第129話 模擬戦の楽しさを知った
午後の戦闘訓練を終え、ロイターとサンズの2人と夕食をともにしているときのこと。
魔法がなきゃクソザコな俺に稽古をつけてくれと頼んでみた。
ちなみに、女性陣には声をかけていない。
……偏見カッコ悪いって思われちゃうかもしれないけどさ、女子に負けるのは精神的にめっちゃダメージがあるんだ。
それにやっぱさ、相手の方が強かったとしても女の子だと思うとさ、気が引けちゃうんだよね。
まぁ、そんな感じでアレコレと余計な感情に邪魔されないようにするため、メンズに頼んでいるってワケ。
「ふむ、それで私に特訓に付き合えというわけか……」
「ああ、俺の知る(頼みやすい)男の中ではロイター、お前が一番強いからな」
「ふ、ふん、くだらん世辞はよせ」
「ふふっ、頼られてよかったですね、ロイター様。でもそういうことなら、僕も協力しますよ。僕とロイター様とでは、体格や使用武器などいろいろと違いがありますからね、参考になる部分もあると思いますよ」
「おお、さすがはサンズ! 感謝するぞ!!」
正直、サンズに関してはロイターとセットでオッケーしてくれるものだとは思っていたが、本人からそういってくれるのはありがたいものだね。
しかもこのサンズ、ロイターのオマケ扱いみたいなところがあるが、実はかなり強い。
あのデッカイ大剣も普通の剣を使っているみたいにビュンビュン振り回すので、対峙したときの精神的圧迫感なんかはハンパじゃない。
それに加えて、小柄で機動力もあるので、こちらの攻撃はすべてあっさりと避けられたうえでボコボコにされるっていうね……
そんなわけで、サンズ本人は謙遜気味にいっているが、実際のところサンズとの模擬戦は学ぶところだらけって感じなんだ。
それであとは、ロイターの返答待ちだね。
「確かに、魔力切れで窮地に追い込まれた魔法士の話なんかもたまに耳にするからな、お前の危惧も納得できるところだ……とはいえお前が魔力切れになる場面など想像しづらいがな……それはともかくとして、ひとつ条件がある、それでよければ模擬戦を受けてやる」
「ほう、その条件とは?」
「ああ、最後の一戦だけでも構わんが、魔法ありの模擬戦もさせろ」
「なんだそんなことか、いいだろう」
「よし決まりだ!」
ロイターの奴め、なにをいい出すかと思えば魔法ありの模擬戦とはな。
まぁ、奴の目標がそれなのだから当然ではあるか。
とはいえ、魔法ありの模擬戦では簡単に負けてやるわけにはいかないからな、覚悟しておくがいい。
「ロイターよ、魔法なしで俺が勝つのが先か、魔法ありでお前が勝つのが先か、勝負だな」
「望むところだ!」
「お2人とも、僕のことも忘れてもらっては困りますよ?」
「面白い、お前にも先に魔法なしで勝利してやろうじゃないか」
「サンズ、模擬戦のときは普段の関係を無視して全力で来い」
「わかりました、ここからは僕も1人の男として本気でお2人に勝ちに行きます」
こうして気付けば、男同士の熱い展開になっていた。
そして2人のやり取りから、おそらくサンズは今まで多少の遠慮があったのだろうということが察せられた。
……ということはなにか、昨日のあれは全力じゃなかったってことか?
こいつはやべぇ、楽しみがさらに増大してくるじゃないか!!
そんなことを思いながら夕食を終え、運動場へ移動。
今日から夕食後は模擬戦の時間って感じになりそうだね。
というわけで、腹ごなしに基礎の確認をしてから2時間ほどひたすら模擬戦を続けた。
2人が対戦中、1人が見学と休憩あとはなんとなく審判もって感じかな。
そして怪我をした場合はこの休憩中に回復魔法で治しちゃいなさいってことになっている。
……正直なことをいえば、ここで回復魔法の練習もやってしまえるので、これでもう自傷行為をしなくてもいいのかと思うと、少しホッとしている。
よし、これからは自室での夜錬は筋トレと精密魔力操作だけでいいね、やった!!
それで模擬戦の勝敗であるが、残念なことに魔法なしの場合、俺は全敗。
ロイターとサンズは、俺の目には実力的に互角に見えるのだが、なんと7割近い勝率でサンズが勝っているのだ!
どうやら、魔法なしの純粋な戦闘能力ならサンズが俺たちの中で最強のようだ、今のところはね!
だが、これから俺も徐々に実力を伸ばして勝率を上げて見せる、待ってろよ!!
それで最後に魔法ありの模擬戦をした。
ここではキッチリ、2勝。
初日から魔法で負けるわけにはいかないしな、当然だ!
そしてロイターとサンズは、ロイターの勝利でこの日は終わった。
その後、腹内アレス君が腹が減ったと駄々をこねるので、談話室で夜食をいただきながら3人で本日の反省会。
まぁ、比較的俺へのダメ出しが多くなりがちになってしまうが、俺自身まだまだ未熟だということがわかっているので、そこは仕方ないって感じかな。
むしろ、ダメ出しの数だけ強くなれそうって期待があって嬉しくなってくる。
そうして反省会の終わりごろ、魔法ありでは全敗してしまったサンズが「明日は勝ちます!」と闘志を漲らせていた。
だがそれは魔法なしで負け越している俺とロイターも同じこと、お互いに明日へ向けて気合を入れ直して解散となった。
自室に戻ってきて、筋トレ後にシャワーを浴びながら改めて思う。
模擬戦って、楽しい!!
魔法なしでは負けまくりではあったが、それでもすっごく楽しかった。
とはいえ、前世の俺ってそんなに闘争本能強め系男子じゃなかったはずなんだけどなぁ、この辺はアレス君がもともと持ってた部分なのかな?
それとも、俺っていう奴は心の奥底では戦闘を求めていたのだろうか……
ま、その辺のことはよくわからんが、とにかく模擬戦の楽しさを知ったってことだけは確かだ。
これからも楽しませてもらおうと思う。
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