第125話 ここからだ
「朝も言ったけど、ズミカが学園を休んでたこの1週間、どうしたのかなってずっと心配してたんだからね? 先生に聞いても、事情があって休んでるとしか教えてくれなかったし……」
「うん、ごめんね、心配かけて……」
「でも、もう大丈夫なんだよね?」
「たぶん、大丈夫だと思う」
「よし! それじゃあまたいっしょに食べ歩きに行こう! まだまだ食べてないインセクトもいっぱいあるし!!」
「いっしょに……ありがとう、ノエ」
「もう! 私とズミカの仲なんだから、そういうのはいいってば!」
「うん……うん!」
そうして改めて友情を確かめ合った少女たちはカフェをあとにした。
さっそく虫料理を食べに行くのかな?
なんていうか、たぶん俺だからそう思うんだろうけど、なかなかにパンチの効いた少女たちだったなって思った。
まぁ、前世の日本でも俺が転生するちょっと前ぐらいから昆虫食の話題も出てきてたし、そういうトレンドなのかな。
……そういえば、アイドル好きの鈴木君の家で見たアイドルのバラエティ番組で、罰ゲームとして虫を食べさせられるアイドルとかもいたっけ。
最初はキャーキャー悲鳴をあげたり、下手したら泣き出す子もいたりしてさ……
それで覚悟を決めて食べてみたら……意外とイケる! みたいなノリ、今でもあるのかな?
今の日本がどうなっているのかはわからないが……とりあえず鈴木君、こっちの世界ではアイドル並みに可愛い女の子が罰ゲームでもなんでもなく、普通に虫を食べてるよ!
そんなことを思いつつ、通りかかったカフェの店員を呼び止める。
「すまんが、メロンづくしの贅沢メロンパフェを追加で頼む」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ~」
……美味しかったからさ、仕方ないよね。
こうして焼肉までのあいだ、メロンづくしの時間を過ごしたのだった。
さて、それじゃあそろそろ俺も学園に戻るかな。
「おお、みんな早いな、待たせてしまったか?」
「約束の時間にはまだだから気にする必要はない」
カフェを出て、学園のバーベキュー施設に来てみたら、既にみんな揃っていた。
みんなワクワクを止められなくて、フライングしてしまったって感じかな?
そして現在、女性陣は野菜のカット、男性陣は火起こしをしていたところ。
パルフェナはなんとなく家事とかもできそうな気がしていたので、野菜を切る姿になんとも思わなかったが、ファティマが野菜を切るイメージはなかった。
……いや、俺の手をグサリと行ったときの手際から考えれば、刃物の扱いに慣れててもおかしくないか。
でもなぁ、あれも料理としての切るじゃなくて、戦闘としての斬るって感じなんだよな……
「私も野菜ぐらい切れるわよ?」
俺って顔に出やすいのかな?
クール道を歩む一環としてポーカーフェイスにも力を入れていたつもりなんだが……
それとも、やっぱファティマさんが人の心を読みすぎなのかね?
それはそれとして、俺も作業に加わった。
こうして準備も整い、さっそく焼肉開始となった。
ふふふ、この日のために腹内アレス君厳選のオーク肉を用意したのだ、心して食べるがいい!!
「おお、美味いな!」
「まったくです!」
「うん! とっても美味しい!! ね、ファティマちゃん!」
「そうね」
ふむ、みんな驚きの美味さだったようだな。
ま、腹内アレス君厳選だからな、当然だ。
ファティマの奴も冷静ぶっているが、若干表情が柔らかくなってるのを俺は気付いているからな!
そんな感じでしばし焼肉の美味しさを堪能したところで、そろそろパーティーのリーダーとサブリーダーを決める話し合いを始めるべきだろう。
ここからだ、ここから俺の交渉能力が試されるのだ。
ふぅ、決して一歩も引くことのできないタフな交渉となるだろう、心してかからねばな。
……よっしゃ! 行くぞ!!
「パーティーのリーダーとサブリーダーのことなんだが……」
「ああ、それならリーダーを私、サブリーダーをパルフェナとして既に登録を済ませてあるわ」
「は!?」
「あら、なにか問題でも?」
「え、いや、問題はないけど……なんで?」
「どうせあなたは『向いてないし、やりたくない』と思っているでしょう? そしてロイターは『アレスに勝てなかった俺がリーダーなんて……』と考えているでしょうし、サンズはそうね『ロイター様を差し置いて僕なんかが……』といったところかしら。3人ともこんな感じで辞退するつもりだったでしょう?」
「「「……はい」」」
「勝手に登録しちゃって大丈夫なのかなって思ったけど、ファティマちゃんの言うとおりだったね」
「ええ」
……えっと、俺の決意はなんだったんだろう、めっちゃアッサリ終わっちゃった。
むしろ始まる前に終わってたよ……
ま、まぁ、当初の目的は達成できたんだからさ、これでよかったんだよ……な。
でもなぁ、この敗北感……なんだかなぁ。
「さて、これから私たちはパーティーとしてともに活動していくことになるわ、改めてよろしくお願いするわね」
「みんな! いっしょに頑張ろうね!!」
「2人にはリーダーとサブリーダーを任せてしまうことになるが、私たちもしっかりと役割を果たすつもりだ、遠慮なくなんでも言ってくれ!」
「僕も頑張るので、みなさんよろしくお願いします!」
「ああ、俺もできるだけのことはしよう」
こうして俺たちのパーティー活動が始まるというわけだ。
野営研修……原作ゲームのシナリオどおりなら、はぐれオーガが出てくるはずだが、どうなることやら……
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