第116話 将来が恐ろしい子たち

 カッツ君と別れ、リッド君の家に着いた。

 そこでナミルさんに暖かく出迎えられた。


「アレスさん、お久しぶりですね。1カ月ぶりぐらいかしら?」

「お久しぶりですナミルさん。そうですね、それぐらいになると思います」

「元気そうでなによりです」

「ナミルさんも、あれから体調の方はお変わりありませんか?」

「ええ、アレスさんのおかげで毎日元気に過ごせていますよ」

「いえ、私はなにも……でもそうですか、元気に過ごされているなら安心です」

「ふふっ、お気遣いありがとうございます」

「いえいえ」

「ねぇ、母ちゃん! 今日アレス兄ちゃんに家に泊まってもらってもいいよね!?」

「ええ、もちろんよ」

「やったぁ! ね、アレス兄ちゃん! 言った通りだったでしょ!?」

「そうだね、さすがはリッド君だよ。そして、ありがとうございます、ナミルさん。一晩お世話になります。ああそうだ、これは学園都市で買ったクッキーの詰め合わせです。よろしければお納めください」

「まぁ、ありがとうございます、あとでみんなで食べましょうね」

「やったぁ! クッキーだぁ!!」


 こうして、ナミルさんへの挨拶も済み、一泊の許可も得た。

 快くオッケーしてくれたナミルさんには感謝である。

 あと、ここまでリッド君が俺に懐いてくれているっていうのも嬉しいものだ。

 まぁ俺自身、前世の弟や妹を相手にしている感覚っていうのも多少はあるのかもしれない。

 ……妹はともかくとして、弟に比べたらリッド君の方が断然可愛らしいけどね!


「ね! アレス兄ちゃん、外に遊びに行こうよ!!」

「そうだね、それじゃあナミルさん、少しリッド君と出かけてきます」

「ええ、リッドの相手をよろしくお願いしますね」

「お任せください」


 そんなわけで、リッド君に促されて外に出て来た。

 そうだ、またソレバ村特産のハーブティーを買っておこう。

 もう飲み切ってしまったからね。

 俺はもちろん、腹内アレス君も気に入ったみたいだし。

 それに、学園都市に戻ってエリナ先生に会いに行くときのお土産にもしたいし、焼肉のときにロイターたちに飲ませてやるのもいいだろう。


「リッド君、まずお茶の葉を買いに行ってもいいかな?」

「うん! いいよぉ!!」

「ありがとう、それじゃあ行こうか」


 リッド君の承諾も得たので、茶葉屋さんへ。

 前回対応してもらったお姉さんはいるかな?


「いらっしゃい。あら、坊やじゃないか! 久しぶりだねぇ」

「ご無沙汰しております、村に来たので寄らせてもらいました。それと、こちらのハーブティーが美味しかったもので、また買いに来ちゃいました」

「あらぁ、それは嬉しいねぇ」

「それで、今回はハーブティーを3缶……あとはこの前いただいたお菓子も美味しかったですからね、ハーブクッキーとハーブキャンディーもそれぞれ3セットずつお願いします」

「あいよ! たくさん買ってくれたからね、おまけでハーブのパウンドケーキも付けとくよ!」

「今回もありがとうございます、お姉さん」

「ありがとうございます! お姉さん!!」

「あれまぁ、リッドもすっかり言い慣れちゃって……まったく、将来が恐ろしい子たちだよぉ」

「いえいえ、それだけお姉さんがお綺麗だということですよ」

「もう! それ以上はダメさ、恥ずかしくなってくるじゃないかぁ」


 年上のお姉さんが本気で照れてる姿……最高です。

 実年齢? そんなの知らんよ。

 俺の目や脳には綺麗なお姉さんとしか認識出来ていないからね、それでいいのだ。

 そんなこんなで茶葉屋さんを後にした。

 ちなみに、ハーブキャンディーをさらに追加でおまけしてもらった。

 なんだか催促したみたいになってしまったな……

 まぁ、今の俺の移動能力ならソレバ村ぐらいの距離は日帰り出来そうだし、ちょくちょく来ることもあるだろうから、そのときまた茶葉を買いに来よう。

 その後は、リッド君の案内に任せて村の中をブラブラした。

 その際、外で遊んでいる村の子供たちにも会ったのだが、これがまた驚きだった。

 リッド君の影響でみんな魔法を使って遊んでいるんだ。

 確かに俺も、前回リッド君に前世で遊んでいた雪合戦の話とかもした記憶があるが……それを子供たちはエアーボール合戦に変えて遊んでいた。

 さっき会ったカッツ君も使っていた紙装甲の魔纏があったでしょ? あれを割られたらアウトって感じでエアーボールを投げ合っていたんだ。

 平民の子の魔力量でもあれぐらいならギリギリなんとかなるみたい。

 加えて、魔力量的にエアーボールの残弾数も限られるから、それがなかなかにシビアで面白いらしい。

 リッド君の話によると、魔力操作の練習も並行して頑張ったおかげみたいな部分もあるようだけどさ、これには素直に凄いって思ったね。

 そして何気に、この村の子たちってどうなってんだって感じもしちゃう。

 この世界の人のスタンダードとしては魔力操作ってつまんないからやりたくないって思われてて……そのせいで魔法の技術がなかなか伸びないって感じだったと思うんだけどな……

 あのエアーボールも現時点では殺傷力がほぼゼロだけど、このまま使い続けていたら練度も上がっていって、有効な攻撃魔法に進歩させられるだろうし。

 そんな感じで、伸びしろの塊の子供たちを見てワクワクさせられるとともに、俺ももっと頑張んなきゃなっていう刺激にもなった。

 あと、このまま攻撃魔法としてのレベルが上がっていくと危なそうな気もするので、茶葉屋さんで入手したハーブキャンディーを子供たちに配りながら、その辺のところを注意喚起しておいた。

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