第68話 上手に使い分け
自室に戻って来た。
さっそくのシャワーシーン、どうだ嬉しかろう?
っていかんいかん、イキリの残渣が微妙に残っているな……
しっかし、さっきは思わず熱血教室を臨時開講してしまったが、頭が冷えてくると流石にイキリすぎたかなって気もしてきた。
これで、王女殿下が王位継承争いで勝利した場合、第10夫君とか下手したら第20夫君とかが誕生してしまうんじゃないか?
王女殿下って地味に押しに弱い気がするんだよな……拒絶するのが下手っていうのかな、それが原因でゲームのアレス君も勘違いして主人公君と揉めることになったわけだし。
俺の魂の言葉を鵜呑みにしたモブ助たちはおそらくガンガン行くだろうし……やべぇ、どうなるんだろ。
もしかしたら後世の歴史家に「史上最も夫君を持った女王」とか語られたりしちゃうのかな……しかもそのきっかけを与えたのは俺ってなったらどうすんだ? 考えすぎか?
……ま、なるようにしかならないよな。
というか、王女殿下がしっかりと1人を選べるかもしれないし……よし、この件は俺の手を離れたということで、ひとつよろしく。
そうして汗を流したばかりなのに、さっそく冷汗をかきつつ、食堂へ向かう。
今は食べることだけ考えとこう、そうしよう……
「なあ、今日の食堂、いつもより人が少なくねぇか?」
「忘れたの? 今日はあの士爵家の彼に物申しに行く日だったでしょ?」
「そうだったか? 興味ねぇから聞き流してた」
「そうであろうな、そなたはもう相手を見つけたのだから……」
「ホント、いいよね~僕も早く見つけたいな~」
「まぁ、お前らにもそのうち見つかるだろ、少なくともあんな馬鹿みてぇなことをしに行く連中に比べりゃ早くな!」
へぇ、既に相手を見つけている奴がいるんだな。
とりあえず、おめでとうといった感じかな?
ただねぇ、その馬鹿みてぇなことをしに行った連中はたぶん、今頃王女殿下とディナーだよ?
果たしてどちらがよかったのやらといった感じではあるね。
「しっかし、あいつらも馬鹿だよな。あの野郎を潰したところで王女殿下が振り向いてくれるわけねぇってのに。やっぱ俺らは、自分の身の丈に合った相手を探すってのがカシコイ選択ってやつだろ? それをあんな無駄なことに時間を使うなんて、まったく信じられねぇよ」
「ふむ、一理あるな」
「あ~いいのかな~彼女のことを身の丈に合ったなんて言い方して~」
「あぁ? 俺がいい男だったからいい女が見つかったってことだ」
「え~そんな意味合いじゃなかったと思うけど~?」
「うっせ、さっさと食え、冷めちまうぞ!?」
「あ~誤魔化した~」
「それぐらいにしておいてやれ。そなたも言葉には気を付けることだな」
身の丈か……ここでも結局そういう言葉が出てきてしまうのだな。
こんなにもチャンスに溢れた世界なのに……
それを勿体ないと思ってしまうのは、俺の方がおかしいのだろうか。
まぁ、どう思うかは人それぞれと言うべきか。
そんなことを思いつつ、食堂を後にした。
「さて、夜の部を始めますかね!」
そんな掛け声とともに、まずは魔力操作筋トレをスタート。
魔力に体力を代替させることで筋トレが捗るのも嬉しいもんだね!
それにしても、さっきは勢いに任せていろいろ言ってしまった手前、俺もより一層の努力をしなければ……
そうでないと「アレスって言うほど大した努力してなくね?」とか言われてしまうだろうし……その場合恥ずかしさで二度と学園内を歩けなくなってしまいそうだ、それは困る。
そうしてしばらく魔力操作筋トレを続けた後は精密魔力操作に移行。
これは己の魔力と1対1で語り合う、そういった気持ちで取り組むものだ。
ふむ、今日の魔力君は騒がしいな、まぁ熱血教室の影響だろうね。
魔力君がある程度落ち着くまでは、このままゆったりとした気持ちで待とう。
無理に押さえつけるような真似をすると魔力君の機嫌を損ねてしまうからね。
そのようにして精密魔力操作をじっくりと行ってから睡眠。
「清々しい朝の目覚めに感謝を」
そう一言つぶやいて新たな一日が始まる。
さて、今日もさっそく朝練に行きますかね!
いつも行っている魔力操作音読ウォーキングだが、最終的にはランニングまで行きたいと思っている。
でもまだ、そこまでは難しいんだよね。
走りだすとそっちに意識の多くが持っていかれてしまって、音読と八方目が疎かになってしまう。
ま、この辺は追々と出来るように少しずつ頑張ろう。
というわけで、日々少しずつ歩くペースを上げるようにしている。
それはそれとして、あのきゅるんとした小娘、俺に嫌そうな顔を向けつつ毎朝いるんだよな。
……もしかしてこれは、どっちが先に折れてこの場に来なくなるかっていう勝負を仕掛けられているのか?
そうであるなら受けて立っちゃうよ? 俺ってその辺地味に子供っぽいから全力で行っちゃうよ?
そうして今日もまた、1時間ほどの朝練を終えて、シャワーを浴びて朝食へ。
ふむ、食堂にいる人数がいつもより少ないね。
どうやらあいつら、また王女殿下とご一緒してるな、やるねぇ。
……こうなってくると主人公君、マジでさっさと覚醒しないと他の男子に追い抜かされちゃうゾ?
今は1カ月ちょっとっていう期間的アドバンテージがあるが、そんなもん本気になった男子たちにかかれば大した差ではなくなるだろうし。
この先どうなることやら……
ま、なにはともあれ頑張れよ、主人公君!
同じく頑張れよ、王女殿下に惚れた男子たち!
俺はそんなお前らを応援している!!
「ねぇ、なんか今日、暑くない? いつもより人が少ない分、熱気がないはずなのに」
「そうだなぁ、春も半ばだし、少しずつ夏へ向けて暑くなってきたってところなのかな?」
「まさか異常気象ぅ!? なにかが起こる前触れぇ!? ひゃ~こうしちゃおれませんよぉ!!」
「ごめんだけど、たぶん違うと思うなぁ……」
なんというか……平和だなぁ。
そんなことを思いつつ、ご飯を食べ終え授業へ向かう。
そして、昨日あれだけ焚きつけておいてなんだそりゃって言われるかもしれないが、俺のエリナ先生への想いが憧れなのか恋なのか……俺自身まだわかっていないんだ。
だから俺はこのまま。
ごめんな、だけどそういうズルさも大人には必要ってことさ。
そんなわけだから、お前らも子供と大人を上手に使い分けて、そういうズルさも身に着けていってくれよな!
……でも、この想いが本物だったとき、いつでも好きって言えるように、エリナ先生に相応しい男になれるよう努力だけはずっとし続けるから、それだけは約束するよ。
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