第139話 いろいろなパーティー模様

 本日地の日。

 先ほどエリナ先生の素晴らしい授業を終え、今は男子寮の食堂でお昼ご飯をいただいているところ。

 ちなみに、授業内容的にはテントの設営練習とか野営道具の扱い方の確認みたいな感じだった。

 そしてやはりというべきか、今日の朝はギリギリ隊が売店で長蛇の列を作っていた。

 まったく、いつもいつもギリギリになるまで先延ばしにしよってからに!

 もっと早め早めに手をつけたまえよ!!

 俺なんかは一昨日に購入を済ませたぞ?

 お前たちは週末になにをしていたんだと小一時間ほど問い詰めたいぐらいだ。

 などと心の中でマウントを取ってみたが、今回はたまたま先に準備をしていただけで、俺も基本はギリギリボーイだからなぁ……特に前世ではその傾向が強かったね。

 だから本当は、人のことをアレコレ言えるような立場ではないのかもしれない……でも言っちゃう!

 でもまぁ、心の中だけだから許してくれたまえ。

 そして、テント設営の自主練習なんかは昨日の午前中、ファティマさん率いるパーティでのモンスター狩りに行く前にあらかじめやっておいた。

 もともと道具屋のオッサンに扱いが簡単めなやつを紹介してもらっていたので、それほど難しくはなかったのだが、時間に余裕があったので念のためって感じ。

 ……まぁね、エリナ先生に「よく頑張っているわね、アレス君!」って感じでいいとこ見せたかったからね、その辺の準備はしっかりとやっておくに決まっているでしょ?

 ただまぁ、Aクラスの連中はわりと真面目な奴が多かったのか、みんな普通にテキパキこなしていて、できない奴のほうが目立ってしまっていたね。

 これは危なかった、下手したらエリナ先生に幻滅されるところだったぞ。

 昨日練習しておいた俺、ナイス判断だ!

 そんなことを考えながらご飯を美味しく食べていたときのこと。


「やっべぇ! 俺んところのパーティー、登録されてなかった!!」

「はぁ? 登録されてなかったってどういうことだ?」

「君のところのリーダーはなにをしていたの?」

「それがさ、リーダーはサブリーダーが登録したと思い込んでたらしくて……そのサブリーダーもリーダーが登録したと思ってたみたいで……」


 なんだそりゃ?

 アホなパーティーもあったもんだな。


「それでさ、昼食後に学園が決めたパーティーの顔合わせをするから集まれって呼び出されてるんだ……ああ、マジどうしよう……最悪だ」

「……いや、そんな責任感のないリーダーやサブリーダーのパーティーだと、この先やっていけなかっただろうから、むしろよかったんじゃないか?」

「そうだね、意外といい人見つかるかもだし?」

「えぇ……そんな……いい人だなんて………………見つかるかな? カワイイ子だったりするかな? ワンチャン期待してもよかですか!?」

「……変な期待をするのもどうかと思うがな」

「……とりあえず、落ち着いたほうがいいね」


 ふむ、ぼっちガールが残ってたりする可能性はあるか。

 そしてここはゲームを元にしている世界だ、普段は目立たない大人しい子だけど、よく見たら実はめっちゃカワイイ! この展開はあってもおかしくないな。

 ……まぁ、前世感覚のある俺からしたら、この世界の人ってみんな容姿が優れているように見えちゃうんだけどさ。

 たぶん、この世界でブス扱いされている奴がいたとしても俺なら「え? 普通に可愛くね?」とか言っちゃう気がするね。

 そうしてアホなパーティーの話を適当に聞き流していたとき、俺に声をかけてくる学生が現れる。


「やぁ、アレス殿、ご機嫌いかがかな?」

「ん? おお、未来の近衛殿ではないか!」

「いやいや、まだまだ修行中の身に『未来の近衛殿』というのはお恥ずかしい限りでござる、拙者のことは名前のティオグとお呼びくだされ」

「そうか」


 そんな軽い挨拶を交わしつつ、王女殿下の取り巻き君の中で名前が判明したティオグが俺の向かいに着席する。


「今日は王女殿下の周りにいなくていいのか?」

「さすがに大人数でぞろぞろするのもどうかということになりましてな、パーティーごとに日を分けて王女殿下のお近くにいさせてもらうことになったでござる」

「へぇ、パーティーごとにか……それで王女殿下のパーティーはどうなったんだ? 決めるのが大変だったんじゃないか?」

「それがですな、王女殿下のパーティーは比較的すんなり決まったでござる」

「すんなり? かなり揉めそうだと思ったのだが、そうではなかったのか」

「ええ、実は最近、王女殿下に憧れを持つ令嬢も集まって来ましてな、王女殿下はその令嬢たちとパーティーを組まれたのでござる」

「なるほど、それなら男どもで揉めずに済みそうだな」

「ただ、すべての令嬢が王女殿下のパーティーに入れたわけではないので、多少の落胆はあったと思われますがな」

「まぁ、人数が多いと、全員同じパーティーって言うのは難しいだろうしな」

「左様でござる」


 それにしても、王女殿下の取り巻き君だけでなく、取り巻きさんまで登場とはな……

 どこまで膨らんでいくんだろうか。

 そして、ティオグの話を聞いていると、王女殿下への想いの濃淡によってパーティの構成も違うようだ。

 それは例えば、近衛を目指すティオグのようにもともと王女殿下を遠くから見守るつもりだった奴中心のパーティーだったり、マジで王女殿下に惚れているガチ恋勢中心のパーティーだったり。

 そして、見守り系には男女混合のパーティーもあり、なんとその中でカップルもできているようだ。

 ……なんというか、オタ活中にたまたま出会った男女が意気投合してそのまま付き合っちゃったみたいな感じだろうか。

 実際にそういうこともあるんだなぁ……そんなふうに考えると鈴木君、君もオタ活中に彼女を見つけられるかもしれないぞ! ぜひとも頑張ってくれよな!!

 なんてふと前世のことも思い出しつつ、いろいろなパーティー模様を感じるお昼の時間だった。

 さて、今日も昼からファティマさん率いるパーティー活動だ、俺も頑張っていくぞ!!

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