第5章 独り善がり
第73話 祈っておくよ
エリナ先生の研究室で魔法の支配権の扱いについて学ばせてもらった。
そして、夕方になったので研究室を後にし、食堂へ移動。
エリナ先生との話から、学園内のマヌケ族問題には一区切りがついたと判断し、気持ち的に楽な気分で食事をいただこうと思う。
「おい、テクンド、さっきからぼんやりしてどうしたんだ?」
「そうだよ、なんかいつもみたいな元気がないよ?」
「どこか具合でも悪いのか?」
「いや、別にどうもしていない……心配させてしまったようで悪いな」
「おいおい、本当に大丈夫か? なんというか、こうパワフルさがないぞ?」
「そうそう、いつもみたいに『貴族とは!』って語らないの?」
「いやぁ、なんだろう、今はそういう気分ではなくて……」
「それは少し残念ではあるな、いろいろツッコミどころはあったが、なかなか力強い演説であったからな」
「ツッコミどころがあったのか……」
「あったりまえでしょ~」
「だよな!」
ふむ、敵意君は思考の誘導が解けて若干まだぼーっとしてるみたいだね。
でもま、そのうちシャキッとしてくるんじゃないかな?
俺に対する敵意がどうなってるのかは知らんけどね。
ただ、俺の魔力圧を強めに浴びて気絶する程度だ、そこまで気にすることもないかな。
とりあえず、またマヌケ族みたいな奴に操られないことを祈っておくよ。
そうして、敵意君のその後をちらっと確認し、食事を終えて自室に戻った。
ちなみに、敵意君の処遇についてだけど、特になにもなし。
マヌケ族に思考を誘導されていたということと、結局俺が彼の企てを大事件になる前に潰してたみたいで、問題にならなかったらしい。
まぁ、あの主人公君への難癖祭りの噂は広がってるから、もしかしたらどっかで彼の名前が挙がって風聞は多少悪くなる可能性はあるけど、逆に言えばその程度だね。
しかも、エリナ先生の話では、俺の熱血教室の方が王宮内では評判が悪くなる可能性があるらしいからウケるよね。
って、なんでエリナ先生は俺の熱血教室を知ってたんだ?
あの場にいた小僧の誰かから聞いたのかな?
……まさか、あの場にいたのか!?
えぇ……マジかよ……そうだとしたらめっちゃ恥ずいんだけど……
どうか、エリナ先生が見てませんように!!
こんな感じでちょくちょく神頼み的なことをすると、転生神のお姉さんのイメージが自然と浮かんでくるんだけど、今回はお姉さんの微笑みがイメージ出来ない……代わりにオッサンの満面の笑顔が湧いてくる。
ああ、これはもうダメかもわからんね……
い、いや、これは俺の精神的なものが影響しているんだ、心配の投影なんだ!
大丈夫だ、エリナ先生はあの場を見ていない、そうだろ?
そうだと言ってよ!!
そんな感じでしばらくベッドの上でじたばたしていた。
……アホみたいだからこの辺にしておこう。
こういうときは魔力操作筋トレに限るよね!
そっちに神経を集中させれば、なにもかもを忘れられる!
辛い現実を忘れて筋トレに励もう。
今この瞬間はそれだけを考えて……
こうしてこの日は過ぎて行った。
「どんなに辛いことがあっても、日はまた昇るんだね……」
以上、今日の目覚めの一言でした。
さて、またあのきゅるんとした小娘の嫌そうな顔でも見に行きますかね……って違う! あんなん知らんわ!!
まったく、あの小娘も流行に乗って俺の思考を誘導しようとしてるんじゃないだろうな?
もしそうならけしからんことだよ? 説教もんだよ!?
……でも俺、女子に説教とか無理ゲーだわ。
なんかこう、男子相手と勝手が違うんだよね。
特に同年代の女子とか一番無理。
だからさ、やっぱ俺はお姉さんに優しく諭されるのが一番いいな。
……いや、なんで俺が説教される側に回ってんだ?
あーあ、朝のテンションってやっぱ変な感じになるわ。
とりあえず、ごちゃごちゃ言ってないで、朝練だ朝練!
そして、約1時間ほどの朝練を終えて今はシャワーを浴びている。
あのきゅるんとした小娘? いつも通りだよ、代わり映えのしない嫌そうな顔をしていらっしゃったよ。
まぁね、よくあるでしょ? 通学や通勤でバスとか電車に同じ時間に毎日乗ってたら、他の人もだいたい同じ時間帯で乗るからなんとなく顔を覚えちゃうみたいな、ああいう感じだよ。
それが俺とあのきゅるんとした小娘の関係ってやつさ。
そしてもう意地になってるからね、特に朝練の時間や場所を変えるとかはしない。
嫌そうな顔を続けても無駄さ、君が折れるしかないんだよ。
それに気づく日がいつか君にも訪れることを祈っておくよ。
さて、シャワーも浴びたことだし、朝ご飯を食べて、素敵なエリナ先生の授業を受けにいざ行かん!!
そうして、授業を受けていると、ふいに思い出してしまった。
もしかしたら、エリナ先生は俺の熱血教室を見ていたんじゃないかって……
やべぇ、そう思うともう、まともにエリナ先生の顔を見れない。
俺はなんてシャイボーイなんだ。
こんな俺、クール道の先を行く先輩諸兄に見せられないぞ、しっかりしろ!
クールになれ、そうだ前世の北海道の冬を思い出せ!
あの凍てつく極寒の日々を思い出すんだ、そうすれば氷の精神が俺を支えてくれる!!
まぁ、高校時代に東京から転校してきた奴に聞いたら、冬は暖房とか効いてるから北海道の方が温かく感じるとか言ってたけどね。
それはともかく、今はクールに授業を受けることに集中しよう。
「じゃあ、この問題をアレス君に解いてもらおうかしら?」
「はい! お任せください!!」
そうして、颯爽と黒板の前に行き、問題を解く。
これ、朝練で読んだところだ! ってやつだね。
そんな内心のテンションをクールな表情で覆い隠す。
「正解、よく勉強しているわね」
「ありがとうございます」
エリナ先生のお褒めの言葉にもクールに対応。
今の俺、最高にクールです、先輩!
……いや、そんな簡単に最高とか言っちゃうところがクールじゃなかったね。
こりゃ修行のやり直しかな。
そんなことを思いつつ、この日の授業が終わった。
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