第128話 偏った情報
『足元が隙だらけだよ』
『くっ!』
………………
…………
……
「ㇵッ!? ……夢か」
昨日の戦闘訓練……あれはひどいものだった。
なぜかというと、魔法なしの純粋な戦闘能力のみで模擬戦をおこなったとき、みんなにボロ負けしたからだ。
まぁ、ロイターに対しては、決闘のときも純粋な剣術の技量では負けていたので仕方ないかなって思う。
加えてサンズも、ヤベェ師匠とやらにロイターといっしょに徹底的にしごかれていたみたいだから、ある程度は理解できる。
ただ、ファティマやパルフェナにまで負けたのがね……これが地味にショックだった。
いや別に、彼女たちのことをザコだとは思っていなかったけどさ……
でも、これは偏見かもしれないけど、基本的に貴族の令嬢っていうのは男ほど戦闘能力を磨かず、オシャレとかもっと優雅な感じの活動に力を入れてるイメージがあったからね……正直負けるとは思わなかったんだ。
とはいえ、そもそも論として俺の戦闘スタイルって魔力のごり押しが真骨頂なわけだから、魔法なしだとザコ化するのは当たり前といえば当たり前なんだけどね……
しかも、前世では戦いとは無縁のもやしっ子だったわけだから戦闘技術なんて一切持ってなかったし、こっちに来てからもしばらくはダイエットや体力作りをメインとしていたからね、その辺はわりとしょうがなかったっていいわけも成り立つとは思う。
あ、ちなみにいうと、魔法ありの模擬戦は余裕の全勝だったよ、えっへん!
……魔力チートがなにいってんだって思われそうだが、心のバランス、これ大事。
まぁ、結局のところさ、俺って奴はアレス君がもともと持っていた魔力量頼りの男だったんだってこと、それをわからされてしまったってことだね。
というわけで、今回のことから俺の素の戦闘能力の低さという課題が見つかった。
そのため、魔法の技術を磨くという俺の長所を伸ばす戦略はこのまま継続しつつ、もう少し武術方面の実力養成にも目を向けていくって感じだね。
ま、ちょうどロイター筆頭に、技術水準の高い奴らとパーティーを組んでいるわけだから、彼らからたくさん学ばせてもらうとしよう!
それに、体力面もだいぶいい感じになってきたし、アレス君の基礎スペックならもっと上にいけるはずさ!!
そうした決意も新たに、今日という日が始まる。
先ほどエリナ先生の素敵な授業が終わり、今はお昼を食べるために男子寮の食堂にきている。
「なぁ、お前んとこ、リーダーは決まったか?」
「それがまだなんだよね……なんか約2名が意地になっちゃっててさ……」
「そうかぁ、まぁ、パーティーリーダー経験者とかって、騎士団入団後に意外と影響するっていうしなぁ」
「そうなんだよね、あの2人もそこがやっぱ気になるみたいでさ……あ~あ、僕としては正直どっちでもいいから早く決めて欲しいんだけどなぁ」
「ははっ、出世とかそこそこでいいって思っちゃってる俺らみてぇな奴はそうだよなぁ」
「ね~」
「やぁやぁ、君たち! 昨日のことなんだけどさ、もう聞いたかい?」
「昨日かぁ、なんかあったか?」
「いや~特にこれっていうのはなかった気がするね」
「聞いて驚くといい……あの魔力操作狂いがなんと、パーティーメンバーに模擬戦でボコボコにされてたんだ」
「……そんな馬鹿なことあるわけねぇだろ、もうちっとマシな冗談はなかったのか?」
「そうそう、実際この前の決闘だって、あのロイターを圧倒してたんだからさ」
「いやいや、本当なんだって!」
あとから話に加わった彼、一応ヒソヒソ声で話していたが、聞こえちゃってるんだよね。
いちいち指摘しないけどさ。
それにしても、決闘以来アレス君をビビりまくっていた生徒たちだったが、最近少しずつもとに戻りつつあるね。
アレス君なら悪口をいってもいいってなってるのか、それともチキンレースでもしてるのかな?
誰がアレス君をキレさせるのかってね。
「おいお前! 適当なこというなよ!!」
「は? なにが適当だというんだい?」
お、4人目登場、なんか元気そうな子だね。
「俺も昨日その場面を見ていたが、あれは魔法なしの模擬戦だった! アレスさんは魔法士の極みなんだから、魔法なしだと苦戦するのは仕方ないんだ!!」
「ああ、なるほどね、そういうことか、それなら納得だ」
「だね~僕もときどきあの人を運動場で見たことあったけど、確かに魔法なしならいけそうって思ったこともあったし。でもダメだよ~そういう偏った情報を流そうとするのって、よくないからね?」
「う、うぅ」
……4人目の彼からすると俺は魔法士の極みだったんだ。
なんていうか、そんなふうに思ってくれてありがとう、サインとか書いてあげようか?
しかし、やっぱ俺って魔法なしならクソザコだと思われてたんだな……くっ、切ねぇ。
……もしやファティマの奴、それを俺に気付かせるために敢えて魔法なしの模擬戦とかいい出したのか?
アイツの意図はよくわからんが、事実として俺は魔法なしなら弱いと周りから認識されているってことはわかった。
なるほどね、だから「魔力操作狂い」ってわけか。
あれは俺の魔力に対する畏怖でありつつ「お前なんか魔力がなきゃ大したことねぇんだぞ!」って意味も込められてたんだな。
ふふっ、オッケーだ、朝から既に素の戦闘能力の強化に努めるつもりではあったが、なおさら燃えてきた!
まずは今日の戦闘訓練、しっかり役立たせてもらうぞ!!
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