第172話 実に恐ろしい
学園の男子寮、その自室に帰ってきた。
まぁ、学園都市最寄りのダンジョンなだけあって、徒歩圏内なんだけどね。
それはともかくとして、ダンジョンでたくさん汗もかいたし、シャワーでサッパリしようじゃないか!
といいつつ、ゴブリンの腰布に浄化の魔法をかけるついでに、自分にも浄化の魔法をかけていたから、そこまで汚れてはいないと思うけどさ!
そんな感じで、頭に思い浮かぶまま適当に思考を遊ばせ、シャワーを浴び終える。
「そしてシャワーのあとにはやっぱコレ! ポーションだ! さぁ、ゴクッといくぜ!!」
そうだ、今回は万全を期して手持ちのポーションのほとんどを持ってダンジョン探索に行ったけど結構余ったし、部屋に備え付けの保存庫に全等級をひととおりそろえておくかな。
なんとなく、そっちのほうが安心できるし。
などと思いながら、ポーションを保存庫にストックしておいた。
「これでよし、それじゃあ、夕食をいただきに食堂へレッツゴー!」
そして食堂には、すでにロイターとサンズがいたため、そこへ向かう。
おっと、今朝ファティマたちを模擬戦に誘ったことをロイターたちにまだ言ってなかったな、ここで教えておくか。
「そういえば、今朝ファティマに会ったとき模擬戦に誘っておいたから、もしかしたら今日から参加するかもしれんな。そしてパルフェナに関しては、ファティマが声をかけておいてくれると言ったので、任せておいた」
「そうか」
「よかったですね、ロイター様?」
サンズめ、またロイターをイジり始めたぞ。
だが、ロイターもこの程度で反応するつもりはないようだな。
もしや! ロイターもクール道の門を叩いたのか!?
ロイターの落ち着き払った顔を見るに、あり得るな!!
「……アレス、顔がうるさいぞ」
「は?」
顔がうるさいってどういうことだよ!?
よりによって、異世界きってのクールガイを目指すアレスさんに対して、なんたる言い草!!
「そうですね、アレスさんは一見無表情に見えるんですけど、どことなく顔がうるさく感じられるんですよねぇ」
こんにゃろ! サンズまで言いよった!!
……ああそうか、なるほどな、サンズのあれは単なるロイターイジりと思わせておいて、実は俺にトラップを仕掛けていたというわけか……これには、してやられたな。
「……サンズよ、お前は実に恐ろしい男だな」
「ほう、サンズの恐ろしさ、ようやくアレスにも理解できたようだな」
「えぇ!? そんな、恐ろしいって……大げさ過ぎませんか!?」
とまぁ、こんな感じで楽しい夕食を過ごしたわけだ。
そしてお腹を少し休めたところで、模擬戦!
今日の俺はゴブリンエンペラーと拳で語り合ってきたからな、ちょっとは物理戦闘力も向上したかもしれんぞ!!
そんなことを思いながら、運動場へ移動した。
また、そこにはすでに、ファティマとパルフェナが来ていた。
早速今日からって可能性もあると思っていたが、やはりだったようだ。
その2人と挨拶を交わし、うちのパーティーメンバーがここに集結した。
それと、今回から2人増えたこともあって、タッグを組んで模擬戦をするなどバリエーションも増やせそうで、そちらにも期待が高まる。
こうして、まずは魔法なしで1対1の模擬戦を総当たりでこなす。
このとき審判を1人付け、残りの2人は見学。
そして今は、俺たちメンズ3人の中で物理最強のサンズとファティマが模擬戦を行い、ロイターが審判、俺とパルフェナは見学している。
そんな中で、パルフェナが話しかけてきた。
「アレス君、模擬戦に誘ってくれてありがとね!」
「ん? ああ、まぁ……本当はもっと早く誘えたらよかったのかもしれないけどな……」
「ううん、それはいいの……アレス君、女の子と闘うの苦手なんでしょ?」
「……恥ずかしながら」
「大丈夫、私たちと模擬戦を重ねながら慣れていけばいいよ!」
「そうか、ありがとう」
「それでね、今日は朝からファティマちゃん、とっても機嫌がよくってね、うふふ」
「へぇ、俺にはいつもどおりに見えたんだが……」
「まぁ、私とファティマちゃんの付き合いも結構長いからね……それにファティマちゃんったら、いっつもカッコつけてるし」
「ああ、アイツ、そういうところあるよな」
こうして見学中の俺とパルフェナはファティマトークで盛り上がった。
「……パルフェナ、明日の朝はどんな趣向を凝らして起こせばいいかしら?」
「え!?」
模擬戦を終えて、こちらに向かってきたファティマの第一声がそれだった。
どうやら、俺たちの会話は模擬戦中のファティマにも聞こえていたようだな。
そして、その一言を受けて、朝起きられない系女子のパルフェナは絶句している。
なんというか、パルフェナ……強く生きろよ!
「……そしてアレス、次の模擬戦が楽しみね?」
「え!?」
サンズ対ファティマが終わり、次はロイター対パルフェナ、そしてその次が俺対ファティマという順番になっているわけだが……大丈夫かな、俺。
いや、それでも俺には、ゴブリンエンペラー仕込みの闘魂があるから!
俺の心の中のゴブリンエンペラーは強い精神力を持っているから!!
「ふふっ」
……なんだろう、意味深な笑みを浮かべるファティマさんの顔を見ていたら、俺の心の中のゴブリンエンペラーが急に弱気になっていくのがわかった。
……ああ、これはもう、ダメかもわからんね。
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