第133話 なぜわからんのだ

 お昼~お昼だよ~お腹いっぱい食べるよぉ~などと腹内アレス君が申しております、決して俺ではありません。

 ……視聴者の皆様にあんまりアホの子みたいなイメージを持たれるようなことを言うなって腹内アレス君からクレームが来そうだな。

 でもさ、わりともう手遅れな気もするんだよね……ごめんよ!

 とまぁ、そんな適当なノリでアレス脳内会議を開催しつつ、男子寮の食堂でのんびり過ごせそうな席を探し着席。


「今日がパーティー登録最終日だね、そっちのパーティーはもう登録を済ませたかい?」

「それがまだなんだ……ここ数日、ムダにリーダーをやりたがるバカ2人が『俺が一番リーダーに相応しい! ほら俺ってリーダーっぽい顔してるだろ!?』とか『いやいや、そこは俺がなるべきだろ! なんてったって俺はリーダーっぽい服の着こなしができるからな!!』みたいな感じで納得できそうな理由の一切ない、程度の低いアピール合戦をひたすら続けてよ……もううんざりなんだわ。はぁ、パーティー選びを間違ったかな……」

「あらら、それは大変だね。でも、それならいっそのこと登録が間に合わなくなって、学園の先生たちにパーティーを決めてもらったほうがよかったりして、なんてね」

「オイオイ、それは賭けがすぎるってなもんだろ……いや、でも待てよ……考えようによってはアリか? でもなぁ、さらにハズレを引いたら最悪だしなぁ」


 なんというかこの時点で既に、まだリーダーが決まっていないというパーティーが上手くいかない感が凄い。

 しかしながら、この様子だと今日中にパーティー登録をできない奴らが結構いそうだな……

 まったく、エリナ先生に迷惑かけんじゃねぇぞ! このボンクラどもが!!

 それにしても、ほかのパーティーと比べてうちのパーティーのメンズはホント謙虚な奴らが揃ったんだなって思う。

 そしてやっぱさ、譲り合いの精神は大事なんだなってことが、こういうときに改めて実感させられるよね。

 まぁ、俺からするとリーダーなんて面倒以外の何物でもなかったんだけどさ!

 それをファティマさんが察して引き受けてくれたのはホント楽だった、マジ感謝って感じ!!


「やっほ! 君たちもパーティーのことでは苦労してるみたいだね?」

「ああ、まぁな……」


 この辺の席は人が少なくてよさそうって思ったんだけどな……だんだん増えてきてしまった。

 でもま、関係ないか! 俺は俺のペースで食事を楽しむとしよう!!


「そういえば平民クラスの魔族ちゃんの話、もう聞いた?」

「……確か、ズミカって子だったかな?」

「そ、魔族少女のズミカちゃん! カワイイよねぇ」

「ふぅん? あんまり興味なかったからな、わからんわ」

「おい! たまたま聞こえてきたけどお前、相手は魔族だぞ!? それをカワイイだなんて……正気か!?」

「え~いきなりひどくない?」


 さらに1人、やたらと語気の荒い奴が話に加わったな。

 それから、魔族に対する偏見っていうか差別意識っていうの? やっぱりある奴にはあるんだねぇ。

 まぁ、俺もマヌケ族には迷惑をかけられたから、気持ちはわからなくもないけどさ。


「ひどくなどない! 魔族など排除せねばならんのに、なにを考えているんだ!!」

「う~わ、君ってふっるいねぇ! イマドキそういうのは流行んないよ~?」

「危険な存在に対する危機意識に新しいも古いもない! なにかあってからでは遅いのだぞ!?」

「そんな熱くなんないでさ~もっと穏やかに、ね? それにさ、カワイイ子をカワイイって言ってるだけでしょ?」

「それが奴らの手だということがなぜわからんのだ……しかもあの娘、今まで人間族の振りをしておいて急に正体を現わしおって、いったいなにを企んでいるのやら……」


 ああ、確かにそこは疑問に思う部分だろうね。

 人間族に擬態していたぐらいだから、たぶん派閥的には魔王の復活を狙うマヌケ族になるんだろうし。

 ま、考えられるのは本人もカフェで友達にちょっと話してたけど、コモンズ学園長に説得されて人間族との敵対をやめたってところかな?

 でもマヌケ族って自滅魔法を施されてたハズなんだけどな、どうやって突破したんだ?

 あれって主人公君の愛のパワーによる奇跡だかなんだかでどうにかしてたんじゃないの?

 実は対処方法があるのかな、それだと主人公君の立場が……ってなっちゃうけどいいのかな……


「もう、疑り深すぎぃ~ズミカちゃんはさ、今まで自信がなかったんだよ、人間族と本当に融和できるのかってね! それでこの学園で過ごすうちに大丈夫だって思えるようになったんだよ、きっと! だから僕らはさ、そんなズミカちゃんの想いに応えてあげなきゃってことでしょ? 具体的にはパーティーを組むって形でさ! あ~ズミカちゃんとパーティー組みたいなぁ!!」

「……ッ!! これだから人魔融和派はいかんのだ!! 軽い! 軽すぎる!! なにがパーティーを組むだ、冗談も休み休み言え!!」

「……なぁ、魔族がどうとかって話、俺にはあんまり興味がねぇんだ、それ以上続けるならどっか別のところでやってくんねぇか?」

「まぁ君たち、少しばかり議論に熱中しすぎてしまったようだね。ほら、周りを見てごらん?」

「あちゃ~みんなごめんねぇ、うるさくしちゃって」

「ふん! 後悔することになっても知らんからな!!」


 そうして語気の荒い彼が立ち去ったことでこの話は終わりとなったようだ。

 まぁなぁ、ズミカって子自体はたぶん別に大した問題じゃないんだろうけど、実際マヌケ族がちょろちょろしてるのは確かなんだよなぁ。

 そして、この時点だとまだ魔族の暗躍とかは表沙汰にされていないし、人魔融和派とかいう派閥のほうが優勢で、魔族への敵対意識もそれほどではないのかと思っていた。

 しかし、結構ガチめに敵対意識のある奴もいるんだなぁって感じだ。

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