第95話 俺はどうだっただろうか
決闘に関する協議が終わったので解散となった。
ロイターに関してだが、最上級ポーションの使用により完全に回復出来ているとは思われるが、一応大事を取って部屋で安静にすることとなった。
サンズはその付き添い……まぁ、男子寮に女子が入るわけにはいかないから仕方ないよね。
そんな感じで、他のみんなはそのまま各自の日常に戻っていった。
それは俺も同じ。
そして、気付けばもう夕方。
一旦シャワーを浴びて夕食をいただくとしましょうかね。
そうして食堂に着いたわけだが、俺が食堂に姿を現した瞬間、急に雰囲気が重くなった。
さらに言えば、みんな露骨に俺から目を逸らすんだ。
ノリでアレス・ソエラルタウトの厳しさを教えるとか言ったけど、ここまでビビられるとなるとちょっと悪いことをしたかなっていう気も今更ながらにしてきた……
そんなことを思っていたら、食事を終えたらしい豪火先輩が食堂から出る際、俺に話しかけてきてくれた。
「おい、今回はまた随分と派手にやらかしたな。まぁ、ロイターの奴も強情だからな……お前らがぶつかったらこうもなるか……とりあえず、お前はもう少し周りの目も気にしとけ」
その言葉とともに、頭を軽く小突かれた。
「ヒィッ! なにやってんだあの先輩!!」
「正気か!?」
周りから悲鳴が上がり、動揺が広がる。
「ま、俺も人のことは言えねぇけどな……それじゃあな」
そう言い残して去っていった豪火先輩。
「ん? 大丈夫……なのか?」
「確かに、怒っている様子はないな……」
「いやいや、そうは言っても、なんて命知らずな先輩なんだよ……」
「俺、心臓が止まるかと思った! いやマジで!!」
「ごめんだけどさ……ちょっとチビった」
「お前はまったく……ほら、早く着替えに行くぞ!」
「言っとくけどそれ、誤魔化せてないからな?」
豪火先輩、あなたって人は……どうしてそこまでカッコよく決められるんだ!?
さっきまでの重苦しい雰囲気も、今ではだいぶ軽いものに戻っているし……
周りの俺に対する視線も怯えがまったくなくなったわけではないけど、かなりマシにはなっている。
なんだろう、豪火先輩ってホントに14歳なの?
先輩も転生者でしたってことないよね?
そんなことを思いながら食事を終え、自室に戻った。
今回の決闘を振り返ってみて、俺はどうだっただろうか……
なんか、ボコボコにする前提でものを考えすぎていたかもしれない。
というか、悪ノリしていた部分もあったことは正直、認めざるを得ない。
相手をマラカスでボコボコにしたら、その後シャカシャカ音が聞こえる度にビクッとしちゃうよね? みたいなこともちょっと考えていたし。
それにまぁ、多少やり過ぎても最上級ポーションを飲めばなんでも治るみたいに安易に考えていた部分もあった。
……そういや、ポーションでトラウマって治るのかな?
スポーツドリンク感覚で飲んでる最下級ポーションでも元気いっぱいになれるし、大丈夫だよな?
まぁ、今回はロイターがガッツ溢れる男だったからこうなったっていうのもあるだろう。
他の奴なら、骨を数本……下手したら最初の1本で心も折れてた可能性だってあるわけだし。
そう考えると、やっぱロイターの根性……そしてファティマへの想いは本物なんだろうなぁ。
そしてあの降参の意思表示……いろいろカッコいい物言いをしたが、根底にあったのはロイターのファティマへの想いに負けを感じたっていうのがあるんだよな。
もちろん、ロイターに男を見たというのも本当だけどさ。
それでそのファティマだけど、俺も別に嫌いじゃないんだ。
顔だって可愛いし、アイツとの会話に面白味を感じているのも事実なんだ。
でもなぁ、どっちかっていうと友達って感じなんだよな。
男女の友情は成立するしない論に言及する気はないけどさ、正直な俺の気持ちを言えばそうなんだよ。
いやまぁ、知り合ってまだちょっとしか経ってないからっていうのもあるし、これから気が変わる可能性がまったくないのかって詰め寄られたら、わかりませんって答えちゃう気もするけどさ。
ただ、そもそも俺ってそこまで恋愛を求めてないっていうのもあるんだよね。
エリナ先生のこともさ、めっちゃ好きなんだけど、わりと今の状況で満足しているっていうのもあるし……
う~ん、どうしたもんかな。
とりあえず、ロイターにはファティマがデブ専なことだけは教えておこう。
そこからはロイターの頑張り次第だ。
それでロイターが見事ファティマの心を射止めればそれでいいし、ダメだったときはそのときのことだ。
そして俺も、恋愛方面でこの先どうしたいのかじっくり考えよう。
たぶん今は答えが出ない。
あとは豪火先輩の言った周りの目っていうのもな……考えなきゃいけないことだよな。
とはいえ、周りに人を寄せ付ける気がないっていうスタンスをそこまで変える気は今のところないけどさ。
でも、完全に無視するのもどうかっていうことではあるだろうしなぁ。
そんなことをグダグダと考えながら夜が過ぎていった。
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