第175話 そんな夢追い人の一人ってわけだ

 学園の食堂でスケルトンダンジョンの話を聞いてからというもの……俺の心は既にスケルトンダンジョンに向かっていた。

 なんて、ちょっと気取ったことを思いながら自室に戻ってきた俺は、冒険者仕様の装備に身を包み、いざ出発!


「それじゃあ、キズナ君! これからスケルトンダンジョンで男を磨いてくるよ!!」


 キズナ君にそう一言かけて、自室を出た。

 それにしても古流剣術……どうにもカッコいい響きだ。

 とはいえ、一撃先生の教えを忘れたわけではない。

 やはり俺の基本は一撃であることには変わりないだろう。

 それに、そもそもとして大雑把な俺は技とかを覚えるのも苦手だからね。

 ただ、さっきの武術オタク予備軍みたいな坊主も言っていたが、相手の技術を実戦から盗むというのはなかなかに面白い考え方だとも思う。

 まぁ、最近はロイターたちとも模擬戦を重ねることで、なんとなくではあるが、ちょっとした身のこなしみたいなものは感覚的に学んではいると思うけどさ。

 それを同じようにスケルトンとも実戦を重ねることで実行し、古流剣術的身のこなしなんかを学ばせてもらえないかなって思ったんだ。

 そしてその古流剣術を体得した俺をどっかの武術オタクが目にしたとき……「まさか……あれは!」みたいな感じになるのを少しばかり期待してもいる。

 ……そういえば、クラー拳(剣)って廃れちゃったのかな? 最近あんまり言われない気がするし。

 いや、もしかすると筋トレとかの効果が徐々に出てきて体幹なんかもしっかりしてきたから、今の俺は客観的に見てそこまでクネクネした動きじゃなくなってきているってことも考えられるね。

 フフッ、それならいい感じだ。

 まぁね、ロイターたちと一緒に大浴場でひとっ風呂浴びたときも、体型的に恥ずかしい思いなんかもしなかったからね!

 でもまぁ、鍛錬を重ねた年月が違うからだろうけど、さすがにあの2人のほうが引き締まってイケてるボディだったことは否定のしようもないけどさ。

 ……くぅ~っ! 俺ももっと頑張って、ナイス細マッチョになってやるんだいっ!!

 とかなんとか思っているうちに、スケルトンダンジョン前の屋台通りに到着。

 ここでも屋台通りができているようだ。

 やっぱ、ダンジョンで活動する冒険者相手の商売は儲かるってことなのかな。

 そりゃまぁ、冒険者たちもダンジョンから帰ってきたときは気持ちも大きくなって、財布のひもも緩みっぱなしだろうしなぁ。

 それに、わりとダンジョンは稼げるみたいだし、特にマジックバッグを持っていない冒険者にとってはね。

 というのも、ダンジョンに挑戦した当初は、モンスターの死体が残んないのって素材が手に入んないから損じゃね? なんて思ったものだけど、解体作業を必要とせず、死体の持ち帰りも考えなくていいというのは、むしろ効率がいいみたいなんだ。

 それにどうやら、ダンジョン産のモンスターが残す魔石は品質が安定しているみたいだし、ドロップアイテムもときどき思わぬレア物が当たったりするらしいからさ。

 そんなわけで、ダンジョンには夢が詰まっているってことなんだろうね。

 そして俺も、そんな夢追い人の一人ってわけだ、ロマンあふれるねぇ。

 ……レア物でふと思い出したけど、前世のガチャの引きが驚異的な佐藤君なら、ドロップアイテムでどんなレア物を引き当てるんだろうってちょっと気になった。

 たぶん、すんげぇのを当てるハズ!

 ま、俺だって昨日のゴブリンダンジョンでは、ボスモンスターガチャでイレギュラーなゴブリンエンペラーを引き当てたからね! 負けてないさ!!

 そんなことを思いつつ、今日も串焼きを買うことにした。

 だってね……腹内アレス君が食べたいって言うんだもの。


「……串焼きを10本頼む」

「まいど~……あれ? お兄さん、ここのダンジョンはもしかして初めて?」

「ああ、そうだが……」


 なんというかこの世界では、ダンジョン前の屋台の店主は冒険者の顔をよく覚えているものらしい。


「そっかぁ、もしかしたら余計なお世話かもしれないけど、ここのダンジョンはスケルトンダンジョンだからさ……魔法が得意なら光属性の魔法一択だし、魔法が得意じゃないなら光属性の付与された武器や防具を装備するのがオススメだよ」

「なるほど、それなら俺は魔法が使えるので、光属性の魔法に重点をおくとしようかな。アドバイスをありがとう」

「いやいや~ああ、そうそう……冒険者たちのうわさでは、最近妙に強いスケルトンナイトが出るらしいからさ、気を付けたほうがいいよ」

「ほう、妙に強いスケルトンナイトか……興味深いな」

「ダンジョンに行ってないボクには、どれぐらい強いのかはよくわからないんだけどね……おお、ちょうど焼けたところだ、はい、串焼き10本おまち。それじゃあ、頑張ってね」

「ありがとう」


 妙に強いスケルトン……やべぇ、これはワクワクしてきちゃうよ!

 もしかすると、それがここのダンジョンのモンスターガチャの当たりかもしれないね。

 いやぁ~当たるかなぁ、どうだろうなぁ。

 あぁ、楽しみだなぁ。

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