第6章 才能あふれる子供たち

第99話 空の相棒

 ファティマとの友達宣言から、しばしフワフワとした気分で午前中を過ごした。

 やはりルーティンと化した活動はありがたいもので、ほぼ無意識でシャワーも朝食も難なくこなせたので助かった。

 また、授業の方も多少気持ちが落ち着いてはいなかったが、エリナ先生に申し訳ないのでなんとか真面目に聞く努力はした。

 そうして時間の経過とともに、ようやく意識がシャキッとしてきたところで授業が終わった。

 もともと予習は出来ている部分ではあったが、序盤から中盤にかけてあまりきちんと話を聞けていなかったのは確かなので、その点はエリナ先生に悪いことをしたと思う。

 その後昼食を済ませたあと、気持ちを切り替えて街の外に出て来た。

 ウィンドボードの練習のためだ。

 ……単純にボードと呼ぶだけでもよかったのだが、風属性魔法を使って飛ぶので俺の中での区別のためウィンドボードとした。

 そして、今回俺がお迎えした魔鉄のウィンドボードのことは、風を受けて飛ぶってところからフウジュと名付けた。

 頼もしい俺の空の相棒だ。

 そんなわけでさっそくフウジュ君と空の旅へ。

 最近の俺はあんまり頭もよくないのにいろんなことをゴチャゴチャ考えすぎていたからさ……そういういろいろを忘れて今は空を楽しむことにした。

 それに先日、オーガとの戦闘も経験してだいたいの強さの目安もわかった。

 あとは野営研修までに何度か戦ってみてその確度を高めて行けばいいかなといったところ。

 そんな感じで、森の上空を気ままに飛び回る。

 それと、風歩の練習を始めたときは背中に風をあてるのはどうもしっくり来ないと思っていたが、朝練で追い風と向かい風を受けながら移動する練習をしたことでだいぶ慣れてきた。

 そのため今は、フウジュ君の裏面に風を当てることで高度を確保し、あとは追い風と向かい風でスピードの調節をしている。

 あと、速度としては前世の感覚的に自転車ぐらいかなって感じ。

 まずはこれぐらいの速度で操作に慣れ、少しずつ速度を上げて行こうと思う。

 そういえば、リッド君とも1カ月近く会っていないな……

 どれぐらい魔力操作が上達したか見に行ってもいいな。

 もう少し練習を重ねて操作に慣れたら、週末にでも長距離飛行の練習も兼ねてソレバ村にフウジュ君と行こうかな。

 野営研修までまだ結構時間もあるし、パーティー単位での活動練習もまだ先だろう。

 というかむしろ、今週末を逃せば、次の機会は野営研修後になってしまうな……

 そうして日が暮れるまで空の世界を存分に楽しみ、学園都市に戻ってきた。

 街に戻って来たとき、手加減の練習台にしたモンスターの一部をまだ売却していなかったのを思い出したので、冒険者ギルドへ行った。


「おう、アレス。今日も買取か?」

「ああ」

「よっしゃ、いつものようにここに出してくれ」


 そうして、四肢がぐちゃぐちゃ気味のゴブリンたくさんと、オーク少しを出す。


「……最近は損壊が激しいな……戦い方を変えたのか?」

「いや、変えたつもりはない。ただ、対人戦に向けて手加減の練習をしていてな……」

「……手加減の練習にモンスターとは……まぁ、そういう奴も過去にいなくはなかったが……でもやっぱ珍しいな……」

「だがそれも一段落ついたから、今度からはもう少しマトモな素材を売却出来ると思う」

「そうか……だがまぁ、別に無理しなくていいからな? 損壊の激しい素材はクブンとカセカの奴らが『練習になる!』と言って喜んで解体していたからな……どっちが使える部位を多く取り出せるかと競争してやがるんだ」

「ほう……それは凄いな」

「ああ、あいつらは将来、うちのダブルエースに成長するかもしれん」

「うぅむ、置いていかれてしまうな……」

「はっはっは、お前は他にもいろいろやることがあるんだ、そう焦ることもない。それに、まったく解体をやっていないわけでもないんだろう?」

「まぁ、オークの肉を欠かすことは出来ないからな、定期的にオークの解体だけは続けている」

「冒険者活動を基本とするなら、それで十分すぎるほどだ。それにあいつらはあいつらで、他にもやることのあるお前に負けてられないと言っていたし」

「そうか、あいつら……」

「しかもお前、昨日オーガを狩って来ただろ? それもあいつらのいい刺激になっていたしな。ちなみにそのオーガだが、あいつらがさっそく嬉々として解体しちまいやがった……まったく、キラッキラした目ぇさせやがってよ」

「フフッ、いいコンビだな」

「違いない……おっと、つい話し込んじまったな。これが今回の引取証明書だ」

「確かに。それじゃあ換金してくるよ、またな」

「おう、この次も頼んだぞ!」


 こうして換金を終え、男子寮へ帰ることに。

 その道すがら、ラムネを飲みながら帰った。

 炭酸のシュワシュワとした爽やかな刺激が体中に染み渡るようで、それが妙に心地よかった。

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