第118話 英気が養われる
夜が明けた。
今日は盗賊らしき奴らを捕縛しに行く。
もともとはリッド君の魔法の技術がどれぐらい伸びたかの確認をしに来ただけだったんだけどね……
それで正直なところ盗賊の討伐は、難易度的にはゴブリンの集落を潰すのと大差ないのではないかと思う。
まぁ、短絡的なゴブリンに比べてアレコレと小細工的なことはしてくるだろうから、その分面倒ではあるんだろうけどさ。
あとは同じ人間同士ってところで精神的にブレーキがかかっちゃう可能性はあるかもしれないね。
その点についてはゲーム脳を全開にして、ザコモンスターだと思えば行けるでしょってなもんさ。
……いや、ちゃんと手加減はするからね?
それにタイミングよく回復魔法も覚えたことだし、ちょっとぐらい壊しすぎても問題はないのさ!
え? ポーションは使わないのかって?
そんなん使わないに決まってんじゃん、勿体ない。
ポーションだってタダじゃないんだよ?
そんなことを思いつつ、朝練に向かう。
あ、そういえばファティマの奴に今日は学園内で朝練しないかもって言ってなかったような気がするな。
いや、別に「毎朝会おうね」って約束してたわけじゃないから別にいいんじゃないかって気もするけどさ……
というか昨日、アイツがさっさと去ってったからさ、言う暇がなかったっていうのもあったと思うんだよね。
うん、そんなわけで今回のことは仕方なかったよね! ってことでここはひとつヨロシク!!
「おはよう、アレス兄ちゃん! どこ行くの?」
「おはよう、リッド君。これから朝練として魔力操作や運動をしに行くところだよ」
「オイラも行く!」
「そうかい? じゃあ一緒に行こうか!」
「うん!」
こうしてリッド君と朝練をともに行うこととなった。
最初は魔力操作ウォーキングから始め、徐々に速度を上げていって最終的に魔力操作ランニングにまで到達した。
まぁ、ある程度ペースは抑え気味にはしているけどさ。
ただ、このことからこの1カ月、リッド君も魔力操作の練習をしっかり行ってきたんだなってことがわかるよね!
そこで、ついでだから向かい風も少しプラスしてみる。
それによってペースは落ちてしまうが、なんとか頑張ってついてくるリッド君、なかなかやるね!
そうしてしばらく走っていると、早起きな村の子供たちが数人加わって来た。
さすがにこの子たちはリッド君ほどの練度ではなかったので、魔力操作ウォーキングってぐらいにまでペースを落とした。
あと、向かい風ばかりだと子供たちが嫌になってしまうかと思い、追い風や横風も吹かせてみた。
すると、いろんな方向から吹いてくる風に子供たちがキャッキャと喜んでくれた。
こういう部分で飽きさせない工夫っていうのはやはり必要なのかなって思ったね。
そんな感じで、風に吹かれながらの魔力操作ウォーキングを1時間程度行った。
ちなみに、音読はやってない。
あれは俺自身、学園内でヤベェ奴だと思われたくてわざとやってたみたいなところがあったからさ。
……優雅なおひとりさまライフを謳歌するためにね。
そんなわけで、そんなヤベェことをリッド君たちにまでさせるわけにはいかないかなって思ったんだ。
そして最後はポーションを配って、みんなで飲んで終了。
この際、魔力操作の一環と称して、ポーションで体が回復する感覚に意識を向けてみるようにと指示しておいた。
ただ、さすがに回復魔法の練習そのものまで教えるのはやりすぎになりそうだなとも思ったので、これぐらいにとどめた。
まぁ、そんな頻繁にポーションを使う機会はないかもしれないけどさ……
でも、そこが回復魔法の基礎にはなるだろうから、意識付けだけはさせておいてもいいかなって感じ。
とりあえず今はその程度にしておいて、将来回復魔法を覚えたいって子がいたら本格的に教えてあげようと思う。
というわけで朝練を終えて解散し、それぞれの家へ戻る。
「アレス兄ちゃん! 朝練って気持ちいいね!!」
「おお! リッド君も朝練のよさがわかるかい!?」
「うん! 特に風を受けながら走るのが面白かった!!」
「それはよかった」
「たぶんみんなも気に入ったと思うから、これからもみんなで朝練を続けるよ!!」
「そっか、頑張るんだよ! ただ、怪我にだけは注意するんだよ?」
「うん!」
リッド君の家では、既にナミルさんが朝食の用意をしてくれていた。
「おはようございます、アレスさん、それにリッドも」
「おはようございます、ナミルさん」
「母ちゃんおはよう!」
「それじゃあ、冷めないうちに食べましょうか」
「はい、いただきます」
「いただきます!!」
ああ、美味しい。
献立自体はトーストに目玉焼き、あとはサラダとコーンスープといったわりとシンプルなものだ。
だが、これがたまらなく美味しく感じてしまうんだ。
そして、トーストに塗るイチゴジャムだが、これはナミルさんお手製らしい。
なるほど、この爽やかな酸味に優しい甘さはナミルさんだからこそなんだなって感じだ。
そうして俺がジャムを気に入ったことを告げると、ありがたいことにストックしてあったジャムを分けてくれた。
このジャムは大事に食べようと腹内アレス君と頷き合ったのは言うまでもない。
……いや、腹内アレス君はどうやって頷いたんだって言われたら、それは俺の勝手なイメージですとしか言いようがないけどさ。
こうして和やかな雰囲気の朝食によって英気が養われる。
さて、それじゃあ盗賊(仮)の捕縛に行っちゃいましょうかね!
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