第131話 魔法の維持
「おはよう、キズナ君。見えるかい? 今日も世界は光に満ち溢れているよ」
というわけで本日光の日、キズナ君への目覚めの挨拶を済ませたところ。
そして壁系統の魔法の練習を昨日から始めたので、その成果を確認するとしよう。
まずは魔纏……うぅ、正直イケるんじゃないかと思っていたけど、解除されていた……
残念ながら、一晩中維持できていなかったみたい。
俺は今まで、日中の起きているあいだ基本的に魔纏を常時展開していた。
それによって既にほぼ無意識で展開したまんまにしておけるようになっていたので、わりとスンナリ成功するんじゃないかと思っていたのだが……そう甘くはなかったみたい。
それで、部屋の内側を魔力の壁で囲う……雰囲気的には部屋の中にもうひとつ魔力でプレハブを建てるみたいな感じで展開していた防壁魔法だけど、こっちも解除されていた。
……まぁ、魔纏でダメだったんだから、当然といえば当然だね。
そしてこの防壁魔法であるが、防御用の魔法としては魔纏で慣れているし、基本は壁なわけだから、イメージとしてはそこまで難しくないし、方向性としては間違っていないと思う。
あとはこの、寝ているあいだに意識が途切れて魔法への魔力の供給がストップしてしまうという課題をクリアするだけ、それだけのハズ!
……でもまぁ、こうやって考えるとさ、主人公敗北エンドのときのコモンズ学園長ってどんだけヤベェことをしてたのかって思わされちゃうよね。
マヌケ族に誘導されてきたモンスターの大群の攻撃。
加えて、マヌケ族も高威力の魔法をガンガン撃ってきただろう。
それに対し、学園都市全体を覆う防壁魔法を展開し、戦争終結まで維持し続けた。
しかもそれだけじゃなく、マヌケ族へ説得の呼びかけまでしちゃうだなんて……
防壁魔法の練度ヤバすぎだし、まだ始めたばかりとはいえ寝ているあいだの魔法の維持に失敗した俺からすると、あなたいつ寝てたんですか!? っていいたくなる。
いや、学園長レベルになると普通にできちゃうってことなのかもしれないけどさ。
ただ、戦争終結後に亡くなっていることを考えると、命を削ってやり遂げたってことでもあるんだろうなぁ。
そういえば、ソレバ村で戦ったマヌケ野郎も最後に使ったデッカイ溶岩の魔法に生命力をつぎ込んでたっぽいしな……
まぁ、マヌケ野郎のことはともかくとして、長期間魔法を維持し続けた学園長のことはマジリスペクトに値するといえるだろう。
そして「同じ人間にできたことが、自分にできないはずがない」の精神で、寝ているあいだの魔法の維持の練習に取り組んでいこうと思う。
ちなみに、俺は防壁魔法と呼んでいるが、この部屋の規模で一晩だと障壁魔法と判定する魔法士もいるかもしれない。
そこは俺らしく傲慢に「防壁」っていっとく。
まぁ、昨晩のは試験的な防壁魔法だったから魔力もそこまで過剰に込めなかったけど、徐々に慣れてきたらドッカドカに魔力を込めてすんごい強度にしようと思ってるからね。
要するに、強度が防壁並って感じ。
とはいえ、めっちゃカッチカチの魔力の壁を生成して、そのときそこにいた奴に「な、なんてレベルの防壁魔法を展開してやがるんだ……」とかってワナワナさせたあとに「なにやら勘違いをしているようだが、これは障壁魔法だぞ?」ってイキるのもアリかなとも思ったんだけどね。
でもその場合「あ、この人、壁系統の魔法の線引きがストイックめな人なのね」って感じで、思ったより薄い反応で終わりそうな気がしてしまってね……やめたんだ。
なんというか、こっちはドヤ顔する気まんまんだったのに、相手は意外と薄いリアクションってなったら恥ずかしいじゃん? そういうことだよ。
というわけで、こんな感じで壁系統の魔法の練習をスタートされたってワケ。
とりあえず、野営研修の当日までに寝ているあいだも魔法の維持ができるようになるっていうのが当面の目標かな。
それにしても、魔法なしの純粋な戦闘能力の養成と睡眠中の魔法の維持、なかなかにやることがいっぱいだね。
まぁ、魔法のあるなしに関わらず戦闘能力の養成については、こっちの世界に来てからずっとしてきたことだし、これからもずっと継続していくことだと思うから、特別やることが増えたってほどでもないけどね。
それから、睡眠中の魔法の維持についてだけど、これも俺が勝手にハードルを上げてるみたいなところがある。
というのが、授業中にもチラッと出てきたけど、魔道具で対応するのがわりとスタンダードならしいからね。
特に俺らみたいな若い奴は練度が低いからそうならざるをえないって感じかな。
一応俺も、魔道具自体は用意しておくつもりだけど、やっぱり自力で防壁魔法の維持をやり遂げたいっていう気持ちもあるからさ。
それにやっぱ、そのほうがカッコいいじゃん?
それで「いやぁ、俺も魔道具を用意はしてたんだけどさぁ、正直いらんかった」とかってイキりをかましたいし。
とはいえ、うちのパーティーメンバーたちなら意外とできちゃいそうな雰囲気があるからイキれない可能性もあるんだけどね。
……あ、その場合だと、魔法の維持ができて当然ってなるわけか、マズい、頑張んなきゃだ!
こうして、ちょっとしたキャンプ感覚だった野営研修も、俺なりの課題が定まりつつ、今日という日が新たにスタートするのであった。
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