第121話 しばしの別れ
村人たちからのお礼を一通り受け、これで盗賊問題という心配事も解消されたかなって感じ。
流れ的に、このままみんなにしばしの別れの挨拶をして出発した方がいいかなっていう気もした。
しかしながらそこで、ナミルさんにお昼を食べていくよう言われたので、お言葉に甘えることに。
……しばらくナミルさんの手料理を食べる機会がないからさ、今のうちに堪能しておきたいって思っちゃうよね。
また、腹内アレス君も「おふくろの味」っていう概念を徐々に理解してきているのか、大賛成のようだ。
まぁ、基本的に貴族家には専門の料理人がいただろうからね、なかなか理解が及ばなかったというのも仕方ないと思う。
特に、侯爵家ともなれば尚更だろうし。
あとは……アレス君って、潜在意識的に母の愛に飢えてたみたいなところもあったかもしれないからさ……
そういった意味でも、おふくろの味というものに理解が及んでくれば、感じるものもあるのだろう。
そんなわけで集まっていた村人たちも解散してそれぞれの日常に戻っていき、俺もリッド君の家へ。
そして別れ際、今回一緒だった村の若者4人衆と言葉を交わす。
「アレスさん! 今回はメッチャ勉強になったっス!!」
「冒険者になるには、俺たちの実力だとまだまだだってことがわかりました」
「僕ら、もっと修行して強くなるので……もしよかったら、今度また冒険に連れてってください!」
「……魔法の腕も磨きます」
「おう! 君らもまだまだ伸びしろたくさんだからな、もっともっと強くなれるさ! そして今度は一緒にモンスター狩りなんかもいいかもな、楽しみにしてるよ!!」
「「「「はいっ!」」」」
なんとも感じのいい若者たちだ。
……といいつつ、肉体年齢的には俺の方が年下だし、前世を加味したとしても同年代でしかないんだけどさ。
いや、一応既に冒険者活動を始めている俺の方が先輩になるわけだから、そこはいいのか?
その活動もまだ、2カ月弱でしかないんだけどね……
とりあえずそんな感じで、今度また村に来たとき一緒に冒険をする約束をして村の若者4人衆と別れた。
今度会うときはどんな成長を遂げているのか、楽しみが増えるねぇ。
そうして、リッド君の家でナミルさんお手製のお昼をいただく。
メニューはオークの生姜焼きだ、そこにあったかい味噌汁がセット。
俺が豚肉的感覚でオーク肉を好きなのをナミルさんは気付いているのかな?
そして、絶品の甘辛タレがオーク肉によく合う、これはご飯が進む。
このタレもナミルさんオリジナルということで、素晴らしいの一言だ。
あまりの美味しさに何度もおかわりしてしまったね。
そんな美味しくも楽しいお昼であったが、時間が経つにつれリッド君の笑顔と口数が減っていく。
俺が今日帰ってしまうことを寂しがってくれているのだ。
そう思ってくれることに嬉しさもあるが、申し訳なさも感じてしまう……
そんなリッド君へ「また来るからね!」と声をかけ、約束をする。
こうしてあたたかで素敵なお昼の時間を過ごし、そろそろ出発となった。
必死に別れの涙を堪えるリッド君の頭を撫でてもう一度再会の約束をし、村人たちの見送りを受けながら村を出る。
「アレス兄ちゃん! またねぇ!!」
「リッド君、今度また会う日を楽しみにしているよ!!」
「うん!!」
そうした言葉を交わし、フウジュ君とともに空へ舞い上がる。
また来よう、そう強く思いながら、学園都市へ向けて空の旅がまた始まる。
それから、村から見て南東の位置、学園都市から見て南西の位置にテグ助がいるので寄り道をする。
奴の心情もわからないわけではないが、ナミルさんに余計な手間がかかっているのも事実だからな。
そのことを奴は知らないだろうし……
そうして、テグ助がいる村へ向かうと、ちょうど奴は村の外に出ていたみたいだ。
一応奴も戦える村人だったわけで、どうやらモンスターを狩って生活をしているようだ。
それで奴は今、森の中を村へ向けて進んでいる。
ふむ、狩りを終えて帰宅中といった感じかな?
そんなことを思いつつ、奴の近くに降下。
「久しぶりだな」
「な!? ……あんたか……もう俺に用なんてないだろ」
「まぁな……だがナミルさんのことで、お前に伝えておきたいことがあってな」
ナミルさんがテグ助の家を掃除等の管理だけして、帰りを待っていることを伝える。
「そんな……だけど今更……」
「それとな、村が盗賊に狙われていたんだ……幸い事前に気付いたから対処出来たが……下手したら襲撃を受けていた」
「な!! え!?」
「……今回みたいなことがまたあったら……ここからじゃ間に合わなくなるぞ?」
「……」
「……話はそれだけだ、じゃあな」
もうしばらくすれば、成長著しい村の若者や子供たちが中心になって村の防衛も出来るようになるかもしれないが……
でもそれは今じゃない……まだ時間が必要だ。
一応、今回の盗賊どもの懸賞金で村の防衛力を高めることは出来るだろうし、領兵の見回りももう少し密になると思う。
だが、村に戦える男が一人でも多いことに越したことはないはずだ。
……まぁ、ここからはテグ助の判断に任せるしかないな。
でもお前、まだナミルさんに未練があるんだろ?
それなら近くで見守ってた方がいいんじゃないかと思うがな。
いや、お前がナミルさんのことを忘れられるというのなら話は別だが……こんなところにいるぐらいだ、無理なんだろ?
そんなことを思いつつ寄り道を終え、学園都市に向けて飛ぶ。
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