第137話 ちょっとでも上質な

 朝ご飯を食べるため、男子寮の食堂へやってきた。

 食堂に関しても、いつもより1時間遅いためか、人がちょっとばかり少なめ。

 これはゆったりコースだね。

 どうだい腹内アレス君、こんなにゆとりがあるならむしろ、遅らせてよかったって思うだろう?

 ……ゴメン、腹内アレス君にはスペースとかどうでもよかったね。

 というわけでほとんど探すことなく、空いているテーブルに着席。

 さて、お待たせしました、朝食よ! どんと来い!!

 そうして美味しくご飯を食べているときのこと、周りの席から男子生徒たちの話し声が聞こえる。

 まぁ、人が少ないぶん、よく声が通るって感じかな?


「いやぁ、昨日は大変だった」

「もしかして、パーティー登録?」

「そう、リーダーが決まらなすぎて、一度くじ引きで決めようってなったんだ。でも、くじを引いた後にごねる奴がいて、最終的に殴り合いで勝った奴がリーダーをやることになったわけよ……」

「うわぁ……それでそれで?」

「それでさ、立候補者の3人とも普段からの鍛錬不足がモロに出て、誰一人決定力のないユルユルな殴り合いが始まって……もう見てられないのなんのって……『お前ら、それでよく殴り合いで決めるって言い出したな』って言いたくなるぐらいの惨状」

「えぇ……それはひどい……で、結局決められたの?」

「まぁな、登録の締め切りまであと30分しかないってところで、見兼ねた立候補してなかった奴がささっと3人を殴り倒してリーダーが決定。そしてなぜか、俺がそいつの一存でサブリーダーをやらされることになってさ……どうしてこうなったって感じ」

「そんなに強いんだったら、その人が最初からリーダーをやればよかったのに……」

「いやまぁ、アイツ……令嬢だから」

「ああつまり、最初は男どもにリーダーの座を譲ろうとしてたってわけか……ん? それで君がサブリーダーに推されたということは……おいっ! 結局惚気か!? 僕は君のくだらん惚気話を聞かされた、そういうことなのか!? なにが『どうしてこうなった』だ! 馬鹿馬鹿しいっ!!」

「いや別に、俺らまだ交際とかしているわけじゃないから……」

「かーっ『まだ』って言っちゃってるよ! もう答えが出てるじゃないかっ!!」

「いや、ははは、おかしいなぁ、そういうつもりじゃなかったんだけどなぁ」

「チッ! クソうぜぇ!!」


 確かに、クソうぜぇ遠回しな惚気話だったな……

 わざわざその令嬢のことを「立候補してなかった奴」とか「そいつ」って言ってボカしてたのもイラつくポイントだね。

 しかし、そのパーティーは女子が何人いるのかわからんが、逆ハー系じゃないだろうな。

 もしそうなら、あとあとクソめんどくせぇことになりそうだぞ、その辺大丈夫なのか?

 ……まぁ、よくよく考えたら俺が心配するようなことじゃなかったかもしれん。

 きっと彼らは彼らでキチンとやる……ハズ!!

 そんなわけで、クソつまんねぇ惚気話と朝食を満喫し自室へと戻るのだった。


「さて、昼までまだ時間があるな……どうしようかな?」


 ああそうだ、野営道具一式を今のうちに購入しておこうか。

 魔力の防壁も一応使えるレベルではあると思うが、壁系統の魔道具も一応ひとつぐらい持っておいてもよさそうだし。

 そうと決まればさっそく、街へ出よう!


「それじゃあ行ってくるよ、キズナ君!」


 こうして週末のウィンドウショッピングを楽しむことになったわけだが、テントはどんな感じがいいかな?

 なるべく簡単なやつがいいなぁ。

 そしてあとは寝袋でしょ……それに椅子とテーブルもあったほうがよりキャンプって感じがするよね。

 それから、料理道具や食器類なんかもあったらなにかと便利だよね。

 おお、だんだんワクワク感が増してきたぞ!

 前世ではインドアボーイだった俺だけど、今ではアウトドアボーイに仲間入りさ!!

 というわけで、なんとなく目に留まった冒険者御用達って感じの道具屋に入る。


「おう、いらっしゃい!」


 へぇ、元気のいいオッサンじゃないか。

 見た感じ、元冒険者って雰囲気があるな。

 ふむ、このオッサンなら期待ができそうだ。

 さぁ、いい感じの野営道具一式を売ってくれたまえ!


「まいどありぃ、また来てくれよな!」


 野営道具一式、買っちゃいました!

 これでいつでもキャンプに行ける!!

 キャンプ初心者レベルの俺のイメージでは、寝袋って筒形のやつだけだと思っていたんだけど、着るタイプの寝袋なんかもあるんだね、知らんかったよ。

 そして冬の寒いときは、この着るタイプを着ながらさらに筒形の寝袋に入るなんてやり方もアリらしい。

 まぁ、当然買っちゃうよね。

 やっぱさ、だいぶ暖かくなってきたとはいえ一応まだ春だからさ、朝晩の冷え込みも甘く見ちゃいけないと思うし。

 といいつつ、魔法があれば正直そんなに防寒対策とか気にしなくてもいいような気もしながらだったけどね。

 あとは、もともと予定していなかったというか、あんまり俺の中でキャンプ用のイメージがなかった、折り畳みベッドなんかも買ったった!

 いやね、オッサンが言うんだ「これがあると、地面の状態に左右されないから、快適な寝心地を約束してくれるぜ!」ってね。

 もうそんなふうに言われちゃうとさ、買うしか! って感じだよね。

 それに、見張りなんかもしなきゃで、睡眠時間も少なくなっちゃうだろうからさ、ちょっとでも上質な眠りを追求すべきって思ったんだ。

 ま、そんな感じでオッサンの勧めに従っていろいろ揃えたってワケ。

 ありがとうオッサン、おかげでワンランク上のキャンプを楽しめそうだよ。

 こうしてお買い物を楽しんだところで「そろそろお昼だよ! ご飯食べるよ!!」と腹内アレス君が意思表示をしてきたので、言うとおりにする。

 さ~て、お昼はなにを食べようかな?

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