第74話 暗澹としたものに変える
エリナ先生の授業をクールに受けた後はお決まりのルーティン的に魔法の練習等をして過ごし、風の日を終えた。
明けて本日光の日もやはり、いつも通りきゅるんとした小娘の嫌そうな顔を見て朝練。
なんていうか、小学校の夏休みにやっていた朝のラジオ体操で町内会のおじさんにスタンプを押してもらう感覚になって来た。
って、最近のちびっこはラジオ体操とかやってるのかね?
なんか、俺が高校生ぐらいになった頃ちらっと見た感じでは高齢プレイヤーの方が多くて少年プレイヤーの数が激減していたような気がするが……これも少子化の影響かね?
そんな社会派気取りはともかくとして、俺のちっちゃい頃は、ラジオ体操が始まる前に公園に集まった近所の同級生やよく知らん上級生の兄ちゃんとかとサッカーとかをしてよく遊んだもんだよ、懐かしいなぁ。
もうほとんど名前も顔もうろ覚えだけど、みんなどうしてるかなぁ?
俺なんか異世界転生しちゃったぜって言ったらみんな驚くかなぁ?
ま、とりあえず今日も、心のスタンプカードに嫌そうな顔スタンプを押してもらって、朝練を終了。
ノスタルジックな気分に浸りながらシャワーで汗を流し、朝食をいただいて、今日も楽しいエリナ先生の授業へ。
「年間予定表を見て知っている子もいるかもしれないけれど、来週の光の日に春季交流夜会があるわ。そこで、今日はそれに向けてテーブルマナー等の確認をします。たぶん、Aクラスのみんななら実家でしっかり学んできているとは思うけれど、抜けや漏れがあってはいけないからね。ここで見つかった課題なんかをこの1週間のうちに練習しておくといいと思うわ」
ああ、いわゆる合コンイベントね。
いや、そんな言い方したら偉い人に怒られそうだけどさ、実際そうなんだ。
ここで攻略したいキャラに話しかけたり、ダンスに誘ったりして好感度を上げるのさ。
だから、ゲームでは日常の行動コマンドで主人公の話術や芸術なんかの社交系パラメーターを上げとかないとならないという……戦闘にはほぼ役に立たないって言うのにさ。
じゃあそんな戦闘に役に立たないパラメーターを上げる必要があるのかってことなんだけど、それによって女の子からの好感度の上がり方が違うし、下手したらダンスの誘いも断られてCGを取得出来なくなるからね、地味に重要なんだ。
たぶん、この辺が制作陣的には恋愛シミュレーション要素だって言いたいんだろうね。
いやまぁ、街中で物の売り買いとかにも影響したから全く無駄ってわけでもないんだけどさ、そんなもん俺としてはその分モンスターを多く狩ればいいでしょってな感じだったからね……
一応、プレイヤーによっては商人に対して「値切る」コマンドが成功したときの、それも連続で成功した場合の「やったった」っていう達成感がたまんないとか言う人もいたから人それぞれなんだろうけどね。
いや、値切るとき商人の顔グラフィックも変わる芸の細かさだったから、面白くはあったけどね。
ただ、調子に乗って何回も値切って失敗したら、逆に割高で買わされるという謎仕様だったからね……俺はイラついてあんまりやらなかった。
ま、ゲームシステムの話はこの辺にしておいて、正直このイベント、俺にはあんま関係ないというか興味ない。
だって、エリナ先生出てこないもん。
一応、学生主体のイベントだからね、先生は参加していないんだ。
ただ、学校の行事ではあるから参加しないわけにもいかない。
参加しないと成績にも影響が出ちゃうからね、面倒この上ない。
ま、そんな感じで、俺にとってはメシを食うだけのイベントになりそうだね。
若者たちは、彼氏彼女を作るために精一杯頑張るといい。
それで、俺のマナーの方はどうなん? って思うだろうけど、一応侯爵家の子息様だからね、その辺はみっちり仕込まれてたみたい、俺が転生してくる前に。
さすがの傲慢アレス君でもこればっかりはサボれなかったらしい。
……俺としては、魔力操作の方をサボらせないでおいてくれればよかったのにと思わずにはいられなかったけどね。
……いや、よく考えたら、そういう異世界の貴族レベルのマナーは前世知識でカバー出来なかったわ、むしろよくやっておいてくれたというべきか。
そうして、一通りマナーの確認を終えて、授業の終わりが近くなってからのこと、俺の気持ちを暗澹としたものに変える話を聞かされる。
「みんなだいたい問題なさそうね。そして、春季交流夜会はみんなにとってとても大事な行事になるわ。まずはなんと言っても、来月行われる野営研修。これのパーティーメンバーを探すためにもいろんな人と顔見知りになっておく必要があるからね。この行事を利用して、自分から積極的に周りに声をかけて行ってちょうだい。ちなみに、例年いるんだけれど、野営研修はソロを希望しても認められませんからね」
あ、エリナ先生、俺に向けて言ったね、今思いっきり目があったもん。
俺のソロ志向を完全に見抜かれてるよ……
いや、それはいいとして、マジか……野営研修なんかソロで余裕とか高を括ってたけど、そういう落とし穴があったのね……最悪だ。
「ソロを認めないのは、将来魔法士団や騎士団に入ったとき困らないようにするため。そして冒険者等になる場合も、合同依頼なんかで連携しなければいけないときが必ず来るから、それに備えて今からパーティー単位での行動に慣れて置いて欲しいからよ」
まぁね、わかるけどね……
「そして、野営研修だけの話ではなくて、この春季交流夜会をきっかけにして知り合った相手が生涯に渡っての友人になることも珍しくないし、私の同級生の中には1年生の春季交流夜会で出会った相手と結婚したってことも結構あったからね、この機会を大いに役立ててちょうだい」
おいお前ら、エリナ先生が同級生の結婚の話をした瞬間、変な空気を出すのをヤメロ。
エリナ先生は敢えて結婚してないだけなんだからな!
モテないわけじゃないんだからな!
むしろ俺にめっちゃモテてるんだからな!!
まったく、このクラスにはものの道理をわきまえん奴が多くてかなわん。
ま、そんな感じで、来週の春季交流夜会に気合を入れてけって話で今日の授業は終了。
あ~あ……パーティーメンバーか……面倒だな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます