第75話 俺の気分なんか関係なし
どうも、野営研修でパーティーを作らなければならないという決まりのせいでテンションガタ落ちのアレス君です。
今はそんな沈んだ気持ちを抱えながらお昼ご飯を食べに来ています。
俺の気分なんか関係なしに腹内アレス君は食欲を訴えてくるからね……
「今日、私のクラスは春季交流夜会へ向けてのマナーの特訓でしたね」
「え、お前んとこも? 俺んとこもだった」
「たぶん、どのクラスおんなじだったんじゃない~?」
「ワシもそう思うのう」
「それで、この前ゾルドグスト先生から代わった先生が臨時から正式にうちのクラスを担任することになったのですがね……今日、全員こっぴどく叱られてしまいましたよ『お前たちは魔力操作だけでなく、マナーまでなっとらんではないか!』ってね……」
「俺んとこも似たようなもんだわ」
「最近、魔力操作魔力操作って、先生たちうるさいよね~」
「ワシはああいうじっとしてちまちまやるのがどうも性に合わんくての、かなわんわい」
「知ってるか? Aクラスのエリナとかって先生いたろ? あの先生が魔力操作をもう一度徹底的に叩き込めって学園長に直訴したからこうなったらしいぜ?」
「え~それが本当ならさいあく~」
「それがマジなんだって! 俺んとこの先生が苦笑いしながら言ってたからな!」
「魔力操作なんぞより、男ならこの鍛え上げた肉体から繰り出すパワーですべてを語るべきだと思うがのう」
「君の場合はもう少し筋肉以外にも目を向けた方がいいと思いますね……」
ふぅん、どこのクラスも今日は似たようなことをやってたんだな。
しっかし、魔力操作の凄さ、大事さがわからないとは、嘆かわしいもんだね。
そして、筋肉の塊君は勘違いをしている。
意識的か無意識的かにかかわらず、体内を循環する魔力が筋肉をアシストしているという事実に気付いていない。
なのでおそらく、彼の言うパワーにも魔力が乗ってるはず。
それに、俺も筋トレに取り組んでみて気付いたが、結局は筋トレも魔力操作も同じ方向に向かうんだ。
前世の筋トレでも自分が今どこの筋肉を鍛えているのか意識してやるべきって言われてたでしょ? なんだったらその部位に触れながら効いてるのを感じながらやるのがいいってさ。
そういう意識を持って筋トレをしていると、どっかで魔力の循環に繋がっていくんだよ。
魔力とは思わないかもしれないが、体の中を巡るエネルギーの感覚、それが筋肉を動かす原動力になっていくんだ。
今は気付いていないかもしれないが、彼もいつかきっとそのことに気付くはず。
ま、ごちゃごちゃ言ったけど、君はこのまま筋トレを頑張ったらいい、それが無意識的に魔力操作も兼ねているだろうから。
「それにしてもよ、あのエリナって先生、容姿は抜群に優れてるかもしんないけど、一緒にいて常に魔力操作がどうとかって言われ続けたら嫌んなっちゃうだろうな」
「だね~っていうか、いっつもそんな調子だったから、未だに結婚出来てないんじゃない?」
「……いけませんねぇ、そういうことを言うのは」
「そんなこと言って~自分だけいい子ぶるのはズルいんじゃな~い? それに笑いそうになったのを堪えてたのバレバレだよ~?」
「ワシもああいうキッチリしたタイプは苦手じゃのう、おなごはもっとこう、おおらかでないとのう」
あの小僧ども、エリナ先生に対して無礼な物言い、許せんな!!
「ヒィッ!」
「うぅ……」
「なんじゃい、この暴力的な圧力は!!」
「こ、この威圧感……あ、あちらから感じますね……あっ!」
「な、なんで!? 僕らあの人のこと、なんも言ってないよ!?」
「そういえば王女殿下の取り巻きから聞いたけど……あ、あいつも魔力操作狂いだ!」
「ひゃぁッ!!」
「……おい、気持ちはわからんでもないが、そろそろその魔力圧を解いてやれ、そうしないとあいつら気を失っちまうぞ?」
「これはどうも、先輩。お見苦しいところをお見せしました」
「いや、気にすんな」
なんと、たまたま通りかかった豪火先輩にたしなめられてしまった。
何気に言葉を交わしたのはこれが初めてなんだが……なんとも残念な感じになってしまったね。
そしてもう行ってしまったよ。
やっぱ豪火先輩、ワイルドでカッコいいわ~
なんか颯爽としてるんだよね、それでいてああいうサラッとした優しさも兼ね備えて……さぞおモテになるんだろうなぁ。
正直、豪火先輩が同学年だったら即パーティー組んでくださいって言うんだけどな。
でも、残念ながら今回の野営研修は1年だけなんだ。
2年は遠征研修っていう違うイベントなのよね。
あ~あ、俺って火属性魔法に苦手意識あるから、それが得意な豪火先輩と組めたらちょうどよかったのになぁ。
そうして昼食を終えて自室に戻った。
なんか今日はパーティー問題で気持ちが沈みっぱなしだな。
気持ちを切り替えていかないとだね。
とりあえず、明日の闇の日は休みだから、一旦パーティー問題は忘れて朝からモンスター狩りに行こうかな。
そんで日帰りでどこまで行けるかわかんないけど、いつもより奥まで行ってみよう。
そうと決まれば、ミキオ君の名刀モードの精度というか制御がまだまだだったから、今日はそれに取り組みますかね。
オークをぐちゃぐちゃにせず、綺麗にスパッと行けるようにね!
そんなわけで、今回は体を動かすっていうより、ミキオ君の名刀モードを維持する訓練だからこの部屋でいいか。
なんか、今の俺だとあっちこっちでさっきみたいに八つ当たりしそうだし……
いやでも、あいつらはエリナ先生に失礼なことを言ったんだ、そこだけは今後とも断固とした姿勢で臨むけどね!
こうしてミキオ君を構えて、あとはひたすら名刀モードの維持。
前世の漫画内師匠の教えによると、武術の構えのまま長時間じっとしてるのもかなりの鍛錬になるらしい。
まぁ、腰を落として構えるわけだからほぼ空気椅子状態、足腰が悲鳴を上げるのは当然だよね。
だがその分、強い足腰を手に入れられるんだ、実りは大きかろう。
途中、足の痛みなどで何度か集中が切れそうになりつつも、なんとか名刀モードの維持を続けた。
今の練度では長時間の戦闘で名刀モードを維持し続けるのは無理めだが、ごく短時間ならなんとかなりそうだ。
基本一振りでスパッとだね!
よし、明日のオーク戦で試してみよう。
そんな感じで、腹内アレス君に「ご飯食べるよ!」と言われるまで続け、夕食へ。
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