第70話 自覚は地味にある
学園に戻ってきた。
まずはシャワーでひと汗流し、さっぱりとする。
筋トレの成果が出てきているようで、徐々に体も引き締まってきていい感じ。
いや早くね? と思われるかもしれないが、そこはポーションのごり押しでオーバーワークをガン無視したからね、前世に比べて結果を出しやすいのさ。
ほんっとにポーション様様って感じだね。
そんで、俺としては細マッチョとか前世の中国拳法の使い手みたいな体型がカッコいいなと思うのでそういう感じに仕上げたいなと思っている。
まぁね、ゴリッゴリっていうのも悪くはないと思うんだけど、痩せたアレス君のフェイスにはね、よくよく絞られた体型の方が似合うと思うんだ。
それと近頃は、俺のスラリとしてきた素敵ボディに気付いたらしい小娘たちの視線も少しずつ感じるようになってきたんだよね。
とはいえ、俺としては小娘に熱い視線を送られてもあんまり嬉しくないんだけどさ……
じゃあお姉さんたちの反応はどうなの? って思うだろうけど、こっちの世界に来てから接したお姉さんって基本みんな俺に優しかったからさ、そこまで特別変わったって感じしないのよね。
そんな感じでさ、見た目に左右されず暖かい眼差しを向けてくれるお姉さんたちに俺は好感を持っちゃうってわけ。
てなことを思いながらシャワーを終え、食堂へ。
今回も男子寮の食堂は人が少ないんだろうなぁと思ったらやっぱりだ。
……なんかさ、ふと前世のオタサーの姫っていう単語が思い浮かんじゃったね。
いや、正真正銘の姫なんだけどさ。
そういえば、うちの大学にもそういう感じのグループあったなぁ、今頃彼らはどうしてるんだろう?
今も変わらずオタサーを続けているのだろうか、それとも……
基本同担拒否志向気味の俺としてはああいう感じになったら即離脱って思っちゃうからな、絶対無理だろうな。
……俺が王女殿下とナイト君たちの集まりをオタサー扱いしたことがバレたら怒られちゃうかな?
いや、こっちの世界の人たちはオタサーを知らんだろうから怒りようがないか。
「まったく! 奴らはなにを考えてるんだ!!」
「え、なにが?」
「あの王女殿下の取り巻きどもだ!!」
「ああ、はいはい」
「下位貴族家の者だけならまだしも、誇り高い高位貴族家の者までアレの口車になど乗せられよって! とんだ恥晒しではないか!!」
「おい、アレとかそういう言い方やめとけって」
「僕もそう思う、それにみんなのこともそんな風に言うのはよくないよ」
「なんだと! お前たちはアレの肩を持つというのか!?」
「いや、肩を持つとかそういうことじゃなくて……」
なんか荒れてる奴がいるなと思ったら、昼頃に悩みを抱えて項垂れていた敵意君じゃないか。
元気は取り戻せたみたいだけど、俺の熱血教室が余程お気に召さなかったようだね。
まぁ、全ての受講生を満足させられるなんて驕った考えは持っていないけど、想いを伝えきれなかったという悔しい気持ちはやっぱりある。
……ごめん、オタサー呼ばわりしときながら想いがどうとかって、なに言ってんだって話だよね。
そりゃ、敵意君も怒るわ。
「もう、そんなカッカしないでさ、ご飯を美味しく食べようよ」
「なにを言っている! アレが及ぼす悪影響を見過ごせと言うのか!?」
「自分の気持ちに正直になれって言っただけでしょ? それぐらいなら別にいいんじゃない?」
「……お前もアレに毒されたのか、残念だ」
「おいおい、なんでそう極端な受け取り方をするんだよ……」
なんというか、敵意君の俺に対する敵意が凄いね。
そんなに俺のことが嫌いかい?
まぁ、別に学園の生徒にはそこまで気に入られなくても構わないからいいんだけどね。
そうして、夕食を食べ終え自室に戻る。
恒例の魔力操作筋トレと精密魔力操作をじっくりと行って眠りについた。
「やっぱ精密魔力操作を行ってから寝ると、目覚めが一味違うね!」
そんな一言とともに今日が始まる。
さて、さっそく朝練に行きましょうかね。
そんで、あのきゅるんとした小娘に我は此処に在りってところを見せつけてやろう。
どんなに嫌そうな顔をぶつけてきても俺は怯まないぞ!
そしてお馴染みの魔力操作音読ウォーキングコースに到着すると……やはりいました、きゅるんとした小娘!
さっそく嫌そうな顔をしていらっしゃる。
しっかし、きゅるんとしながら嫌そうな顔をするっていうのは地味に器用だなと思わなくもないね。
……ま、どうでもいいや、君は好きなだけ嫌そうな顔をしていなさい、いつかその顔が素顔になるから。
そうして朝練をしているとき、きゅるんとした小娘がすれ違いざま「……許さない」と小声でつぶやくのが聞こえた……
えぇ……そこまで!?
俺って、そんなに許されないことをしてしまったのだろうか……
まぁ、優雅に朝のお散歩をしているっていう雰囲気は若干ぶち壊したかもしれないって気はちょっとだけしてるけどさ……
う~む、敵意君といいきゅるんとした小娘といい、アレス・ソエラルタウトという男はやはり嫌われキャラなのかもしれんね。
……と言いつつ、自分でも他人に引かれるだろうなと思う行動をしている自覚は地味にあるんだけどさ。
なんでそんなことをするのかって? それは「あいつやべぇから近づかないでおこう」って思わせるためだよ。
俺は基本ソロプレイヤーだからね、他人に気を使ったプレイは苦手なんだ。
だからオンラインゲームとか向いてないと思って誘われてもほとんどやらなかったし……
そんなことをつらつらと思いながら朝練を終え、シャワーを浴びに自室へ戻った。
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