第144話 何と戦うつもりなんだ

「これでよし、オークの拘束が完了したよ!」

「よし、任せてくれ!」

「僕も行きます!」


 パルフェナが地属性の鎖魔法でオークの足下を固め、ロイターとサンズが突っ込む。

 そして身動きの取れなくなった哀れなオークの首が次々と宙を舞っていく。

 あの2人、俺との模擬戦で風歩をパクりやがったんだ。

 まったく、けしからん奴らだよ。

 といいつつ、風歩に有用性を感じてくれたのは地味に嬉しかったりもするんだけどね。

 そんなことをのんきに考えていられるぐらいアッサリとオークの討伐が進んでいく。

 この間、俺とファティマはなにもしていない。

 ただ見てるだけ。

 だって、ほとんど一瞬で終わっちゃうからね、全員で行く必要がないんだ。

 そんなわけで、少人数のローテーションで戦っているのさ。

 とか言っているうちに小さめではあるが、オークの集落を陥落させた。

 ……実際のところね、この回収のほうが手間なぐらいさ。

 というわけで、ここからは5人全員フル稼働となる。

 さぁ、頑張るぞぉ。

 とまぁ、こんな感じで魔力探知に反応のあったオークの集落のうち近場な所からドンドン攻めていく。

 ふふっ、俺たちの通り過ぎた跡にはモンスターや魔力保有量の多い植物は一切残っていないってわけだ、みんなスマンな!

 ああ、そういえば、途中で武術オタクのメガネとすれ違った。

 奴め、のほほんとした顔をしながらハーレムパーティーを形成してやがった。

 まぁ、人気のほどは夜会で見て知っているので、ある程度は予想できていたことではあるがな。

 そうそう、奴が連れていた令嬢たちだが、もれなく武闘派って雰囲気を醸し出していたことだけは忘れずに述べておきたいと思う。

 なんというか、森の極めて浅いところで野営準備を始めた文系令嬢とメガネの連れていた武系令嬢、同じ貴族家の令嬢でもここまで差があるんだなって思わずにはいられなかったね。

 ……まぁ、武系令嬢ならうちのパーティーにも2人ほどいらっしゃるわけですがね!


「なにかしら?」

「どうかしたの、アレス君?」

「……いえ、なんでもないです」


 ほらね、こんな感じですよ。

 このように、ちょっとした思考遊戯を交えながら素材回収をこなしていくってわけだね。

 ちなみに、そんなにガシガシ狩りまくってマジックバッグに入りきるのかって疑問を持った頭がシャープな方もいらっしゃることだろう。

 そこはね、学園にだって意地ってもんがあるわけで、今回の野営研修に指定された区域内の全素材を集められるのなら集めてみろっていう意思を感じるほどに大容量のマジックバッグを各パーティーは持たされているから大丈夫なのさ。

 そんな高価なものを学生にホイホイ使わせていいのかって思うかもしれないが、これもどうせ毎年使うものだろうし、大した問題じゃないんだと思う。

 それに、もしかしたら学園内にすんげぇ魔道具職人がいて、マジックバッグなんかもササッと作れちゃったりするのかもしれないし。

 ま、そんな大容量のマジックバッグであるが、狩れるモンスターがいなくなってきて、それでもスペースが空いてるってなった場合は、その辺に生えている草に魔力を込めて最下級の薬草にしてから大量に収納してやろうと思っている。

 ……それを不正だと言い出すようなアホがいても、俺は一歩も引かない、「文句があるならトレルルスに言え」って言うつもりだし!


「……そろそろ拠点を確保して、野営の準備をしましょうか」

「そうだね、ほかのパーティーも野営場所を探し始めてる頃だろうし」

「おお、もうそんな時間か、夢中になるとどうも時間の進みが早く感じるな」

「それに、あまり遅いと暗くなってきますからね、光属性の魔法でどうとでもなると言えばそれまでですが……」

「ふむ、ここから東の方角に進むと少し開けた場所があるな。だが、そこには既にほかのパーティーがいるな。そこではなく、適当にその辺を切り開いて空間を作ると言うのなら、それでも構わんが……」

「ほかのパーティーか……私たちに喧嘩を売る根性のある奴がいるとも思えんが、余計な問題を起こさないようにするためにも、野営場所が被るのは避けたほうがいいかもしれないな」

「そうですね、善人そうに見えて実は……という者たちに遭遇したこともありましたし……」

「ああ、そんなこともあったな……あの者たちはこちらが子供だと侮っていたのもあるだろうが……」


 ……どうせそれも、ヤベェ師匠によって森に放り込まれたときのエピソードなんだろうなぁ。


「……アレスの第2案で行こうかしら?」

「うん、私もそれでいいと思う!」

「そうか、ならば場所はどの辺にしようか……あえてあまり人が寄ってこなさそうな場所を求めるのなら、北西の方角がお勧めだな、比較的に木が密集している」

「ほう、ならそこでいいんじゃないか?」

「たぶんそんなに労力も変わらないでしょうし、僕も賛成です」

「それで決まりでよさそうね?」

「そうだね!」

「わかった、ではこっちだ」


 こうして俺たちは森を切り開くことにした。

 そこを利用して後年、村ができるのだった……なんてね。

 というわけで、木の密集地をある程度進んだところで……伐採じゃぁ!!

 頼むぞ、地属性魔法!

 というわけで、俺たちが野営できるだけのスペースを確保できるまで、ひたすら木を切り倒し、根を引っこ抜いたった!

 ちなみに、切り倒した木に関しては、建築用資材にちょうどいいサイズにカットしたので無駄にはしていない。

 それから、資材に向きそうもない小枝とかは風属性魔法で乾燥させて薪とした。

 あとは、地面がデコボコになってしまったので、きれいに馴らして平面に。

 よし、これでどこからどう見ても完璧なキャンプ場の出来上がりだ! やったね!!


「じゃあ、ここからは各自テントなどを張って、野営の準備を始めましょう」


 そんなファティマの号令の下、それぞれ思い思いの作業がスタート。

 よっしゃ、まずは石の壁でプレハブのような小屋を作り、その中にテントを張る。

 そしてテーブルや椅子なんかのアイテムを設置していく。

 あ、テントの中にベッドも置かなきゃだね。

 そういえば、道具屋のオッサンが「ベッドがあれば地面の状態に左右されない」って言ってたけど、俺の場合は地属性魔法で床も作っちゃうから、あんま関係なかったかもしれない。

 ま、ベッドのほうが寝心地はよくなるだろうから、別にいっか!

 そんな感じで個人スペースの作業を終えたところで、拠点全体の強化計画を実行に移そう。

 まずは一番外側に深いお堀を掘る!

 もちろんそのお堀は、水属性魔法で生成した水で満たす。

 そしてその内側に石の壁というか、石垣を作る。

 イメージは日本のお城だね。

 といいつつ、前世では城マニアとかではなかったので、かなりアバウト。

 そうして、半ば趣味的というか、遊び感覚で強化を進めていった。


「……おい、お前はいったい、何と戦うつもりなんだ?」

「まるで城壁のようですね……しかもアレスさんらしいと言うべきか、焔風ですね」

「あら、なかなか素敵じゃないの」

「ファティマちゃん……」


 まぁ、みんなに呆れられるのは想定済みだったさ!

 むしろファティマに好評をいただき、プラスだったとさえ言えちゃうね!!

 それから、やっぱこの感じ、焔の国っぽいんだね……

 そうだよなぁ、制作陣が日本人なんだから、そうなっちゃうよねぇ。


「そしてアレス……お前、石の小屋の中にさらにテントを張っているのか?」

「えぇ……」

「さすがにそれはいらないわね」

「ファティマちゃんがこちら側に戻ってきてくれてよかった……」

「……パルフェナ、なにか言ったかしら?」

「ううん! なんにも!!」


 いやね、せっかくテントも買ったんだからさ、使わなきゃもったいないかなって思っちゃったんだよね。

 とまぁ、こんな感じで野営の準備が完了したのだった。

 さて、まだもう少し明るいので、もうひと狩り行っちゃいましょうかね!!

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