第151話 気持ちに区切りをつけて来い
目が覚めた。
今日は火の日、野営研修最終日である。
とはいえあとは、撤収作業と狩猟採集活動をちょろっとして集合場所に戻り、解散式をして終わり。
まぁ、昼前ぐらいには全行程が終了するだろうね。
とりあえず、あんまり沈んだ雰囲気を出すのもよくないだろうし、元気を出していこう。
そんなわけで、小屋から外に出た。
「おはよう、よく眠れたかしら?」
「ああ、もちろんだ」
「そう、よかったわ。それじゃあ私は、パルフェナを起こしてくるわね」
「分かった」
うん、いつも通りの朝だ、この調子この調子。
そうして全員が揃ったところで朝食をいただき、撤収作業を進める。
力作だけに多少もったいない気もするが、お堀や城壁、石の小屋なんかも壊して更地にする。
無駄に防御力があるので、変なのが住み着くといけないからさ。
こうして作業を終えた俺たちは、集合場所に向かいながら狩猟採集活動を並行して行う。
その際モンスターも狩るわけだが、微妙にゲンのことが頭にちらついてしまう。
いや別に、不殺系に目覚めたというわけではないんだが……
でも、こいつらと分かり合うチャンスだってあったりするのかな? なんて一瞬考えてしまうこともある。
……割り切らないとだな。
それに、ゲンは特別だったんだと、そう思っておいたほうがいいだろう、とりあえず今は。
……みんなだってそう思いながら戦っているのだろうし。
そんな感じで、時間いっぱいまでいろいろな素材を集めて回り、学園都市の城壁近くの集合場所に到着。
疲れた顔の生徒や、まだまだ元気が有り余ってそうな生徒、いろんな生徒がいて、それぞれのやり方でこの野営研修を過ごしたんだなって感じだ。
「いや~ラクルスの剣捌きは、やっぱ凄いよな!」
「だよね~」
「いやそんな、みんなだっていい感じだっただろ?」
「そう謙遜すんなって!」
「いてっ、叩くなっての」
「ははははは」
おお、あそこにいるのは主人公君だな。
それに、王女殿下やその取り巻きたちもいる。
みんな笑顔に溢れてて、あっちはあっちで充実した野営研修だったんだろうなぁ。
……それにしても、なんとなく俺はゲームのシナリオを意識して、はぐれオーガが出たら助けに行ってやろうみたいな微妙に上から目線で物を考えていたが……
結果は、俺こそがファティマ筆頭にいろんな人にフォローされてしまうっていうね……
そう思うとちょっと恥ずかしくなってくるな。
そんなことを考えているうちに、解散式が始まる。
内容的には出発式とさほど変わらず、学園長の挨拶とか、先生から今後についての確認、まぁ、明日明後日休みだよとかそんな感じの話をされて終わり。
ちなみに、その次の日は闇の日で本来の休日となるため、今週はこれで終わりってことになる。
まぁ、先生たちもさ、学生たちから提出されたマジックバッグの中身を確認して成績を付けなきゃだからね、そのための休みでもあるのだろうと思う。
さて、解散となったことだし、早速ゲンの住んでた山奥にひとっ飛びするかね。
一応、昨日の晩にゲンの残留魔力を辿って場所だけは特定してあるし、距離もそこまでじゃない。
おっと、腹内アレス君が昼ご飯を忘れるなと言っているが、そこは大丈夫。
マジックバッグの中に入ってるパンかなんかを食べながら飛べばいいのさ。
大空の中で、流れる景色を見ながらの食事、実に爽快なことだろう。
それじゃあ、一言みんなに挨拶して行こうか。
「今回は世話になったな、俺はこれからゲンの住んでいた山奥に行ってくるよ」
「え? 今から? 一人で行くの!?」
「……まぁ、な」
ちょっとわがままになってしまうが、なんとなく一対一でゲンと向き合いたかったみたいなところがあってさ……
「……そっかぁ、それじゃあ、気を付けて行ってきてね!」
「アレスさんのことだから心配はないと思いますが、お気を付けて」
「……しっかりと気持ちに区切りをつけて来い」
「しばらく休みの日が続くからといって、あまりフラフラしないことね」
「おう、みんなありがとうな」
そう言いながら、フウジュ君を取り出して乗る。
「おい、また魔力操作狂いが変なことをしようとしているぞ?」
「ん? あれって空を飛ぶ用のボードじゃないか、あいつもボードをやるんだなぁ」
「空を飛ぶ用のボード?」
「ああ、中央だとあんまり馴染みはないだろうが、結構楽しいぞ? ただなぁ、あれって魔力消費量が地味にキツイからあんまり長く飛んでられないんだよなぁ」
「ふぅん?」
あ、武器屋のオッサンもそうだったけど、ウィンドボードのこと、やっぱ知ってる奴は知っているって感じなのね。
そんな会話が聞こえてきたりもしつつ、そろそろ本格的に出発だ。
「それじゃあ、またな!」
その一言を残して俺は、大空に飛び立った。
待ってろよゲン、これからお前の住んでいたところに帰るからな!
そして俺は、学園都市から見て北東の方角に向かって飛んだ。
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