第79話 当たらない
学園都市から出て森の奥まで入り、現在オーガを捜索中。
オーガかもしれない強めの魔力を求めて森を彷徨い歩くのだが、まずもって遠い。
そしてようやく辿り着いたと思ったら、オークナイトやマジシャン、そして極々たまにジェネラル……
なんていうのかな、ガチャで狙ったモンスターがなかなか当たらない悲しみってやつかな。
小学校ぐらいの頃だったかな、お小遣いをせっせと貯めてかき集めた100円硬貨たちを握りしめてガチャを回しに行った日々を思い出すね。
そして、当然のように欲しいのがなかなか出なくて涙をのんだあの頃……そんな俺の隣でレアものを一発で引き当てて有頂天になっていた佐藤君の輝かんばかりの笑顔は今も記憶に鮮明に残っている。
佐藤君はああいうときの引きが驚異的だったからな……今もその引きは健在なのだろうか。
でも、張り合うみたいな感じになっちゃうけどさ、俺も異世界転生っていう超絶レアを神懸かり的な幸運で引き当てたからね、正直今では佐藤君より俺の方が凄いんじゃないかって思っちゃう。
もしかしたら、前世のガチャ運のなさはこれを引き当てるために貯められてたんじゃないかとすら思うね!
ちなみにだけど、欲しかったやつは中学に入ってからアニメ系リサイクルショップでバラ売りしているのを見つけて買ったった。
その後、ガチャは回すものじゃなくて、バラ売りしてるのを見つけて買うものだという認識に変わったね。
いや、ものによってはプレミアがついて高くなっているのもあったけど、当たらないガチャを回すよりはマシだと思ったし、待てば結構安くなることもあったからね。
……そんな思い出に浸ることでオーガが当たらない悔しさを紛らわせようとしていた。
でもさ、ノーマルオーガよりオークジェネラルの方がレア度高くね? と言われたらそうかもしんない。
まぁ、素材の買取金額は圧倒的にオークジェネラルだね。
地味に装備が豪華だったりするからそれだけでも結構な金額になるし、なによりやっぱ肉がめっちゃ美味いらしいからね、貴族なんかが大喜びで買っていくから値段が跳ね上がるんだってさ。
それに対してオーガの肉は筋張ってて硬いって言われてあんまり評判がよくないらしいから、買取金額もそれなりになっちゃうんだってさ。
味自体はそこまで不味いってわけじゃないらしいから売れはするみたいだけどね。
なので、魔石や皮とかの装備品の素材としての価値が主なものになるらしい。
そんなわけで、オーガは強さのわりに儲けが少ないから、冒険者にとってあんまりうまみのある獲物じゃないんだってさ。
この辺の話は全部ザムトルのオッサンから聞いたことだね。
あのオッサンはおしゃべりさんだから、こっちが聞きの態勢に入ると機嫌よくガンガン語りだすって感じ。
……はぁ、駄目だ見つかんねぇ……流石にそろそろ戻らないと夕飯に間に合わなくなる。
その場合腹内アレス君が黙ってないからね、仕方ない帰ろう。
こうして、オーガに会えない週末は過ぎていった。
今回のことから考えると、ゲームに出て来たはぐれオーガってマジではぐれた奴だったんだろうなって感じがするね。
それと、俺はゲーム知識がこの世界で生活する上で悪い方に作用することもあると知った。
どういうことかというと、ゲームならフィールドをある程度歩けばすぐオーガが出現する領域に行くことが出来たのだが、この世界だとそのある程度がかなりの距離だったってこと。
まぁ、当然といえば当然だったかな……この辺についてはちょっとこれからどうするか考えなきゃだね、具体的には移動手段をさ。
やっぱ、異世界転生者らしく大空に飛び出さなきゃかな!?
現代知識チート! 飛行機の発明!!
……ごめん、無理。
バリバリの文系を自負しているので、そういう科学技術的なものを俺に求められても困ってしまう。
だが、俺も伊達に異世界ファンタジーを好んで読んでいたわけじゃない、異世界転生者の先輩の中に風属性魔法の応用で空を飛んでいた人がいたから、俺もそのアプローチで空の世界に挑戦してみようと思う。
やっぱこの世界は魔法さ! 魔法があればなんでも出来る!!
それにアレス君は魔力の申し子だからね、その辺を踏まえると俺が科学力に魂を売るわけには行かないよね。
そんなことを思いながら学園都市に着いた頃には夕方7時。
今日は魔鉄のナイフのプレゼントはお預けかな。
たぶんもう試験も終わってみんな帰ってそうだし。
ま、そっちは明日でいいよね。
それに今の俺、テンションがあんまり高くないからね、お祝いムードバリバリっていう雰囲気は出せそうにない。
そうするときっと、天才解体少年やほっそりーずの解体士に舵を切った青年に変な気を遣わせて迷惑をかけそうだ。
よし、こんな日はさっさと帰って腹いっぱい飯を食って、魔力操作をやったらささっと寝てしまおう。
眠りが全てを癒してくれるはず!
……でもやっぱ、オーガ、狩りたかったな。
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