第132話 成分が混ざり合ってる

「学園内のパーティー登録申請だけど、今日がその最終日よ。まだ登録していないパーティーは今日中に忘れずにね。前にも言ったけれど、パーティー登録をしなかった生徒については学園側で強制的に決めることになるからそのつもりで」


 ふぅん、エリナ先生がわざわざ言うってことは、このクラスの生徒の中にもまだ登録を済ませていない奴がいるってことなのかもしれないね。

 ……もしかしたら、パーティーメンバーガチャを引こうとしている奴もいるのかな。

 そういえば、前世の修学旅行で班決めをするとき、面倒見がいい高橋君が担任の先生から頼まれてぼっちを班に引き受けていたな。

 こっちではそういう感じの対応はしないのかな?

 まぁ、下手したら命に関わるパーティーと修学旅行の班ではだいぶ違うか……

 連携とかもあるんだろうし、気心の知れた相手じゃないと不安が残るかもしれないしな。

 ……ん? そう考えると、パーティーメンバーガチャって危なくね?

 ちゃんと形になるのかな?

 いやまぁ、野営研修は再来週なわけだから、一応来週の1週間をかけてどうにかするんだろうけどさ……

 でもわりとタイトなスケジュールになりそうってことは否めないよね。

 とはいえその辺、うちのパーティーも俺という存在がまぁまぁ急造感を与えているけどね。

 ロイターとサンズ、ファティマとパルフェナの2組のコンビは、どちらもわりと長そうだから問題ないだろう。

 そして、ここ数日の訓練の様子から、彼ら4人も雰囲気的にそれぞれお互いを理解してそうって感じもする。

 そこに、周りに気を配るのとかマジ面倒とか思っちゃうおひとり様上等の俺が加わる! どうだこの急造感!!

 ……あれ、結果的にぼっちなアレス君をロイター君たちの班に入れてあげてくれないかな? って感じになっちゃってる!?

 ……マジか……気付きたくなかった。

 で、でもまぁ、俺って余ったわけじゃないからさ、その辺は……ね?

 ちなみにだけど、俺は前世では意外とぼっちではない。

 まぁね「俺は太陽の化身だ!」とか言えちゃうほどの陽キャではなかったけどさ。

 でも、そこそこ友達はいた、おとなしめな感じのメンズたちがね!

 それでこっちの世界に来てからは、アレス君という上位貴族の子息で魔力チートな体に転生したこともあって、わりとイキリ虫キャラで行ってるみたいなところがあることは否定できない。

 そんなわけで、もともとは俺もおとなしメンズだったってわけさ!

 ……といいつつ、この世界の今の俺って、100パーセント前世の俺ってわけではなさそうだけどね。

 たぶん、もともとのアレス君成分と前世の俺成分が混ざり合ってると思われる。

 それで前世の俺成分のほうがちょっと多めに出て、今の俺って感じになってる気がする。

 いやだってさ……前世の俺なら、モンスターの討伐や解体なんか絶対無理だったし……

 それに、回復魔法を覚えたいからって自傷行為なんかも絶対やらなかった! これは断言できる!!

 おそらくだけど、精神的な耐性部分ってアレス君成分が結構影響しているんじゃないかって思う。

 ……フッ、だからといってゴブリンとかのモンスターをグチャグチャにした残虐な部分もアレス君のせいだって言いたいわけじゃないぜ?

 ……言えるのなら言いたいけどね。


「それじゃあ、今日の授業はここまで。明日明後日の休みでパーティーの連携を深めるなり、ゆっくり休むなり、有意義に使ってちょうだい。そして最後にもう一度言うけれど、パーティー登録もしっかりと忘れずにね」


 すげぇ念押し。

 これだけしつこく言うってことは、おそらく毎年「はわわ~パーティーの登録を忘れてましたぁ~うぇ~ん」みたいなことを言うボケナスがいるってことだろうね。

 ……この世界ってもとがゲームだったこともあって、ドジっ子キャラとかがいてもおかしくないしな。

 ……やべぇ……いる、絶対いる、間違いない。

 まったく、エリナ先生に迷惑かけんなよ、クソが!!

 あんまり笑えないドジをかます奴がいたら俺の回復魔法の練習台にすっぞ!?

 なぁに、後遺症なしでしっかり治してやるから、安心して練習台になりたまえ。

 幸いこの世界にはよく効く優秀なポーションもあることだしねぇ、ヒッヒッヒッ。

 ……とまぁ、ここまで言っておいてなんだけど、俺だってしくじることもあるよな。

 他人の失敗にも寛容でいられる、そういう器の大きさも大事だよね。

 だからといって、ドジっ子萌えとかにはならないが……それはそれ。

 そしてなにより、特大のブーメランが俺に戻ってきたらこわいからね……ゲンコツぐらいで勘弁しておいてやるか。

 というかそもそも、教師じゃない俺に怒る権利なんかなかったね……ははっ。

 そんなわけで、本日のエリナ先生の授業という素敵な時間が過ぎていった。

 ……これから休みの2日間、エリナ先生と会うオフィシャルな理由もないし、寂しいねぇ。

 そんなことを思いつつ、昼食をいただきに男子寮の食堂へ移動するのだった。

 さぁってと、今日もいっぱい食べるぞぉ!!

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