第114話 魔力を辿って

 前回ソレバ村に行ったとき、移動はゼスに任せっきりで馬車の中が多かったからね、実は正確な道を知らないんだ。

 とはいえ、学園都市から西の方角に進めばいいってことだけは知っているので、適当に西に向かえば大丈夫なハズ。

 さらにいえば、魔力探知でリッド君やナミルさんの魔力を探知して、彼らの所在地に向かって進んで行けば自動的にソレバ村に着くことが出来るだろう。

 そう思いながら魔力探知を発動すれば、しっかりとリッド君やナミルさんの魔力が感知出来た。

 よし、間違いなし、あとはこの魔力を辿って行けばオッケーだ。

 そして今回はほぼまっすぐ飛ぶだけでさほど細かい制御もいらなさそうなので、ウィンドボードの操縦はボードを直接魔力で操作する魔力制御式ではなく、風魔法を受けるだけの風魔法式にしている。

 そこまで極端な差でもないが、風魔法式の方がいくらか魔力の消費が少ないからね、長距離飛行ともなれば地味に大きな差になるかもしれないって思ったんだ。

 それに加えて、魔力操作で周囲の魔素の取り込みも同時に行っているので、魔力の消費はかなり抑えられているんじゃないかと思う。

 これぐらいなら突発的な戦闘が発生しても対応可能だろう。

 そうして、何度か休憩を挟みながら優雅な空の旅を満喫する。

 正直、休憩はそんな必要ないかもなっていう気もしなくはなかったが、念のためって感じだ。

 そして、休憩のために地面に降り立ったときなんかは、長時間空の世界にいたせいか、なんとなく変な感じがするのがちょっと面白いなって思ったものだった。

 また、空の上っていうのは道の状況を気にせず進めるから気楽だね。

 というのも、地上だと前を進む馬車とか徒歩の人、それからすれ違う相手なんかへ気を配らなくちゃいけない場面もあるからさ。

 そういうのが必要ないっていうのが助かる。

 あと、俺の場合は魔纏によって防御もしっかり固めているので、鳥型モンスターなんかと衝突してもノーダメージで済むんだ。

 まぁ、中途半端に戦闘するのもなんなので、なるべく避けるようにはしてるけどさ。

 こうして昼過ぎまでの数時間を空の旅に費やし、ようやくソレバ村に無事到着。

 わりとアッサリだったね。

 これなら日帰りも可能かもしれない。

 そうして、村の門番的な男に挨拶をすると、俺のことを覚えていてくれたようでフレンドリーに対応してもらった。

 こういうのは地味に嬉しいもんだね。

 そんな感じで、村に入れてもらったところ、リッド君に出迎えられた。


「アレス兄ちゃん、久しぶり!!」

「おおリッド君! 元気だったかい?」

「うん! 元気だったよ!! アレス兄ちゃんは?」

「ああ、俺も元気にしてたよ。それにしても、今日ソレバ村に来ることは伝えていなかったと思うんだけど、よく俺が来ることがわかったね?」

「それはね、魔力操作の練習をしてたらさ、アレス兄ちゃんの魔力を感じたから、もしかしてって思ったんだ!」

「へぇ、それは凄い! しっかり頑張っているみたいだね、素晴らしい上達ぶりだよ!」

「えへへ、そうかなぁ」


 可愛らしく照れているリッド君だが、これはマジで凄いと思う。

 というのも、エリナ先生に魔力の隠蔽を教えてもらってから、基本的に学園外では魔力を抑え気味にしていたからさ、普通は俺の魔力に気付きづらいはずなんだ、特にこれだけ距離があればね……

 それをリッド君は気付いたというわけだ、正直これには驚かされた。

 まぁ、前に俺がマヌケ野郎と戦っていたときも、リッド君はその魔力を感じていたらしいし、そういった才能があることはわかっていたけどさ。

 あと、吸命の首飾りでナミルさんが命を落としかけたってことが大きいのかもしれないな。

 あんなことが二度と起こらないようにって魔力探知には特に力を入れて取り組んできたのだろうし。

 あ、もしかしたら俺が魔力探知を使った瞬間に気付いたって可能性もあるな。

 しっかし、この様子ならさらにリッド君を学園に推薦しようって気になってくるね!

 確かまだ5歳だったはずだし、13歳の学園入学までの期間にまだまだ伸びる可能性がある。

 いやぁ、楽しみだねぇ。

 ……でも、このまま行くと確実に目立つようになるな……下手したら主人公君みたいに周りの嫉妬を買うかもしれない。

 そうなった場合を見越して、それらを撥ね退けられるような実力を養成することは大前提として、リッド君にも魔力の隠蔽を教えておいた方がいいな。


「ね、アレス兄ちゃん! 今日は家に泊ってってくれるよね!?」

「え? そうだなぁ、それはナミルさんに聞いてからかな」

「大丈夫だよ! きっと母ちゃんもいいって言うはずさ!」

「じゃあ、それも含めて、まずはナミルさんに挨拶に行こうか」

「うん!」

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