第173話 なかなか気取るじゃないか
模擬戦を終えて、今は反省会という名のおやつパーティーが開催されている。
そして思ったとおり、ファティマとパルフェナは夜にお菓子を食べることに躊躇がなかった。
さらに、俺たちメンズ3人衆もいっぱい食べる系男子だからね、ダンジョン前の屋台通りで買った食べ物を全放出したった!
このワイワイした感じ、実に楽しいものだね。
正直、この世界に来てアレス君ボディに転生したと気付いたときは、こんな学園生活を送ることは想像してなかった……
まぁ、そのぶん、俺のクールで孤高なイメージが崩れかけているのは否めないけどね。
そんなことをちらと思いながら、今回の模擬戦の反省だ。
ちなみに、模擬戦の勝率順としては、魔法なしでサンズ、ロイター、パルフェナ、ファティマ、俺となっていて、魔法ありだと俺、ロイター、サンズ、ファティマ、パルフェナという順番になった。
まぁ、ある程度予想どおりといえるような気がするね。
とはいえ、ファティマとパルフェナはメンズと比べて戦闘能力の養成に割く時間が相対的に少なかっただろうからな、そういった観点からすると、模擬戦を重ねていくうちにもっともっと強くなるかもしれん。
それから……結果だけ見ると、魔法なし最弱の俺だが、ゴブリンエンペラー仕込みの闘魂は確かに俺に根付いており、今までより粘れた、ハズ!
それはみんなからの評価にも表れている。
「アレス君、前に魔法なしで模擬戦をしたときより、強くなってるよね! 凄いよ!!」
「そうね、まだまだだけれど……よくはなっていると思うわ」
「ああ、特に今日はいい感じだったと思うぞ?」
「はい、今日は気迫が違いましたからね」
やべぇ、顔がニヤけてしまいそう……クールだ!
それに、褒められはしても、最弱なことには変わりないからな!
……でも、顔が緩みそうになるのを堪えるのは、なかなかに苦労がいるな。
「……まぁ、魔法なしの物理戦闘力の低さが俺の課題だからな、日々精進せねばならん」
「その気持ちもわからんではないが、お前が魔力切れを起こすような場面は想像しづらいものがあるな」
「確かにですね」
「うんうん!」
「そのときは……ドラゴン並の上位モンスターが相手かもしれないわね」
ドラゴンか……現時点だと、おそらく物分かりのいい奴に実力を試されて、「人間族にしてはよくやる」と認めてもらうのがせいぜいだろうな。
それも、こっちは全力で必死になってやっとって感じだ。
「ドラゴン……国単位で戦わねば無理な相手だな……」
「はい、個人で挑むのは自殺行為に等しいですね」
「ファティマちゃん……もう少し現実的な話をね、しようよ」
「あら、私は現実的な話をしたつもりよ? まぁ、今挑んでもどうにもならないでしょうけれど、でもいつかは……ね?」
ドラゴンとの戦闘も視野に入っているファティマさんの物言いに、みんな言葉を失っている。
やっぱファティマさんはスケールがデケェな……体はちっこいのに……
「……アレス、言いたいことがあるのなら、聞くわよ?」
「いえ、なんでもないです!」
……おまけにファティマさん、人の心が読めるお方でいらっしゃるからなぁ、まったく、すげぇもんだぜ!
こんな感じの模擬戦後の反省会だった。
そして解散時のこと。
「ねぇ、ファティマちゃん! 今日はいっぱい汗かいちゃったし、このあと大浴場に寄ってかない?」
「さっき、浄化の魔法をかけたでしょうに……仕方ないわね」
「やった!」
「それじゃあ、私たちはこれで」
「みんな! 明日も模擬戦、頑張ろうね!!」
そういって2人は去っていった。
「……大浴場なんてあったか?」
「おいおい、あっただろ……知らなかったのか?」
「ああ、知らなかった」
「大浴場を知らなかったとは……焔好みのアレスさんにしては、珍しいですね」
まぁ、自室にも風呂はあったし、それにこの学園内の男子は潜在的な敵ばかりだと思ってたからな……
そういった面から、おそらく無意識のうちにスルーしてたのだろう、そんな気がする。
「なんだったら、私たちもこれから行ってみるか?」
「そうですねぇ、大きなお風呂でゆったりくつろぐのもいいですね」
「ふむ、それじゃあ……いっちょ行ってみっか!」
俺たち美少年のお風呂シーン……きっと、視聴者の皆様にも大喜びいただけることだろう。
なんてことも頭の片隅で思いつつ、大浴場に向かう。
ちなみに、お風呂セットはマジックバックを常に携帯しているから、その中に入っているし、それらは大浴場にも用意されているらしいのでなんら問題はない。
そうして大浴場に着いたのだが……なんというか、前世日本のホテルや旅館の大浴場そのまんまだ。
この既視感あふれる感じ、嬉しいことは嬉しいが、やはりここは日本人の考えたゲームの世界なんだなって思ってしまうね。
「どうだ、見事に焔風だろう?」
「ああ、まさしくな」
「焔好みのアレスさんなら、気に入ったんじゃないですか?」
「そうだな……懐かしい感じがするよ」
「おいおい、焔の国に行ったことなどないだろうに、なかなか気取るじゃないか」
「ははっ……まったくだな」
……焔の国に行ったことはないが、ネタ元であろう日本から来たからね。
「さて、それじゃあ、入るか」
「ええ」
「よっしゃ」
……やはり大浴場はいいものだ。
もちろん、前世の懐かしさもあるが、この広々とした空間は開放的な気分が味わえて、実に爽快だ。
たぶん、模擬戦の反省会が終わったら大浴場へっていうのが、これからの流れになりそう……というか俺はもう、そのつもりだ。
そんなことを思いながら大浴場を堪能し、風呂上がりにはやっぱコレ! ポーション!!
「……アレス、お前……それってポーション、だよな?」
「ん? ああ、そうだが……お前らは飲まんのか? 持ってないならやるぞ?」
「いや……私たちは普通のお茶を飲むから大丈夫だ」
「そうか? トレルルスのポーションは一味違うんだがな」
「はは……なんというか、さすがはアレスさんって感じですね」
う~ん? 確か前、ポーションダイエットをしていた女子もいたような気がするんだがな。
それに、ロイターやサンズなら金銭的にポーションをドリンク感覚で飲めないってわけでもないだろうし。
まぁ、確かに普通の飲み物と比べたら、多少クセはあるかもしれんが、それも慣れたら味になるんだがなぁ。
とはいえ、この味を語るには、ロイターやサンズはまだ若いってことかもしれんな!
こうして風呂上がりのワンドリンクも終え、今日のところは解散した。
あとは、夜錬をして寝るだけだな。
今日も充実したいい一日だった。
そして明日も休みではあるが、有意義に過ごしたいものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます