第138話 たくましいものだな
「みんな揃ったわね、それじゃあ行きましょうか」
時間どおりに学園都市の正門前に集まり、さっそくモンスター狩りへ行く。
ちなみに、今日のお昼はオークボーンラーメンをいただいた。
新しい店を開拓するのもアリかなとも思ったのだけど、あとに待ち合わせを控えているときはそれが気になって落ち着かないからね。
そのため、既にある程度食べ慣れている物をチョイスしたってワケ。
そんなことを思いつつ森に向かう。
やはりと言うべきか、学園で見たことがありそうな少年少女の集団があちこちにいる。
やる気のある生徒はみんな、野営研修に向けて自主練習をしているといったところなのだろう。
そこで気になったのが、くたびれた胸当てだけとか兜だけといった中途半端な装備をしている若者が森をウロウロしている。
そして、彼らはなにかしらの装備をしているだけまだマシなほうで、ほとんど装備なしの若者までいるのだ。
そんな彼らに俺が視線を送っているのを気付いたサンズが声をかけてきた。
「彼らは駆け出しの冒険者ですね。野営研修前のこの時期は毎年の恒例らしく、僕らのような学園の生徒が残したモンスターの死体を回収して回っているそうですよ」
「なるほどな……しかし、そんなことをしていたら、傲慢な貴族家の奴に目障りだと因縁をつけられたりするんじゃないのか?」
例えば、原作ゲームのアレス君みたいな奴にね!
……と思ったけど、ゲームにはそんなシーンなかった気がするな。
意外とアレス君は平民には優しかった説もあったりして?
……自分で言っておいてなんだけど、ないかな。
というかたぶん、怠け者のアレス君のことだ、この時期にモンスター狩りなんかやってなかっただけだろう。
「なくはないでしょうね……ただ、おそらく今この場にいるような人の多くは志の高い人でしょうし……そうじゃなかったとしても、余計な揉め事を起こすほうが割に合わないことぐらいは理解しているでしょうから、その心配はあまり必要ないと思いますよ」
「ふむ、そんなものか」
それにしても、モンスターの死体漁りとはな……
正直、大した稼ぎにもならなそうだが、それでもコツコツとやって装備品を整えたりするのかな?
ああでも、それまでろくに戦ったことのない奴なら、モンスターの死体に慣れるっていう意味もあるか。
そう思って、チラリと視線を向けてみると、まだ完全に死んでいなかったと思われるゴブリンに数人がかりでとどめを刺している少年少女たちがいた。
……たくましいものだな、彼らの努力が実ることを祈るばかりだ。
とまぁ、こんな感じで軽いおしゃべりもしているが、魔力探知で周囲を探ることもきちんとしている。
そして当然のことながら、この辺のモンスターで命があるものはわずかしかいない。
まぁ、学園の生徒が通りがかりに、その多くを斬り捨ててしまったのだろう。
ちなみに、パーティーメンバーには、俺が魔力探知を使うとそれに反応してゴブリンが逃げ出すことを既に話してある。
そのリアクションについては「ふぅん」って感じでアッサリだったのがちょっと寂しかったとだけ言っておく。
そんな感じでしばらく歩き、戦闘することなくゴブリンゾーンを抜けた。
オークゾーンの浅いところには、残念ながらオークが残っていない。
だが、俺の魔力探知を甘く見ないでもらいたい。
君たちをオークのいる場所に案内してあげるからね!
「右斜めの方向に進むと、オークが3体いるな」
「そう……数は少ないけれど、ひとまず戦っておきましょうか」
「そうだね、まだ最初だからそれぐらいのほうがいいと思う!」
ファティマの判断にパルフェナが肯定し、俺たち男子チームもそれに合わせることとした。
それから、今回はファティマとパルフェナがメインで戦うことになった。
俺はこっちの世界に来てからモンスターをかなり狩っているいるし、ロイターとサンズもヤベェ師匠のせいでモンスターとの対戦経験が豊富にあるらしいからね。
それに対し、ファティマとパルフェナはどちらかというと、今まで実戦よりも訓練のほうが多かったらしいから譲ってあげたのさ。
というわけで、オーク3体と遭遇。
「……ブ、ブモォ」
「ブ、ブブブ……」
「……」
彼らも身の危険を感じているのだろう、かわいそうなぐらいブルブルと震えている。
前世的イメージではオークと言ったら……みたいなところもあったのにね、そういう元気はなさそうだ。
とか思っているうちに、ファティマさんがウィンドカッターでオーク2体の首を刎ね、パルフェナさんはストーンランスで残りの1体を串刺しにして仕留めた。
……なんの躊躇もなく瞬殺とは、模擬戦をしているので予想をしていなかったわけではないが、それでもやっぱりえげつない。
まぁ、ファティマさんに関しては、もともとそういう雰囲気があったから、わりとそんなもんかなって思える。
だが、パルフェナさんは普段、わりとほわわんとした感じだったからさ……
やっぱ類は友を呼ぶってことなのかなって思っちゃうよね。
こうして俺の魔力探知でオークの居場所を探り、時間いっぱいまで討伐して回った。
ほとんど一撃で終わるのであまり意味もなかったが、一応連携の確認なんかもしておいた。
これが原作のゲームだとまだ序盤ってことを考えたら、このパーティーって明らかに過剰戦力な気がしちゃうよ……
とはいえ、王女殿下の取り巻き君たちも頑張っているみたいだし、こっちだけが異常すぎるってほどではない、と思いたい。
その後、冒険者ギルドにてモンスターの素材を買取してもらったのだが、ロイターたちは冒険者ギルドに加入していなかったので、それも並行しておこなった。
ロイター筆頭に上位貴族としてお金に困っているタイプではなかったからね、金策とか必要なかったのだろう。
それに貴族として生活するぶんには、冒険者のランクなんかもほとんど意味がないだろうし。
というわけで、このパーティーの中では俺が冒険者の先輩になるってわけだ……だからどうしたって感じだね。
そして当たり前のように、みんなEランクからのスタート。
それから、俺もまだEランク。
EランクからDランクに昇格するには、4カ月必要ならしい。
これに関しては、別に急いでいるわけではないので構わない、のんびり行こう。
こうしてモンスター狩りを終え、闇の日が過ぎていったのだった。
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