぇけどな! でもな、これが結構オイシイアイテムだったりするからな、期待したくなるってなもんよ!」

「なるほど、それは凄い」

「それから、ダンジョンに入りゃあわかることだが、ここはちょっと変わっててな、よくあるような階層型じゃなくて、ダンジョンが一つの街になってるんだ」

「ほほう」


 まぁ、知ってるんだけどね。

 滅びた街を舞台にしたフィールド型ダンジョンって感じといえばいいだろうか。

 それはそれとして、初めて聞きましたってリアクションをしておくけどね。


「そんなわけで、何階も階層が重なってないだけに実力のあるヤツが最短距離を目指せば、1日で攻略することもできちまうな。まぁ、物好きなヤツだと、街中や城内を丁寧に調べ上げて研究なんかもしてたりするけどな……そんでそいつら、『このダンジョンには古代国家の失われた記憶が眠っている!』とか鼻息荒くいってたぜ?」

「古代国家の失われた記憶ですか……少なからずロマンを感じてしまいますね」

「まぁなぁ、結局冒険者なんかやってるヤツは多かれ少なかれそういうところはあるだろーな……そうじゃなきゃ続かねぇだろうし」


 ……というか俺はまさしく、古流剣術という古代国家の失われた記憶を求めてこのダンジョンに来たわけだからな。


「ま、どんなスタンスでもいいけどよ、とにかく悔いの残んねぇ冒険者活動をしろよな!」

「はい、頑張ります!」

「おう! ああ、それとな……オメーも既にその辺で聞いてるかも知んねぇけどよ、最近やたらとつえースケルトンナイトが出てくるみてぇだから気を付けろよ? ただまぁ、そいつはボス部屋には出ねぇみてぇだから、ヤベェと思ったらすぐ逃げるこったな」

「そういえば先ほど、そんなうわさを耳にしましたが、そんなに強いのですか?」

「ああ、まだ誰も討伐を果たしてねぇみてぇだからな、そんだけである程度は想像がつくだろ? あーあ、アタシもなぁ、もう少し若けりゃ、挑戦すんだけどよぉ」

「まだ誰も……そうですか……」


 原作ゲームにやたらと強いスケルトンナイトなんて出てこなかったからね、実際どの程度かわからん部分もあるが、とりあえず普通のスケルトンナイトではないということだけは理解した。

 ……もしかすると、そのスケルトンナイト……ヒーローなのかな?

 でもなぁ、ゴブリンヒーローと闘ったときの印象からして、ヒーローって装備その他もろもろ煌めいているから、一目でわかりそうなもんだしなぁ。

 てことは、やっぱ違うのかなぁ。

 そして、このお姉さん……見た目的には30前後ぐらいかなって感じだけど……物言い的に結構年齢を重ねていらっしゃるようだが果たして……

 まぁなぁ、男はまあまあイケオジなオッサンもいて、ある程度想像もつくんだけど……女性の場合はみんな、カワイイ系だったり美人系だったりで容姿に優れている人ばっかりだからなぁ、正直わかんないんだよなぁ。

 正直、このお姉さんも俺の前世的美的感覚ではめっちゃ美人やん! って感じだし。

 そしていつもなら「まだまだ、全然イケますよ!」みたいなことをいっちゃうんだけど、さすがに命に関わることだからなぁ、軽はずみにはいえないよね。


「おっと、わりぃな、つい長くしゃべり過ぎちまった。お詫びも兼ねてこのダンジョンの地図をやるよ」

「いいんですか!? ありがとうございます!!」

「ま、ムチャだけはすんなよ? まだ行けると思ったところで引き返す勇気のあるヤツこそが長く冒険者でいられるんだからな」

「はいっ! 肝に銘じておきます!!」

「いい返事だ、そんじゃあ、行ってこい!」

「はいっ! 行ってきます!!」


 まだ行けると思ったところで引き返す勇気か……前世の俺にいってあげたい台詞だね。

 そして、その気質は今も残ってるだろうから、気を付けなきゃってところでもあるな……

 そんなことを思いつつ、ダンジョン入口へ。

 さぁ、スケルトンダンジョン……失われた記憶というロマンを求めて、いざ!!

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