第122話 お前を超えねばならん
午後7時ちょっと過ぎ、男子寮に帰宅。
テグ助と別れてから、学園都市まで一直線に休憩なしで飛ばしてみた。
魔力操作で空気中の魔素の取り込みを並行して行うことで魔力消費を抑え気味にしつつ、適宜魔力ポーションを飲むことによってノンストップ飛行を可能なものとしたってワケ。
まぁ、能力的な面ではこうして出来るってことが証明できたわけだが、精神的な面ではちょっと疲れたかなっていう気もしちゃうね。
このことから、特に急ぎの場合でなければ、長距離飛行は合間合間に休憩を挟んだ方がいいって言えるかもしれないな。
……そんな疲労を感じたあなたに回復ポーション!
疲れた心と体に一本グイっと行きましょう!!
というわけで、帰宅後のシャワーを浴び終えた体に回復ポーションが染み渡る。
くぅ~っ、これで元気いっぱい! さぁ夕食へ!!
そうして食堂に向かうと、ロイターとサンズを発見したので、彼らのもとへ。
「おう、しっかり食べているようだな、いいことだ」
「まぁな……しかしお前、昨日はどうした?」
「そうですよ、夕食時に見かけなかったので心配……はアレスさんだからしてませんが、気にはなりましたよ?」
「ん? そういえば言ってなかったか……俺はな、昨日今日と故郷で過ごしてたんだ」
「はぁ? お前の実家までそんな短時間で往復出来るわけないだろう」
「アレスさん……その冗談はさすがに無理がありましたね」
ああ、そうだった、アレス君の故郷ってソエラルタウト家の領地になるんだったか。
俺の感覚的に故郷と言えば、前世の北の大地とソレバ村の2カ所だったからさ……
「ああ、すまん、言い方が悪かったな。俺にとってもうひとつの故郷と言えるような村があってな、そこに行ってたんだ」
「そういうことか、まったく、紛らわしい奴め」
「村ですか……そういえば、アレスさんは平民贔屓だなんていう噂もありましたものね」
「平民贔屓か……まぁ、親しくしている人が結構いるのは確かだな」
「……平民との付き合いをやめろとは言わんが……そのような姿勢を嫌う貴族がいるからな、王宮や中央には特に……その点には気を付けておけ」
「それにアレスさん、この前のラクルスさん絡みの件でもいろいろ言われてますからね……」
「ああ、まぁ、そうかぁ……でもなぁ、気を付けるったってな……」
「まぁ、そのように考える者もいるということだけは心に留めておくがいい」
「そうだな……それにしても、お前らはそんな評判の悪い俺とつるんでいて大丈夫なのか?」
「フン、公爵家の人間に文句を言えるような者などほとんどおらん」
う~ん? それなら俺だって侯爵家なんだから、文句を言える奴が限られそうな気もするんだけどな……
「アレスさん、ロイター様はこの前の決闘以来、アレスさんの強さに惚れ込んでしまいましてね……それにこの前アレスさんから言われた『マブダチ』という言葉、あれが凄く効いていまして……」
「おい! サンズ!!」
「おやおや、ロイター君……」
「変な勘違いをするなよ! 私はお前を超えねばならんのだからな、それだけだ!!」
「ふふっ、わかっているさ」
「やめろ! わかっていると言うなら、そのにやけ顔をやめろ!!」
こうして楽しい夕食の時間が過ぎていった。
ふむ、ロイターの奴もなかなか可愛らしいところがあるじゃないか。
よし、お前をガッカリさせてしまうことのないよう、俺も強さを磨き続けるからな!
だからお前もライバルとしてしっかり実力を磨き続けろよ!!
その後は自室に戻り、いつも通りのルーティンが待っている。
そう、回復魔法の練習というルーティンがね……
ちなみにだが、ソレバ村を狙って来た盗賊どもの協力により、俺の回復魔法の練度が少し上がったようだ。
やはりと言うべきか、自分を回復させるより他人を回復させる方が魔力の通り方等いろいろと難易度が高くなるため、必然的に練度が上がるのだろう。
……それならってことで、盗賊どもを使って無限回復魔法をやってみるのもアリだったんじゃないかって思うよね?
でもさすがにね……村の若者4人衆もいたしさ、そういうのはちょっとやりすぎになっちゃうかなって……
そんなこと言ってると「アレスもまだまだ甘いな」って声が聞こえてきそうだね。
でもま、もうひとつ言い訳をすると、ソレバ村からこっちに帰ってくる時間のことも考えたら、あんまりのんびりもしてられなかったっていうのもあったのさ。
……とまぁ、毎回のようにああだこうだ言うことで回復魔法の練習開始を遅らせようとしてしまうのだが……そろそろね……行かなきゃだよね……
ふぅ……いざ!
「いでぇぇぇぇ!!」
回復! かいふくぅぅぅ!!
こうして今日もまた、俺の長い夜が始まる。
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