第107話 薬草採取を始めた

 トレルルスのアドバイスを受けたことで、薬草採取にトキメキを感じながら学園都市周辺の森の手前までやって来た。

 さて、さっそく魔力探知をしてみよう。

 さっさと森の深層に入って保有魔力量のすんごい草を探してもよかったが、どれぐらいの保有量から薬草判定になるのかも知りたくなったので、段階的に採取していこうと思う。

 とかいっているうちに、周りの草よりちょっと保有魔力量の多い草を発見。

 フウジュ君に乗って森の木々をかわしながら草のところへ向かう。

 今の俺の操縦テクだと、木にぶつかりそうであんまりスピードを出せないのが悔しいところではあるが、徐々に慣れていきたいところ。


「ふむ、これが薬草(仮)ってわけか……見た目は他の草とあんま変わんないね」


 とりあえず、地属性魔法で周りの土を取り除き、ささっとマジックバッグへ入れる。

 ……これで一応薬草を1本採取したってことになるわけか、確かに簡単だね。

 そうして、次々と薬草らしき草を採取していく。

 その間ウィンドボードの操縦練習も並行して行う。

 目の前の木に激突する寸前に直角で曲がってみるとかね。

 まぁ、そんなスピードを出していないから出来ることだし、そもそも魔纏で防御もばっちりだから、ぶつかってもノーダメージなんだけどね。

 そして、進行方向上にいたゴブリン相手にフウジュ君に乗ったままミキジ君とミキゾウ君でぶっ叩くという戦い方も試す。

 すれ違いざまに叩いたときのボコォという感触と響きがたまんないね。

 しかもマラカスなら手加減もバッチリだからパァーンって破裂させることもないので安心さ。

 ……あ、ミキオ君を蹂躙モードで前方に突き出しながらフウジュ君に乗って突っ込んでったらスゲェ必殺技みたくなりそうじゃない?

 よっしゃ、やってみよ!

 ……お、ちょうどよくターゲットとなるゴブリンを発見、行くぞ!


「今更逃げ出したってもう遅い!」


 ゴブリンまで、その途上の木々を木端微塵に砕きながら一直線に突っ込んでいく!

 ……うん、森にちょっとした小道が出来上がったね。

 でもまぁ、この世界の植物は魔素とかの影響で比較的成長が早いみたいだから、ちょっとぐらいなら大丈夫らしい。

 もとがゲームの世界だし、その辺は設定的に多少はね?

 でもまぁ、さすがに森全部を焼き払うみたいなことをすると偉い人に怒られるだろうが、これぐらいなら問題なし。

 というか、強めの魔法を放つとどうしてもこうなるからいちいち怒ってられないっていうのもあるかな?

 それはそれとして、まだまだ改良の余地もありそうだし、いろいろ試していこう。

 とはいえ、蹂躙モードはマヌケ族みたいに絶対に始末しなければならない相手や、素材価値が大してない奴とか……あとは、そもそも手加減なんかしてられない強敵用だね、やっぱ勿体ない感が出ちゃうし。

 そんな感じで新しい技を試しつつ、薬草採取にもしっかりと取り組む。

 薬草まで少し距離のある場合は、ウィンドボードの練習も兼ねて急上昇して木々の上から現場に向かい、急降下して薬草採取にあたるなんてこともした。

 ああ、ゴブリンテーリングをしていた頃を思い出すね、なんだか懐かしいなぁ。

 そんなことを思いつつゴブリンの領域からオークの領域へ入った。

 徐々に草の保有魔力量も多くなっていくのがわかる。

 たぶん、この辺のは確実に薬草と判定されそうな気がする、なんとなく草にそういう雰囲気がある。

 そして薬草と毒草だが、これもなんか草が持つ魔力の感じで見分けがつきそう。

 なんとなく薬草っぽい草の持つ魔力の方が穏やかな感じがする。

 といいつつ、間違っていたら恥ずかしいので、おとなしくギルドで鑑定してもらってから売却するけどさ。

 それと、ファティマから焼肉をリクエストされたからね、美味しいお肉を狩って行ってやろうじゃないか!

 腹内アレス君、頼んだぞ!

 一応マジックバッグの中にはオークのストックもまだあるんだけど、特別なイベントには特別なオークをって感じ!

 こうして夕方近くまで森でオーク狩り! 薬草採取! ウィンドボードの練習!! といった内容盛りだくさんな時間を過ごした。

 とりあえず、オークに関しては腹内アレス君イチオシの絶品お肉もゲット出来たし、これならファティマを再びビビらすことも出来るだろう。

 加えて、普段はシェフの作るお上品な料理ばかりであろうロイターたちも驚愕させられるハズ!

 フフッ、彼らの驚いた顔が今から楽しみだねぇ。

 そして、薬草(仮)も限られた時間の中でたくさん採取出来たと思う。

 単なる草や毒草が混じっていたとしても200本近くはあるだろう。

 それから、ウィンドボードについては昨日よりは上達出来たかなって感じだ。

 まだまだ伸びしろがたくさんありそうでワクワクしてくるね。

 そんなことを考えているうちに、学園都市に到着。

 やっぱ、ウィンドボードでの移動は楽だし、なにより「今の俺カッコよくね?」って思えるのがたまらなくいい。

 もっと早く気付いていればよかったなって思っちゃう。

 そうして街中を歩くことしばし、ギルドに着いたので薬草の大量納入を敢行!


「おう、アレス! 今日も買取か?」

「ああ、買取は買取だが、まずは薬草の鑑定を頼みたい」

「ほう、お前さんも遂に薬草採取を始めたか」

「まあな。それで、いつも通り出せばいいのか?」

「おう……ってやっぱりアレスだもんな……そんな感じになるわな」


 お、呆れを含んだ対応ゲット!

 ふっふっふ、異世界転生の先輩諸兄よ、俺も異世界テンプレの回収、頑張っていますよ!!


「ふむ、最下級の薬草が136本、下級の薬草が14本、中級の薬草が2本、最下級の毒草が41本、下級の毒草が5本ってところだな。あとはただの草が15本。薬草採取は今のところ常設依頼しか出ていないがどうする?」

「そうだな、全部買取で。ただの草の方は持って帰るよ」


 ただの草に関してはギルドで処分もしてくれるだろうが、ふと思ったんだ、ただの草に魔力を込めてみたらどうなるのかなってね。

 そんなわけで、部屋に戻ったら実験してみようと思う。

 上手く行けば、薬草の自家栽培なんてことも!?

 フフッ、楽しみだねぇ。

 そうして、薬草の換金を終え、学生寮へ帰ることに。

 今日の帰宅のお供は薬草大福……ま、前世で言うところのよもぎ大福だね。

 西洋風ファンタジー世界に大福!? って思ったかもしれないけど、この前のロイターたちとの会話で焔の国が出て来たでしょ?

 あの国から製法が伝わって来ているのさ。

 薬草独特の渋みと粒あんの甘みがベストマッチ!

 これなら何個でも食べられちゃうね!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る